ゾンビトリップ
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「ほわぁ」
あくびをしながら高校に向かう。今日も面倒な授業を聞きながら、ノートに黒板の文字を手動でコピペの作業。あー考えるだけで嫌になる。
なによりも、0限目、これが一番だるい。なんで7時30分という朝っぱらから重たい荷物を運んで頭を回さないといけないんだ。
中学のときに憧れをはせていた高校ライフは桜が散る前に曇ってしまった。
「なにか面白いことねえかな」
なんとなしに、路地裏の方に目がいった。いつも猫がたむろっていて目の保養になる通学路の癒しポイントだ。
だが、今日は違った。
!?!?
路地裏には猫の肉が飛び散っていた。そして、奥の暗闇から、物音が聞こえてきた。この状況に吐き気がこみあげてきた。だが、好奇心が湧いてしまった。この奥の影に何がいるのか。この原因があるのではないか。と
ごくりと生唾を飲み込み血の水たまりへ踏み出す。校則指定の真っ白い靴が赤く染まる。気にしていてもしかたない、後で洗えばいい。
ちゃぷりちゃぷりと前に進み続ける。やがて、終着点が見えて来た。そして、音の正体が姿を見せた。
ぐちゃりぐちゃりと猫の肉を食べている人だった。服は着ていなくて、ありえないくらいの青白い肌をしていた。それはテレビで見たことがある死人のようだ。
それは、こちらの気配に気が付き、振り向いた。
「っ!?」
顔中血だらけで、目に正気は宿っていない。死んでいる…ありえないがゾンビだ。
俺は咄嗟に踵を返して逃げ出そうとした。だが、恐怖で足がもつれ血の水だまりにダイブした。
「ひっひぃぃぃぃ」
ゾンビがのそのそとゆっくりとこちらに近づいてくる。立ち上がろうにも足に力が入らない。腰が抜けたのだ。
俺の人生で何が悪かったらこんな目に合うんだ。宿題は毎日やっているし、欠席遅刻は一回もしたことはない。高校にも進学した。彼女は…委員会活動も進んで取り組んだ。
俺の脳裏に数々の思い出が駆け巡る。これが走馬灯ってやつか。あぁ運動会頑張ったな、運動部の連中をギャフンって言わせたなぁ。
首をガブリと噛まれた。俺の人生はここで終わった。
***
「ここは…痛っ」
とにかく狭い、体がギチギチに詰められているようだ。
「よいしょっと」
腕を上に伸ばしてみた。蓋かな動いたぞ。横にスライドしてみた。開いたのもつかの間、土が雪崩れてきた。
人生で初めて土を水泳することになるとは
***
「あーぷはー」
どうにかこうにか地上にでることができた。土が今ふっている雨のお陰で湿って掘り易かった。外の空気が美味しい。土の中とは段違いだ。
ん?
俺の目の前で豪勢なドレスを着た夫人が気絶していた。まぁ急に土から出たら驚くよね。雨がふっていない屋根がある場所まで運んであげるか。こんなところで寝ていると風をひいてしまう。
…おいしそう、夫人の白いくじ筋が俺の食欲を誘ってきた、どうゆことか。駄目だ、どうしようもなく食べたい。誰もいないから、ちょっとだけ舐めるだけでいいよね。
***
やっちまった。
俺の前に夫人だった服と骨があった。全部おいしく食べてしまった。人間の生肉ってこんなにおいしかったんだ。
ってこの残骸どうするんだよ。服だけでも俺が出て来た土の所に埋めるか。
服を持ったらコロッと宝石が転げ落ちた。いいもの持ってるじゃん。高く売れそうなものだけを剥いだ。
「おい、てめえなにやってんだ!!」
つなぎを来た男に怒声を浴びせられた。ふっくらと脂がのってうまそうな見た目をしている。夫人を食べただけでは物足りなかった。
「いっただきっまーす!!」
「ひぃいいい」
怯えた男はこちらにむかって、なんと火球を飛ばしてきた。
「あっつい!!」
体が燃えるように熱…くなかった。なんだ、手品かなんかか。
「ひぃぃぃぃぃぃ」
男は更に怯えて駆け足で逃げて行った。待ってくれよごちそう君。こう見えて、俺はクラスで1位2位を争うスピードを持っている。ふとっちょに追いつくなんて楽勝だ。
うん、楽勝だった。あっというまに追いついた。俺は、男に飛びかかり、押し倒した。炎は雨で消えてしまった。折角焼いて食べようと思ったのに。
「離れろっ!!」
男は必至の抵抗で俺を引き離そうとする。鬱陶しいな。俺は、男の右手に噛みついた。
「うっわぁぁ」
悲鳴をあげ、俺を蹴飛ばした。俺はごろごろと転がり墓石に頭をぶつけた。男は逃げてしまった。折角食べれると思ったのに。
!?
水面に俺の顔が映っている。服はボロボロのを着て、全身に返り血を浴びて真っ赤になっている。
そして、肌は死人のように真っ白になっている。
これはあれだな。瞬時に解が見つかった。
ゾンビになっちまった。