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その後のお話(3)

「クミ様、こんなものが手に入りました」


 家でご飯を作っていたら、息をきらせながらデュランさんが家に持ってきてくれたのは不思議な手袋だった。


「これは?」


「20層でデルタ様と狩りをしていた時ドロップしたものです。

 これをはめると、手だけではなく全身に薄い膜ができて、直接触れるのを防ぐそうです。

 主に毒沼などに使うものらしいですが……ほぼ透明で触れた者の感触もほぼそのままなので……」


 と、デュランさんがチラリと私を見た。

 何が言いたいのか私にもわかった。

 これをセルヴァさんが装備していれば私に触っても大丈夫になる!


「わんっ!!!」


 デルが褒めてと言わんばかりに私を見たので


「ありがとう!デル!デュランさん!」と言えば、二人とも嬉しそうに微笑んでくれた。


 嬉しくてデルを抱きしめてナデナデしてあげれば、はちきれんばかりに尻尾をふってくれる。


 嬉しい。すっごく嬉しい。

 膜があって直じゃないにしても感触を確かめられるってほぼ触ってるも同じだよね!

 イチャイチャできるのは純粋に嬉しい!

 

 えへへーまずは抱き着きたいな。


 セルヴァさん早く帰ってこないかな。

 今日は私がこれを装備して驚かせちゃおうっと。



 ■□■


「何をソワソワしてるのじゃ主?」

 

「え!?そんなにソワソワしてる?」


「物凄くソワソワしてるのじゃ」


 と、ジト目でシャルティが私の事を見た。

 うッ!?それはセルヴァさんの蕁麻疹を気にすることなくイチャイチャ出来るのだから心躍るなというのは無理があると思う。だって、今まで顔にあたまが当たっちゃったらどうしようとか、いろいろ気になっちゃって甘えたいなぁと思っても抱き着けなかったし。

 それにセルヴァさんが喜んでくれるかもと思うと、早く顔がみたくてソワソワしてしまう。


 話したらどんな顔をするだろう。にっこりしてくれるかな?

 それともセルヴァさんの事だから照れるかな。

 顔を真っ赤にして困った顔するセルヴァさんも可愛いんだよね。


 あ、これ装備して後ろから抱き着いたら驚くかも。

 やっぱりびっくりさせるには後ろから抱き着いたほうが驚くかなぁ。

 でもやっぱり初めては前から抱き着いて顔を見たいな。


 私がセルヴァさんにどうやって悪戯をするか考えていたら。


「……我とデルはラウルの所に遊びにいってくるのじゃ」


 と、シャルティが言い出した。


「え?」


「今日はリーチェがお菓子を食べに来いといっておったのじゃ!」


「そっかー、でも食べすぎちゃだめだよ?」


「わかっておる!行くぞデル!」


 そう言ってシャルティとデルが部屋から出て行ってしまう。


 なんだか気を遣わせてしまったのかな?

 私そんなに顔にでてた?


 うーん。少し気をつけなきゃ。

 あとで美味しいものを作ってあげよう。

 それにしても早く帰ってこないかなぁセルヴァさん。

 はやく驚く顔が見たい。


 なんとなく部屋にある鏡に視線がいけば――私の顔は物凄くにやけてた。


 ……うん。

 これはシャルティも気を遣うよね……ちょっと恥ずかしくなって、気を引き締めるのだった。



 ■□■


「おかえりなさい。セルヴァ様」


 セルヴァがアルとベガを連れて魔の森の街につくなり――なぜか門の前で出迎えたのはデュランとデルタだった。

 いつもは帰る時間が不定期なため門まで出迎え等あった事などない。


「あ、はい。ただいま戻りました。

 何かありましたか?」


 いつもと違う出迎えにセルヴァが戸惑っていれば


「いえ、リーチェ達が作ったお菓子をベガ様とアル様に食べさせたいと言っていましたので。お迎えに上がった次第です」


 と、ニコニコとデュラン。

 アルとベガが嬉しそうに尻尾を振り、セルヴァに行ってもいい?と、目を輝かせている。


「あ、はい。お気をつけて」


 と、セルヴァが頷けば、三匹が嬉しそうにリーチェの家めがけて走っていってしまい、デュランが慌てて後を追って行った。


 ……もしかして、クミと二人きりになれるように気を利かせてくれたのだろうか?

 最近は夜少しだけ話したあとお互い別の部屋で就寝するだけの日々が続いていたので、ゆっくり話せるというのは嬉しくもある。


 などと少し心躍らせて家に戻れば


「お帰りなさいっ!!セルヴァさんっ!!!!」


 玄関を開けた途端クミに抱き着かれた。


「ク、クククミさま!?」


 勢いよく抱き着かれたため、頬と頬が触れてしまいセルヴァが狼狽していれば。


「聞いてください!今日デュラ……」


 嬉しそうに言いかけたクミの言葉が止まった。


「セセセ、セルヴァさん顔中蕁麻疹!!!!くく、薬飲んでくださいーー!!」


 と、慌てて身体を引きはがし、薬を取りにいってしまう。


「え?え?え?」


 クミと触れた方の頬を抑えながら、セルヴァはただ茫然と立ち尽くすのだった。


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