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48話 事情がさっぱり(´・ω・`)

「事情がさっぱりわからないので口をはさめなかったがあれはなんじゃ!?

 最低な男じゃ!?大丈夫か主!」


 デルがカズヤを咥えて遠くへと去っていく姿を見送りながらシャルティが私に詰め寄った。


「うん。心配してくれてありがとう」


 あれから、魔物達はすごすごと森へともどっていった。

 カズヤの方はデルが適当なところに置いてきてくれるらしい。

 きっと教団の人に保護してもらえるだろう。

 セルヴァさんの闇の魔法でカズヤが私達に関する情報を話せないようにしてもらった。

 私は遺跡に籠る予定なのでもう二度と会う事もないと思う。

 あそこの遺跡の城壁は人間くらいじゃ壊せないので、教団連中も手出しできないだろう。

 帰ったらもっともっと塀の高さを上げたいと思う。



「……口をはさんでしまい申し訳ありませんでした」


 と、セルヴァさんがしゅんとしながら謝る。


「そんな事ないですよ。言いたい事を言ってくれてすっきりしました!

 ありがとうございます!」


 私が手を取って言えば、セルヴァさんが「……はい」と力なく笑う。

 

「うーわんわん!!!」


 私とセルヴァさんが話していたらアルがくるくると私たちの周りをまわりだした。


 そちらに視線を移せば不安そうにこちらを見ている獣人の少女と黒い虎の姿がある。


「こやつらが、白虎の呪いも解いてほしいといっておるぞ。知り合いらしい」


 と、シャルティ。


 よく見れば確かに最初デル達に会った時と同じような状況だった。

 指定のスキルで闇を払えば、なぜか先ほどより一回り以上小さくなった白虎がそこにいる。猫くらいの大きさの白い虎。ナニコレ可愛い。


 白虎が霧がはれれば少女は凄く嬉しそうに白虎を抱き上げた。

 

「ありがとうお姉ちゃん!!」


「どういたしまして。もう無理しちゃだめだよ?」


 私が言えば少女はうんと微笑む。

 

 まぁ、私も正直よくわかってないのだけれど。

 何がどうしてこういう状況になったのだろう?

 のそのそと森に帰っていくモンスターの大群を見つつ思っていれば。


「セルヴァ様!!!ご無事でしたかっ!?」


 唐突にセルヴァさんの名前を呼ばれて振り返ればそこにいたのは複数の獣人の人達だった。 



 □■□



 あの後。私たちは獣人の街に案内されそこで話を聞くことになった。

 初めての異世界の街にドキドキしたが、小規模な街で、木でできた素朴……というかボロボロな家が立ち並ぶ街並みだった。

 中世ヨーロッパ風の建物を想像してただけにがっかりは隠せない。

 木製の掘立小屋みたいのがあるだけ。

 セルヴァさんの言う通り、本当に教団のせいでみんな貧乏な生活を強いられてるのが実感させられた。


 そして、町長の部屋でお互いがお互いの情報を交換し合った結果を総合するとこう。

 

 神殿がダンジョンなどの資源豊富な獣人の街を欲しがる。

 けれども、厄災の魔獣は獣人でないと鎮められないから手出しできなかった。

 それが故、白虎ラウルを勇者で倒そうとする。

 ラウルは自分が倒されれば、教団が獣人を排除し奴隷にしようとしているのを知っていたため、森の魔物を召喚して追い払おうとした。


 そこに私たちが合流。


 という流れらしい。

 ラウルも本来の力を取り戻せば強いらしいのだけれど、デル達と一緒で闇の吸収量が多すぎて弱体化してしまい、レベルが40まで下がってしまったらしく、カズヤでも倒せるレベルになってしまったとか。

 今は私が闇の力を払ってあげたのでレベル200まで戻ったけれど、それでも本来の力とは程遠いらしい。


「まったく、その教団と言うのは許せんのじゃ!!

 我のブレスで滅ぼしてやるのにっ!!」


 セルヴァさんと獣人の街の町長デュランさんの会話を聞いていたシャルティがぷんぷんと怒り出す。


「だからそういう物騒な事は言わない」


 私がぽんっとシャルティの頭を叩けば


「むぅ。人間はよくわからん。諸悪の権化なら殺してしまえばいいではないか」


 と、物騒な事を言う。


 確かに、物語なら悪いやつを倒した!やったー!になるのだろうけれど。

 私の世界だって独裁者を倒したら、押さえつけるものがなにもなくなって、小規模な部族達で意見が合わず、戦争になり治安が悪くなって、独裁者を倒す前よりも状況が悪化しいまだ内戦状態の国だってある。

 悪いやつを倒せば必ず世界に平穏がくるわけじゃない。

 何の考えもなしに行動すれば、却って混乱を招くこともある。


 私たちがどうこう出来るレベルの話ではないし、正直世界を救ってくれと言われても私も困る。

 勝手に召喚されただけなのにそこまで責任はもてない。


「とにかく、ラウルさんの話が本当なら獣人さんたちを避難させた方がいいですね」


「避難といいましても、我らはこの地を捨てても行くところが……」


 町長のデュランさんが困ったような表情で言う。


「それならちょうどいい場所があります」


 私がにっこりと微笑めば、その場にいた獣人さんたちが全員顔を見合わせるのだった。

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