強者の力
続きを読んでいただきありがとうございます。
完全に囲まれてしまったユイ、ウィキ―、そしてオルトロスの三人。
「どうした?お前さん自慢の武器を出さないのか?」
「ク・・・ッ!!」
戦闘を始めようにもオルトロスの視界の端にはユイとウィキ―がいる。こんな状況ではオルトロスは武器を出して戦えば無関係な2人にも影響が出てしまうと考え、なかなか武器が出せない。
「あぁ、そうか。お人好しのお前には、武器を出せないのか。」
オルトロスの現状を知ってか、因縁の敵であるネメアーはユイとウィキ―の二人を改めて視界に入れた。
「危ないッ!!」
「ひぎゃッ!!」
ウィキ―が叫ぶ声が聞こえたが、オルトロスのひと声に瞬時に反応できたユイ。すれすれではあるがネメアーからの銃撃にウィキ―を守るように屋敷の扉側へと転がっていった。その様子を確認したオルトロスは、あえて構えることをやめ、ネメアーに向かってゆっくりと歩き始めた。
「愚か者が・・・、弱きものに手を出してただで済むと思わないでください・・・。」
ネメアーに向かってきているオルトロスが一瞬の隙にネメアーの真横に現れ、ネメアーの右頭部に蹴りを入れる。ネメアーは巨体であったためにある程度の距離で済んだがその反動で蹴り飛ばされた。そのまま地面に華麗に着地したオルトロスは、ネメアーが連れてきた獅子に再度囲まれた。
「こんな状況で、それでも倒せると高を括りますか・・・。」
オルトロスは、ひとつため息を着くと右手の人差し指で、右耳にあるリングピアスをゆらすように触れる。すると、オルトロスの全身が黒い影に染まり、姿が現れると黒髪が白髪に変わり、楕円だった眼鏡が丸眼鏡にそして黒で統一されていた服が白で統一された好青年の姿に変化した。
「ひっさしぶりに太陽見た気がする~。まぁ、そんな悠長なこと言ってられないけどね。」
「貴様・・・何者だ・・・?」
「あぁ、お前って俺のこと見たことないんだっけ?俺もオルトロス、さっきの片割れだよ。」
白に統一されたオルトロスは、先ほどとは打って変わって軽い印象の青年である。
「あり得ない・・・俺様にこの傷を付けたのはその姿じゃない・・・!!」
「そりゃあそうだよ。兄貴は早々に俺を表に出すことはしないもん。それに加減を知ってるし、お前がその程度で済んだのは兄貴の慈悲だよ。でも、俺を出すってことは・・・お前、終わったね。」
驚いているネメアーに説明しながら、周りを見渡す白のオルトロス。そのまま指を一度ならし、空間が穏やかに光始めると、手元に現れたのは柄が長い大鎌だった。
「じゃ、ひと先ず前菜ってことで。」
嘲笑うかのように笑いながら大きく大鎌を振るい、囲んでいた獅子たちの頭と体を真っ二つにしたオルトロス。血が大鎌から滴り、周りは血の海になった。
「な~んだぁ、久しぶりの肩慣らしにもならないじゃん。」
「ク・・・クソッ!こんなに歯が立たないとは・・・!!」
大鎌をマーチングバンドで旗を振るかのように大鎌を振るってストレッチするオルトロス。歯が立たないと分かったネメアーは自棄になり、オルトロスに襲い掛かってきた。
「どうせなら、これでやってあげるよ。」
襲い掛かってくるネメアーに対して、左手を銃のように作り前に構えるオルトロス。
「マジック・ライトショット」
オルトロスが構えた指先から、光が銃のように出るとネメアーめがけて一直線に飛んで行き、ネメアーの脳天を撃ち抜き、ネメアーは反動を受けながら倒れた。