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70話 一方の幸せと一方の不幸

「クミ様―!おはようございますー!」


 学校へ行く途中の子供たちが家のバルコニーでお茶を飲んでいた私に元気よく手を振ってくれた。

 私は「いってらしゃい」と手を振り見送る。


 あれから、デュランさんと学校について相談した。

 職業訓練はいちいち来るたびに同じ事を教えるのは面倒という意見もあったので、結局は学校と同じ方式にし、理科や社会の授業が鍛冶や、裁縫などの授業ということで、決まった時間にみんなで授業を受ける事になった。


 建物も学校を新たに新設し、雰囲気を出して学校は同じ制服にして、みんなで習う事になったのが子供たちは嬉しそうに学校に通うようになって、もうそれなりにたつ。

 日本の学校と同じく校庭や遊具も作ってあげて、体育の授業とかも取り入れてドッジボールとかも教えてあげたので、学校はすごく楽しいと喜んでいた。


 大人で文字を憶えていなかった人も初日にみっちり、セルヴァさんに教わり、あとは自主勉強という事でプリントを渡したら、子供たちに負けていられないと割とすぐに覚えてくれた。


 生活も軌道にのり、ここにいる住人達だけなら、それなりの時間働けば自由な時間が確保できるくらい余裕ができるようになり、それなりに幸せだったりする。


 獣人の人たちも公園を散歩したり、ジョギングをしたり、おしゃべりをしたりと、自分の時間を持てるようになったと喜んでいた。

 オセロやトランプを作ってあげたらすごく喜んでくれたりもしてる。


「なんだか平和ですねぇ」


 ほのぼのと子供たちが行くのを見守っていれば、


「はい、そうですね。このような平和な光景が見れる日がくるとは夢にも思いませんでした」


 と、ダンジョンに行く用意をしながらセルヴァさん。

 その後ろでは、シャルティやワンコ達が運動したいと、セルヴァさんを待っている。


 シャルティやワンコ達は街で遊ぶと、街を破壊してしまうので、運動不足解消のためセルヴァさんがダンジョンへと連れて行って適当に運動をさせてきてくれる。シャルティやワンコ達はダンジョンには誰か付き添いがいないと入れないのがちょっと不便だよね。


「はやくいくのじゃー!!」「わんわんわん!!」


 シャルティと、アルが急かすようにセルヴァさんの周りを周っていた。


「はい、行きましょうね」


 と、連れて行く姿はすっかりパパに見えたり。


「いってらっしゃい」と、手をふれば、みんな「行ってきます」と言いながらダンジョンへ向かっていった。

 みんなが行ってる間におやつは何を作ってあげよう。

 ご飯はお手伝いの獣人さん達が作ってくれるから最近はおやつを作るだけでいいから本当に楽だよね。


 最初にセルヴァさんとこの森に飛ばされたときは、セルヴァさんとわんこちゃんとだけでひっそり森で暮らす生活を覚悟していたけれど、 こうやってちゃんとした街になって、生活があって、みんなの役にたてて。


 幸せだなぁ。


 町の景色を見下ろしながら私はえへへと一人笑いをうかべた。

 



 □■□



「全滅……だと?」


 セズデルク王国で、兄ヴィクトールのダンジョン遠征部隊から連絡が途絶え10日たち、命からがら逃げかえった部隊の一人からの連絡がそれだった。

 むしろ9階まで制覇できたのが奇跡ともいえなくもない。


「全部隊9階のコカトリスにやられ石化したそうです……残念ながらヴィクトール様も」


「くそっ!!!」


 アレンはがしんっと机をたたく。

 もともと、セズデルク王国の今の軍事力で、地下10階を目指せなどということが無謀だったのだ。9階まで行けた事が奇跡だったというしかない。

 ヴィクトールやアレンの父である国王が、現大神官のロンディエンと対抗していた別の神官を次期大神官に推していたがために、ロンディエンが大神官になってから、寄付と言う名の税金が他のどの国よりも重くのしかかった。その為生活に手一杯で軍備などそろえる余裕もないのだ。


 父である国王はそれを気にして病んでしまい、実質国を任されていたのはヴィクトールだった。


 おそらく、神殿も本気で「米」を手に入れる気などない。

 もし本気で手に入れるつもりなら、神殿からも援軍がでただろう。

 それすらないという事は――はじめから軍隊をだして見殺しにすること。


 そして聖女様の望む「米」が手に入れられなかった、この王国に、罰としてまた無理難題を押し付けてくるだろう。


 ヴィクトールが石化していて生きているとはいえ、9階まで行き石化を解くなどというのはほぼ不可能だ。実質死んだ状態の今――次に狙われるのはアレンだ。

 アレンさえいなければ、寝たきりの現国王を押しのけて神殿の息のかかったものを王位につかせることができる。


 聖女キリカが召喚されてからというもの、神殿の横暴は目に余るものがある。

 聖女キリカが望むからとロンディエンに反抗的だったものに無茶難題を押し付け、追い払い、ロンディエンの腰巾着ばかりを起用しているのだ。


「せめてセルヴァ様が生きていてくれればこんなことには……」


 アレンがそうつぶやけば、


「アレン様!!!大変です!!神殿からの命が!!!」


 と、慌ただしく部屋に部下が入ってくる。

 ヴィクトールの失敗を理由に早速、無理難題を押し付けてきたらしい。


「なんだ!?」


「そ、それがっ!!今回の不手際の責任を取り魔の森に潜伏する反逆者 セルヴァ様を殺してくるように……とのことですっ!!」


「……は?」


 部下の返事にアレンは固まるのだった。



誤字脱字報告&ポイント&ブックマーク本当にありがとうございました!(>人<*)多謝!

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