34話 ドラゴンが仲間になりたがっている▶だが断る
あれから私は料理を続行していた。
ゴールデンドラゴンはこの遺跡に入りたいのか足でバシバシ叩いているけれど、見えない壁があるので入れない。
ここに居る限り対モンスターに限っていえば無敵だから大丈夫だよね。
私はかまわずジュワジュワと油で踊っている唐揚げの作業にとりかかる。
二度揚げしないと美味しくないし、油は目を離すと危ない。
なんたってコンロと違って火加減を見ながらだからすごく面倒。
ベガも最初は驚いていたけれど、入れないのに気が付いて、私の側にちょこんと座った。
「守ってくれるの?」
と、私が言えば、「わんっ!!」と答えてくれるので
「いい子だね。じゃあ味見してもらおうかな?」
と、とんかつを一枚あげた。ベガは物凄く嬉しそうにとんかつを食べ始める。
しっぽの振れ幅がすごい
ドラゴンが上でガンガンやっていてうるさいけれど、入れないから大丈夫だよね?
私がスキルで指定をすれば、倒しますか?はい いいえ と出るので、いざという時は指定で倒そうと思う。
ただ、ゴールデンドラゴンっていいドラゴンのパターンもあるからセルヴァさんに聞いてからにしよう。
そんな事を考えていれば
『おい人間』
と、頭上から声が聞こえた。「え?」と私が空を見れば、ゴールデンドラゴンと目があった。
よく見れば……ドラゴンがよだれをじゅるりと飲み込んだ。
あ、これもしかして……
『よく聞け人間、お前を偉大なるゴールデンドラゴンのディストニアの第三の子シャルティ様の眷属にしてやろう。その代わり……』
「お断りです」
ドラゴンの言葉を遮って、私が言えば、ドラゴンはしばらく硬直した後
『……は?』
と答えた。
『お、お主我が何かわかっておるのか!?神の使いのゴールデンドラゴンじゃぞ!?
我の眷属となれば不老不死に近い力が手に入るのじゃぞ!?
魔力も我の力を自由につかえるのじゃぞ!?』
「それは凄いですけど、眷属にするかわりに、毎日ご飯を作れとかいうオチですよね?」
『よくわかっているではないか!』
「だから嫌です」
『んなっ!?』
「今だってワンちゃん達のご飯だって量が多くて大変なのに。
これでその巨体の料理を作るなんてことになったら、一日料理を作っても終わりませんよ?
延々揚げ物を揚げ続ける生活が続くなんてブラックです、過剰労働です。絶対嫌です」
『や!?でもゴールデンドラゴンじゃぞ!?
お主ら人間が神と崇めまつるゴールデンドラゴンじゃぞ!?』
「でもすみません、これ以上食事の量とエンゲル係数に悩まされるのは嫌なので、他をあたっていただけると」
『他って!?
なんじゃ、部下扱いが嫌なのか!?
で、では仕方ない。
嫌じゃが、わ、我がテイムされてやってもいいんじゃぞ!?』
「って、ツンデレ風に言ってもだめです。
テイムなんかそれこそ、食事を与える義務が発生しちゃうじゃないですか。
ペットは飼い主が最後まで面倒を見ないと。絶対お断りです」
『何故じゃ!??』
「逆になぜテイムならOKかと思ったのか私が知りたいです!?
その巨体を満足させるために一人で食事を作り続けるのが嫌だと言ってるんです!
食事の材料を集めるだけでも一苦労ですよ!?
一日で終わるかもわからない重労働ですよ!?
はっきりきっぱり奴隷じゃないですか!」
『嫌じゃー!食べたい!その作ってるもの食べたいのじゃ!!』
と、ドラゴンが急に駄々をこね始める。
うっ、ちょっとかわいいと思ってしまったけれど、ここは心を鬼にしないと。
あの巨体が満足する量の肉を下処理するだけで何日かかるか想像できない。
火で焼くのだってコンロが何個もなければたりない。
それこそ人を100人くらいに増やさなきゃ。毎日食事とか無理すぎる。
セルヴァさんと私が奴隷状態になってしまう。
いくら力がもらえるからって異世界でブラック企業は嫌だ。
「可哀想ですけど無理ですよ。
ゴールデンドラゴンさんを満足させる量の調味料だって買えないだろうし、一日個数制限があって5個までなんですから」
『そうか!!体の大きさの問題なのじゃな!?』
「うーん、そうなりますね」
『ならこれでどうじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
ドラゴンが嬉しそうに咆哮をあげれば、身体がぱぁぁぁぁっと輝いた。
あ、これもしかして……
思った通り光が収まるころには可愛い金髪幼女(服付き)に変身する。
『さぁ!!これで文句はあるまい!!
我の眷属になるなり、我をペットにするなりしていいから飯を食わせるのじゃ!!』
「あ、ごめんなさい。ドラゴンが幼女になるの反対派です。
ドラゴンは最後までドラゴンでいるべきだと思います」
私がそう言えば、ドラゴンは悔しそうに
『なんの話じゃぁぁぁぁぁぁ“!!!』
と、地団太を踏むのだった。











