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36話 勇者が動き出した!

「なんだか今日は疲れましたね」


 作ってあげたお布団でスヤスヤ寝ているシャルティやわんちゃん達を石造りの席に座って眺めつつ私がつぶやけば、セルヴァさんが苦笑いを浮かべて


「はい、そうですね」


 と、微笑んだ。


 シャルティが来てから、アルが急に焼きもち焼きになったらしく、シャルティのお布団を作ってあげるのを見ていたアルも作ってとねだるので好きなマントを選ばせてあげた。

 そうしたら、今度はシャルティもそれがいいと騒いだり、こっそりデルタとベガも布を選んでて、結局私とセルヴァさんで縫ってあげてたので、寝かしつけるのになかなか時間がかかってしまったりする。


 わんこを飼っていると、子供ができると焼きもちをやくと聞いたことがあるけれど、それだけわんちゃん達も私になついていてくれてるのかな。


 なんだか少し嬉しくなる。


 結婚して犬を飼って子供が出来たらこんな感じなのかな?

 施設にいたから普通の家庭はよくわからないけれど、テレビドラマの夫婦とかこんな感じだよね。


 チラリと隣でコーヒーを飲んでいるセルヴァさんに視線を向ければ、にっこり微笑んでくれて、思わず顔が赤くなる。


「どうかなさいましたか?」


「あ、いえなんでもないです!?」


 幸せな家庭の夫婦っぽくていいなぁなんて思ってしまったのが恥ずかしくて私は慌てて顔をそらした。

 セルヴァさんと夫婦とかなれたら幸せそう。

 命がけで守ってくれて紳士でイケメンとか理想の男性だよね。

 まぁセルヴァさんの方に選ぶ権利があるので無理だけど。妄想するのは自由……だと思う。

 私は考えを振り払うようにあわててコーヒーを飲んだ。


 

□■□



「本当に勇者を獣人の村に派遣なさるのでしょうか?」


 神殿の執務室で、大神官に秘書の神官が尋ねれば、大神官は書類の手を止めた。


「ああ、そうだ。そろそろ勇者も仕事の一つや二つさせねば、なるまい?

 厄災の魔獣を勇者の光の力で倒せれば、獣人の街をこちらの手中にできる。

 厄災の魔物はレベルは低いが光属性しか効かぬ上、闇をまき散らすからな」


 と、微笑んだ。


 もし、その戦いで勇者が死ぬことがあれば、それはそれで構わない。

 勇者など所詮聖女召喚のおまけにすぎなかったのだから。


 セルヴァがいなくなった事により、獣人たちを排除するのを反対するものはもういない。

 問題は獣人でなければ厄災の魔獣を森の中に鎮めておくことができないがために、市民権を与えているにすぎない。

 もし勇者が厄災の魔獣を払う事ができれば、獣人たちを排除し、ダンジョンの利権を神殿に帰する事ができる。


 大神官ロンディエンは元々人間こそ神に近くそれ以外の種族は滅ぶべきと主張している過激派だった。

 いまではその発言をいさめていた先代の大神官も、セルヴァもいない。

 誰も止められないのだ。


「3か月後出発する。準備をしておけ」


「はっ」



□■□


「遠征?」


「ああ、しばらくこの神殿を離れるんだ」


 神殿の渡り廊下で、何人もの美形な神官を引き連れたキリカと、やはり見目麗しい女性を連れたカズヤが会話をしていた。

 キリカはすぐに立ち去ろうとしたのだが、カズヤが呼び止めたのだ。


「そうなんですか。気を付けてくださいね」


 と、キリカは愛想笑いを浮かべた後、すぐに歩き出し、一緒にいた美形な神官達がカズヤにお辞儀をして去っていく。


――行先すら聞かないのか――


 カズヤはギリッと奥歯をかみしめた。


 少し向こうでは神官達と楽しそうに話すキリカの声が聞こえてくる。


 本当にキリカにとって自分はクミを見下すためのアイテムでしかなかった事を痛感させられる。

 だったら、勇者として活躍してキリカを見返してやるしかない。

 3ケ月ほど外で訓練をつみ、実戦に挑む。


「行こう、仕事だ」


 カズヤの言葉に後ろに控えていた女性たちが頷くのだった。

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