49話 引っ越し
「今日はお疲れさまでした」
夜、私たちの屋敷で、セルヴァさんが私にコーヒーを持ってきてくれる。
部屋にはベガとアルが私を守るように隣に座ってくれている。
「しかし、本当によろしかったのでしょうか?」
「獣人さんのことですか?」
私がコーヒーを受け取りながら言えば
「はい。人が増えるという事は揉め事も増えるという事に……」
と、セルヴァさん。
あれから――獣人さん達は私たちの遺跡に移動することにした。
狙われていると知っているのに放っておくわけにもいかないし、シャルティの話ではラウルが出来れば獣人達を守ってほしいとデル達にお願いしたらしいのだ。
「だってアル達の友達のお願いだし、ほっとけないよね?」
と、アルに言えばアルが嬉しそうにワンワンと吠える。
「それに、私を見捨てられなかったセルヴァさんが、知り合いの獣人さん達を見捨てられるんですか?
獣人の人たちとも交流があるみたいですし」
と、いたずらっぽく言えば、セルヴァさんがうっとなり、
「ありがとうございます。感謝しております」
と、頭を下げた。
それがセルヴァさんらしい。
「獣人達の管理は私とデュランでしますので、もし何か不都合な事がありましたら、我慢せずにすぐに知らせていただけると。
こちらで対処します」
「はい、お願いします」
と、私はコーヒーを一口すする。
いま獣人さん達は街からこちらに移る準備をしている。
大急ぎで荷物をまとめているところだ。明日の朝迎えにいって全部デルのアイテムボックスに詰め込む予定。
明日には移動予定。
護衛にシャルティとデルがついていてくれるので大丈夫だと思う。
「それと……今後なのですが、もし今回のような事があっても、決してクミ様が表にでる事なきようお願いします」
「すみません、勝手な事をしちゃって」
「いえ、獣人達を助けていただいたことは感謝しております。
……ですが教団にクミ様の存在と、力が知られてしまった以上、彼らがクミ様を狙わないとは言いきれません。
彼らもまた、貴方の恋人を人質にするなどの手段を講じてクミ様を手に入れようとするかもしれません」
「……それはちょっと困りますね」
確かに氷点下まで恋愛感情は下がってしまったけれど、人質に取られるのは気分のいい話じゃない。
ひょっとして教団に戻した判断はまずかったかな?
でもあんな人の顔を見るのも嫌だったし、かといって殺す事なんてできないし。
「勝手に逃がしちゃってすみません」
「……いえ、彼を捕虜にしておくのも、こちらで面倒を見る必要がありますし、心情的にお辛いでしょうし仕方ありません。
それに、教団と接触さえしなければ彼らとてこちらに手出しはできないでしょう。
獣人達にもこの遺跡から出る事は禁止させます。
ここから一歩も出ずに連絡手段さえも断ち切る方向で考えております。
交渉すらできぬ状況なら彼らも手をだしてこないでしょう。
フェンリル様がこちらの味方にいると知っている以上、彼らも迂闊な事はしてこないと思います」
なるほど、だからデルを使ってカズヤをあちらに返したんだ。流石セルヴァさん。
「と、いう事はもうちょっと遺跡の中で遊べる施設を充実させる必要がありますね!」
「え?」
「だって、この施設の中から出られないという事はここですべて片がつくようにしないといけないわけですよ!
ダンジョンが直に行けるから食べ物には困りませんけど、もうちょっと運動する施設とか充実させないと!!
やっぱり土地に限りがありますから、三階建ての施設をつくって施設内で運動をできるようにしたほうがいいですね!
人口が増えた時の事も考えて土地も余裕をもっておかないと」
と、私が夢を膨らませていれば、セルヴァさんがぽかんとした顔をする。
「……何かおかしい事言いましたか……?」
「え、いや……その何といいましょうか、不安よりも先に生活の向上を考え出すのがクミ様らしいというか……」
「う、すみません。
でもきっとセルヴァさんが決めた事なら大丈夫だと思いますし。
不安になんて思ってないですよ」
私がそう言えば、セルヴァさんが顔を赤くする。
顔に出やすいところは純粋に可愛いと思ったりする。
「……ぜ、善処します」
「頼りにしてます!じゃあ、そろそろ気晴らしでもしましょうか」
そう言って私が立ち上がる。
「気晴らしですか?」
「はい、一杯付き合ってくれますか?」
と、私が台所から赤ワインを持ち出せば、セルヴァさんも「お付き合いさせていただきます」と微笑んでくれた。
今日のおつまみはジャガイモと塩で作ったガレット。
包丁で千切りにしたジャガイモに塩をふりかけ、フライ返しで押さえつけながら焼き上げる。
こんがり焼きあがったら出来上がり。
あとはチーズをオリーブオイルで焼いたパリパリチーズ。
それにマジックソルトで味付けしたもの。
うん、美味しくできた。
今日はいろいろありすぎて……嫌な事もあったけれどもう忘れよう。
セルヴァさんと、コップにワインを注ぎ、乾杯した。
誤字脱字報告&ポイント&ブックマークいつも本当にありがとうございます٩(ˊωˋ*)و
獣人さん達も仲間に加わってもふもふ度アップです!











