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41話 魔獣とリーチェ

 もうすぐ勇者が魔獣を倒しに来る。


 獣人の街の村長父デュランがリーチェに告げたのは昨日の事だった。

 まだ正確な日時はわからないが、いつか討伐隊がこちらに来るだろうと知らされたのだ。

 リーチェは慌てて、魔獣との秘密の場所に向かう。


 リーチェと魔獣の出会いは森の中だった。

 迷子になっているところを厄災の魔獣に救われたのだ。


 それ以後、魔獣とリーチェは秘密の場所でひそかに会っていた。


 リーチェはなぜか魔獣と意思疎通ができたのである。

 魔獣は語り継がれているような、悪い魔物じゃない。

 それは厄災の魔獣との話でよくわかっていた。


 彼は遠い昔、魔獣を罠から助けてくれた獣人との約束を守り、獣人の村を守っていてくれていたのだ。


 魔の森の闇が獣人の村にあふれ出ないように、すべてをその身体に引き受けていた。


 父親にその話をしようとしたが、厄災の魔獣に止められた。

 事実を知れば、いつか自分が本当に魔物化したときに倒せなくなると。


 それでも、まだ厄災の魔獣はまだ完璧に魔物化なんてしていない。


 勇者に殺されちゃうなんて、そんな事はさせない!

 リーチェは魔獣に知らせるべく、彼の住処へとやってきたのだ。 


「魔獣さん、魔獣さん、もうすぐここに勇者があなたを討伐にくるの。

 だから逃げて」


 木の下で寝ていた魔獣にリーチェが話しかければ


「ぐる、るるる」


 黒い靄のようなものを纏いながら魔獣が少女に答える。


「駄目だよ、今度の勇者は異世界からきた勇者なんだって。

 きっと強いから逃げないとダメ。

 魔の森ならきっと安全だからしばらくはお供えがあってもでてきちゃだめ。約束だよ?」


「おーい。リーチェどこだ?」


 遠くから大人の獣人の声がきこえ、リーチェと呼ばれた少女ははっとした。


「約束だよ?魔獣さん。勇者がくるからしばらくは魔の森に隠れててね?」


 そう言って干し肉を置いて行く。


「ぐるるるる」


 という、魔獣の言葉を背に聞きながら。



□■□



「すごいですよこの建築アプリ!!!!」


 そう言って私が画面を見せればみんなが画面をのぞき込む。

 あれから、みんなが頑張ってくれたおかげで魔石(大)もすぐ1000個集まった。

 元々足手まといの私がダンジョンについていかなければ、狩り放題だったため集めるのは予想以上にはやかった。


 セルヴァさんも気が付けばレベルが上がりまくっていて、たぶん人類最強レベルだと思う。

 平均を知らないけれど……。地味に私もダンジョン外でご飯を作って待っていただけなのにセルヴァさんと結んだ血の契約の経験値範囲だったらしく、私もレベルが200を超えていた。それでも、私はダンジョンにむいてないと思う。


 ……だって怖いんだもん。


 倒せるか倒せないかが問題じゃないんだよ!?

 考えてほしい、クマが大群で襲ってきたら、たとえダメージを喰らわないとわかっていても怖いのと一緒。

 襲い来る巨体が怖いんだから仕方ない。

 特にオーク系とゴリラ系。あれは集団でくるから怖い。


 私がオークの集団に怖がっていたら


「ふむ、一体何ができるのじゃ?」


 と、シャルティの言葉で私は現実に戻った。

 そ、そうだ。今はアプリだった。


「えーと建物をたてたり、街に石畳を引いたり、木や植物を選ぶことも出来たりできるらしいですよ!

 しかも建物の種類も選べる!

 古代ギリシャ風から中世ヨーロッパ風もあります!」


「これはすごいですね」


「これなら私の理想の街が完成させられるかも!?」


 中世ヨーロッパ風の景色が再現できるとか夢溢れるものがある。


「しかしまた魔石が必要ですね」


 と、セルヴァさんの言葉に私の動きが止まる。

 うっ確かに。

 これ一度更地にするのも魔石がいる。

 現在の遺跡を一度更地にしないと新しい建物は建てられない。

 一度更地にしてさらに建物を建てるとなると、かなりの魔石の量が必要。

 うーん、魔石集めに参加していない私が集めて☆とは言いにくい。


「うぬ。主が料理を作りやすくなるというのなら全力で頑張るまでじゃ!

 我も自分用の大きな部屋がほしいぞ!」


「わんわんっ!!!」


「そうですね。頑張りましょう」


「みんなありがとう!!!愛してるー!!!!」


 私がシャルティとアルを抱きしめれば、「ベ、別にこれくらい当然なのじゃ!?」とツンデレを発動するシャルティと、わんわんっと嬉しそうなアルに、ベガとデルも抱っことこちらによって来る。


 うん、みんな可愛いなぁ。

 頑張って美味しいごはん作るからね。



□■□



「うーん、ここには公園を作りたいな」


 遺跡を見渡しながらメモ帳片手に私はあたりを見まわたした。

 遺跡の面積はかなり広く、たぶん街規模なら余裕でできるくらいの広さがある。

 だからこそ、こだわりをいっぱい詰め込みたい。

 ハウステンボ●みたいなの作りたいな!と私がるんるんで設計図を書いていれば


「最近のクミ様はイキイキしていますね」


 と、セルヴァさんに話しかけられた。


「え!?あ、すみません。街づくりが楽しみで」


「どんなプランか決まりましたか?」


「はい、大体は、まず街の真ん中に大きな公園を作ろうと思ってます」


「公園ですか?」


「こー、遊具が置いてある場所?っていうのかな。

 散歩ができたりベンチがあって休めたり池があって魚が住んでたり。

 これチューリップ畑とか指定できるんです!だから花畑とか。

 散歩道があったり。まぁ小さい公園ですけど憧れなんですよね」


「憧れ……ですか?」


「はい、家族みんなで歩くのが。


 ……まぁその夢はやぶれちゃったわけですけど」


 私はアハハと笑ってごまかした。


「でも、今はセルヴァさんやワンちゃんやシャルティもいるし、みんなでお散歩もいいかなぁーって」


 と、私は遠くできゃっきゃと鬼ごっこをしているわんちゃん達とシャルティに視線を移す。

 わりとガチで鬼ごっこをしているので凄い速度の追いかけっこだけど……たぶんほほえましい。

 風圧でいろいろ吹き飛んでいるけど微笑ましいはずだ……うん、たぶん。


「そうですね、完成したら一緒に歩きましょう」


「はい!お弁当も作って広げてみんなで食べましょう。サンドイッチとか広げて」


「それは楽しそうですね」


「こちらの世界ではお弁当をもって公園で食べるとかはないんですか?」


 私が聞けばセルヴァさんは少し困った表情になり


「……そうですね。

 これから貴方と暮らしていくうえで話しておかなければいけないかもしれません」


「……え?」


「私は、少し特殊な育ち方をしたので……

 普通の親子のつながりというのがよくわかりません。ですから普通の生活を聞かれてもわからない次第でして」


「特殊な育ち方?」


「私の父親は、ダルデム教の大神官ロンディエンです」


 告げるセルヴァさんの顔はどこか悲しそうだった。



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