39話 晩酌
「今日はお疲れ様でした」
あれから食事も終わり、お風呂に入ってから私とセルヴァさんは少しお酒を飲むことにした。
ネット通販で普通に日本酒もワインも買えたので、今日は赤ワイン。
おつまみには酢と砂糖と塩コショウで味付けした玉ねぎとトマトのマリネ。
あとはホットケーキミックスに野菜を入れて棒状にカリカリに焼いた野菜スティック。
焼き鳥も作ろうかと迷ったけれど肉類を調理しだすと、わんちゃんたちが参加しにくるのでネギを焼いて、めんつゆと唐辛子でつけたやつをおつまみに。野菜だけですませることにした。
もうちょっと落ち着いたらおつまみも凝ったの作りたいな。
「いつの間にか大家族みたいになっちゃいましたね」
お酒を飲んでしばらくしてから私とセルヴァさんが作ったお布団の上でスヤスヤ眠るワンコとシルティを見つめて言えば
「はい、そうですね。家族がいたらこんな感じなのかもしれませんね。
今までは神殿の業務が終われば、パンと干し肉を食べて寝るだけでしたから。
このように毎日、皆で食事を囲んで食べるのは楽しいです」
お酒を飲んで少し赤くなった頬のまま微笑んでくれた。
「私もです。今まで一人暮らしでしたから」
恋人はいたけど、結婚するまでは同棲はなしの方向だったので、一人暮らしだったんだよね。
だから浮気にも気づけなかった。まぁ自分も間抜けだけど。今思えばあんなやつと結婚しなくて本当によかったと心から思う。
「ワンちゃんたちも可愛いし、シャルティもツンデレだけど可愛いしなんだか子供が出来たみたい」
「クミ様ならきっと素敵な奥方になれ……」
と、言ってハッとした。セルヴァさんもキリカ達から話を聞いていたらしく、カズヤと私が元恋人同士だったということは知っているらしい。
というか、キリカ達に私の事をかなり悪い人間と説明を受けたらしいけれど、セルヴァさんは信じてませんからとあいまいに笑うだけで内容までは教えてくれなかった。
「あ、ああすみません」と、気づいたのか謝られる。
「気にしないでください、もうあいつの事なんて忘れましたら。
もう恋愛はこりごりです」
と、ため息交じりに答える私。
そりゃ私だって100%いい恋人ではなかったと思うけれど、あんな裏切り方はいくら何でも酷すぎる。
「……そうですね」
「私はもうこのままでいいですよ。
みんなで狩りにいって食事をつくってワンコたちと遊んで。
セルヴァさんとこうやってお酒を飲んで。
今の生活で十分幸せです」
そりゃ日本にも友達もいて会社の同僚もいたけれど、戻れなくなったものを嘆いてもしかたないものね。
こうやってセルヴァさんにこの世界の事を聞いたり、わんちゃんたちとの狩りの様子を聞いてるだけでも楽しいもの。
ここは「私」の事を必要としてくれる人がいてくれるから、嬉しい。
それにしても、お酒が久しぶりすぎてちょっと酔いがはやい気がする。
なんだか少しぼーっとしてきた。
机に顔をつければ大理石っぽい素材が冷たくて気持ちいい。
「セルヴァさんは……大丈夫なんですか?」
「え?」
「私を庇ったせいでこんな事になっちゃって、恋人とかいたら申し訳ないなって」
「いえ、私が勝手にした事ですから気にしないでください。
教団の責任は私の責任でもあります。
……それに、闇属性だったがゆえに、女性からは恐れられていましたし、女性に触れると蕁麻疹ができてしまいましたから。
特定の女性と付き合うということはありませんでした」
ああ、そっか。最近セルヴァさんが完全防備だから忘れかけてた。アレルギーあるんだっけ。
……うん。でも恋人いないのか。
――このまま、こうやってセルヴァさんと夫婦みたいに過ごせたら嬉しいな――
そんなことを考えながら、いつの間にか私は眠りについていた。
□■□
「……セルヴァさん。すみません」
次の日。なぜか二日酔いになっていた。
セルヴァさんがベッドまで運んでくれたらしく、布団で寝ている状態になっている。
いままで飲んでも二日酔いなんてしなかったのに。
「いえ、疲れがたまっていたのでしょう。
今日はゆっくり休んでくださいね。
肉を焼くのと、ホットケーキくらいは作れますので、シャルティ様やフェンリル様のご飯は私が作ります。
クミ様の食事もホットケーキをつくりますから、食事の事は気にしないでください。
ちゃんと寝ていてくださいね?」
と、微笑んでくれた。
「すみません」
うー、なんだか申し訳ないけれど頭がガンガンする。
セルヴァさんが私のベッドの横の台にお水をもってきてくれる。
次からお酒は気を付けて飲まないと。











