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62話 わたあめ

「甘いものが口の中でふわっととろけて不思議なのじゃ!!!」


 あれから、シャルティとアルに出来た綿あめをわたせばシャルティが感想を漏らす。


「わんわんっ!!!」負けじとアルが一生懸命私に美味しいと伝えてくれる。


「気に入ってもらえたみたいでよかった。これなら子供たち喜んでくれるかな?」


「うぬ!!これなら気に入るであろう!!

 このようなふわふわな食感は初めて食べるのじゃ!!

 里の皆に知られようものなら、よこせと取られてもおかしくないぞ。

 この様子ならチョコバナナと蜜柑アメも期待大じゃな!!」


 と、嬉しそうに言われてしまうけれどさすがにシャルティの里の人に振舞うのは無理だから、私はアハハと笑ってごまかした。

 ドラゴンって食欲凄そうだからあまり関わりたくない。

 毎日食事作りに追われる生活は正直勘弁してほしい。


 とにかく、綿あめを作ったあとはフルーツをアメにしてみることにした。


 フルーツをよく洗って串にさし、水をよくふく。

 そして砂糖と水をぐつぐつ煮込んできつね色になったら、それにフルーツをくぐらせて、よく冷やす。これでフルーツアメの出来上がり。


 ミカンに、イチゴに、リンゴをアメにしてみた。


 シャルティと、アルが美味しそうにパクパク食べてるので味は大丈夫だと思う。

 チョコバナナは失敗しないと思うので後にするとして、他には何を作ろうかな?


 お祭り慣れしてない獣人さん達にその場で作ってすぐ出せというのは少々酷な気もするので、作っておけばすぐだせるものがいいな。

 それにお祭りのメインも考えなきゃ。


 盆踊りに、おみこしとかいろいろあるけれど……メインは何がいいだろう?

 そもそも獣人さん達になにか文化はないのかな?


 ■□■


~今日のわんこ~


『兄者!兄者!この綿あめすごい!!綿あめすごい!!』


『うぬ?何がだ!?』


『口ぱくってする!』


『ふむ』


『そうすると不思議!』


『うん?』


『じゅわってして甘くて消える!!!』


『……うん?』


『食べてみればわかる!!』


『ふむ、どれどれ』


(ぱくっと食べてみる)


『どう!?どう!?』


『確かに消えたぞ!?』


『綿あめすごいー!綿あめすごーーい!!美味しい!美味しい!』


(ぱくぱくぱく)


『ベガ、 アル、お主ら口の周りがべったりだぞ』


『!?』



□■□



「お祭り……ですか?」


 セルヴァさんとデュランさんの所へ行き、お祭りを提案してみれば、デュランさんが驚いた顔をした。


「そうですね。自分の小さい時にはありました。

 その時は楽器のリズムで踊っていた気がします……懐かしいですね。

 最近では神殿に禁止されてしまいましたから、若い者達は知らないでしょう」


 と、目を細める。


「じゃあそれでいきましょう!その時ってお祭りは何をしてたんですか?」


「確か広場で踊っていた気がします」


「えーっと、それだけでしょうか?ごちそうを食べたりとかは」


「村長の合図とともに、踊りを踊り解散でしたね。ほかには何もしていなかったと思います」


 そこでごちそうが出ないのがこの世界らしいというかなんというか。

 うーん、この世界本当に美味しいものを食べて祝うという習慣がないんだね。


「じゃあ出店を出して、最後に踊りと言う形にしましょう!」


「楽しそうですね。村の者も喜ぶと思います」


「クミ様!!お祭りするの!?」


「うん。そうだよ。リーチェちゃんも協力してくれる?」


「うん!する!出店ってなぁに?」


「美味しいお菓子を売るんだよ」


「お菓子っ!?楽しみ!!よかったね魔獣さん!」


 リーチェちゃんが言えば、リーチェちゃんの頭に乗っていたラウルも「にゃー」と笑って答えた。

 見かけ虎なのに猫でしかない。


「あとはお祭りをいつにしようかな?」


「魔獣さんに供物を納めていた月は?」


「決まってたの?」


「うん!この前は勇者が来たから臨時でしたけれど、正式な供物を治める日は三か月に一回あったの!」


「三か月に一回かぁ。クリスマスとか行事がないのを考えればそれほど多くもないかな?

 毎回お祭りじゃなくて、違う事をしてもいいいし。それでいこっか」


「ありがとうクミ様!!楽しみ!!!」


 リーチェちゃんがニコニコと笑って私に抱き着く。


「ということは、来月になりますね」


「よしっ!!がんばりましょう!!」


 私の言葉にリーチェちゃんがおーっと元気に手をあげてくれる。

 よーし、まずは飾りつけも頑張らなきゃ。



□■□



「わーー綺麗!!!」


 お祭りに向けて、私とセルヴァさんとデュランさんとで公園に飾り付けをしていれば、子供たちが嬉しそうにその様子を見に来た。

 あれから、私とセルヴァさんはお祭りの会場である公園の中央の木に、ダンジョンで手に入れた光る宝石を飾り付けてクリスマスっぽくしていた。

 夜でもキラキラ光を放つ不思議な宝石は、ダンジョンの16階でとれ、人間の市場にだせばそれこそ屋敷を買えるほどの価値らしいけれど、ここでは使い道がないので使いたい放題だったりする。

 シャルティとワンちゃんたちのおかげでとり放題だし。


「このように神秘の宝石や七色の宝石を木にぶら下げるなど人間達に知られたら卒倒されそうですね」


 飾り付けを手伝ってくれているデュランさんが苦笑いを浮かべた。


「夜が楽しみですね。これだけ木々に飾り付ければ、神秘的な光を放つでしょう」


 セルヴァさんも木々に括り付けながら微笑んでくれる。


「主よ!!我は知っておるぞ!!こうやって飾り付けた木に願い事をつるすのであろう!?」


 と、様子を見ていたシャルティがえっへんといえば、


「願い事!?」


 子供たちが目を輝かせた。


「そうじゃ!この木に願い事をぶら下げてお祭りが終わった後焼くと願いが叶うといわれているらしいのじゃ!!」


 胸を張るシャルティ。


 くっ!?それ七夕とクリスマスがまざってないかな!?

 ゲームマスターって人は割と適当な性格だったのか、シャルティに変な事を教えてて困る。

 けれど子供たちは信じたようで、嬉しそうに私の事を期待のまなざしでみてくる。


「あー、うん!そうだね、この飾り付けがおわったらお願い書こう?」


 私がにっこり笑って言えばやったーと子供たちが嬉しそうに踊りだした。

 不思議なリズムでらんらんと口ずさみながら、踊っていてとっても可愛い。

 たぶんこれが獣人達のお祭りの踊りなのかも?今確か村の人たちが教えてるって言ってたし。


「このように嬉しそうな子ども達の姿が当たり前に見れるというのは素晴らしい事ですね」


 と、目を細めて言うセルヴァさん。

 初めて見た子どもたちのボロボロの衣装で覇気のない表情だったのを思い出して私も目を細める。

 もうこの町にいる以上はあんな悲しそうな顔をさせないですむといいな。


「そうですね。とびっきり楽しいお祭りにしましょうね」


「はい。そうしましょう」


 と、飾り付けを嬉しそうに再開するセルヴァさんは、嬉しそうで、私は微笑んだ。

 どうかこの幸せな時間が続きますように。


 

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