51話 獣人達がきたよ(´・ω・`)
「ほ、本当にこのような家をお借りしてもよろしいのでしょうか?」
移住してきた獣人の人に家を案内すれば、家の中を見て一様に驚いた
アプリで作成した家は確かに綺麗だし、お風呂も上下水も完備と言う優れもの。
どの部屋も竈もお風呂もきちんと完備している。
「パパ―!!前のお家より綺麗!!」
獣人の子が言えば、母親が「そうね、すごいわ」と感動していた。
前の家がボロボロすぎたもんね。
わりと税金で何でももっていかれて生活がきつくて家の補修に手が回らなかったとか。
獣人は人間に逆らわないように、人間よりも重税だったらしい。
「クミ様、こちらも全員分の案内が終わりました」
セルヴァさんがリストを見ながら声をかけて来る。
村の人数は184人。52家族。
全員ちゃんとリストを作って戸籍のように管理することにした。
これからはここで生活していくんだからちゃんと仕事の分担とか決めないと。
「なんだか人が増えたのじゃ!!我の食事が減るのだけは嫌なのじゃ!!」
シャルティがちょっとふてくされるけれど
「逆だよ?人が増えるから料理も手伝ってもらえるから出来る料理が増えると思う」
「本当か!???」
「うん、もちろん。フライパンとかもちゃんとしたの作ってもらえるしね」
私がいえば、シルティやワンコ達が「楽しみなのじゃー!」と、走り回る。
こういうところは可愛いよねみんな。
□■□
「我々をこの地に住まわせてくださってありがとうございました」
会議室でデュランさんに頭を下げられる。
「いえ、お礼ならあの子達に言ってあげてください」
と、私は別室で遊んでいるリーチェちゃんとワンちゃんとにゃんちゃん達に視線を向ける。
「それでは今後の、ルールを取り決めたいと思います。
まだ昨日の今日での話なので、細かい事はこれから煮詰めましょう」
と、セルヴァさん。
「ルールですか?」
「殺人や盗み、喧嘩や暴行などまた詐欺などといったことが禁止なのは今までと変わりませんが、その罪の大きさによって罰則等も決めておかねばなりません。
またダンジョン内のルールも必要です」
なるほど、今まで狩りたい放題だったけれど、人が増えて譲り合いが必要になってくるよね。
細かいダンジョンのルールを二人が話し合っているのを見て、やっぱりこの世界でもっとも重要視されているのはダンジョンなんだなぁと実感させられる。
前のダンジョンのルールをそのまま適用でいいような気がするのだけれど、でてくるモンスターが違うので決めなきゃいけない事があるらしい。
え!?そんな事までルール決めるの!?ってことまで事細かく決めていた。
まぁ、マキやら鉄やら植物や鉱山はじめ、食料や毛皮など全部手に入るんだもんね。
ダンジョンが貴重なのもわかるし、農業も酪農もしないでそこで全部すませちゃうのは当然なわけで。
それが故農業や酪農をするという発想自体ないのかもしれない。
パンも自生しているシャクという植物から作るらしいのだけれど、それすらも栽培してないってどうなんだろう。
食料自給率が悪いのは仕方ないと思う。
この世界ダンジョンに頼りすぎなんだよね。
まだ獣人さん達の生活を安定させるのが一番の段階だからやらないけれど、もうちょっと落ち着いたら、地上で野菜とか育てたり酪農にチャレンジしたいと思う。
もちろん便利なダンジョンに頼るのは悪い事ではないのだけれど。
私たちが今地下10階で野菜をとりに行けるのはシャルティやワンコちゃん達の力があるからだけで、未来永劫この関係が続くかはわからない。
地下10階に到達できなければ野菜が手に入らなくなってしまうわけで、私達が歳をとって死んでも獣人さん達だけでも最低限の生活が送れるように基盤は整えておかなきゃ。
いい装備を残しておけばいいかもしれないけれど、もし余裕があるなら地上で野菜栽培とかもチャレンジしたいな。
「セルヴァさん私も意見いいですか?」
ダンジョンでの取り決めが終わり、話が生活基盤の所に移ったところで私は口をはさんだ。
セルヴァさんとデュランさんの話ではいままで通り、物々交換の自給自足という話に落ち着きそうだったのだ。
そして、日常生活で魔石を使う高度な魔道具をもっていない獣人さん達に不要な魔石はこちらに収める事になりそうだったのだけれど。
「はい、もちろんです」
「私としては物々交換ももちろんいいのですが、魔石をお金の代わりとして扱いたいなと」
「魔石をですか?」
「はい。魔石で塩や胡椒といった調味料を販売します。
また生活とは別に何%か税金として魔石をこちらに収めてもらって、その魔石で人を雇いたいと思ってます」
私が言えば、デュランさんが首を振り
「人が必要ならばこちらから無償で提供させていただきます。
住む場所を提供していただいて金品をいただくのは流石に申し訳ありません」
「それに塩や胡椒を販売となれば、それを手に入れられるのは現状クミ様だけです。
なるべくクミ様には迷惑をかけない方向で……」
と、セルヴァさんが言うけれど。
「だってこういうの楽しいじゃないですか!」
「え?」
「町を発展させるってこー、心ときめきません?」
ゲームみたいと言ってしまえば失礼になるから言えないけれど、なんだか一時期流行った異世界に行って現代知識でチートしました!の漫画みたいでわくわくする。
ダメだったらセルヴァさんが軌道修正してくれるだろうし。
「ああ、なるほど、クミ様はこういう事がお好きでしたね」
と、セルヴァさんがふむと頷いて、
「ではクミ様の考えをお聞かせくださいますか?」
と、にっこり微笑んだ。
「今までと同じで税金を取らせてもらいます。
ダンジョンでとれた魔石を生活に支障がでない分の一定量入れていただきます。
その魔石でパン屋や鍛冶屋など軌道に乗るまでこちらで育てたいなと。
もちろん生活できるくらいまで稼げるまでに軌道にのればこちらからの援助は一時期ストップしますし、軌道に乗れないようでしたら、税金で保護したいなと」
「なるほど。専門職をそろえるということですか」
「はい!熱烈にちゃんとしたフライパンとかが欲しいです!」
と、私。
文明に触れられたからフライパンが買えるかと心躍ったのだけれど、獣人達も街から買っていたらしく鍛冶職人が今はいなかった。
今はというのは、現大神官になってから、税金がきつくなり税金を納めるためにダンジョンに行くしかなく、廃業するしかなかったのだとか。
この世界ダンジョンで刃物が手に入ってしまうので修理の依頼もない。
そしてこの人口だとフライパンや鍋なども、そもそもパンとスープで済ませてしまうためあまり需要がなく、他所から買った方が安くね?と廃業してしまった。その人達にもう一度鍛冶屋をやってもらって、フライパンとかの日用品を作ってもらいたい。
私が力説すればセルヴァさんが「ではその方向ですすめましょう」と微笑んでくれた。











