33話 ゴールデンドラゴン
「うーん。問題は私の防御力のなさだなぁ」
私はベガと一緒にご飯の用意をしながら考える。
今日はピザと、ボアのとんかつと、鳥系のモンスターのから揚げ。
お肉が柔らかくなるように塩と、砂糖と水につけて、クーラーボックスに下処理してあったものを取り出した。
あれからワンちゃんたちとセルヴァさんが魔石集め頑張ってくれたおかげで結構調味料もそろえられたからわりと作りたい放題なんだよね。
鳥系のモンスターは倒すと食べられる卵も落とすのがわかり卵料理まで可能となった。
おかげで料理の幅がぐんと広がった。
セルヴァさんとデルとアルは、クリスタルゴーレムから魔法防御の上がるマントが手に入るかもしれないからと、まだ地下九階で狩りを頑張ってくれている。
私が流れ弾で死なないようにと防具を集めていてくれる状態だ。
なんだか私一人が弱いために迷惑をかけて本当に申し訳ない。
よーっし、その間にすっごく美味しいものを作ってまってよう!
私はホットケーキミックス、卵、牛乳、バターを混ぜ合わせる。
牛乳は常温保存可能な紙パックのやつ。
混ぜてこねたそれに、製菓用チョコレートを包んで油で揚げる。
これでチョコレート入りドーナツの出来上がり。
あとはアルがチョコ大好きだからさらにそのドーナツにチョコを付けたのも作ってあげる。
次はデル。あの子は揚げものが大好き。
言葉は通じないけれど、三人とも大好きなものは尻尾の振り具合の速度が違うのでわかりやすかったりする。
熟成させ下処理してあった鶏肉をショウガ、ニンニク、酒、しょうゆ、みりんで味付けする。あとは、クーラーボックスの中に入れておいて下味をつけておかないと。
ベガが好きなのはとんかつだから、塩コショウで味付けしたボアのお肉に小麦、卵、パン粉、で衣をつけてあげるだけ。
そして、私とセルヴァさんの料理はピザ。
ホットケーキミックスと牛乳、オリーブオイル、塩を手につかなくなるまでよくこねて、丸い鉄の盾のフライパンに敷き詰める。
その上に、ケチャップ、マヨネーズ、ニンニク、マジックソルトとブラックペッパーで作った自家製ケチャップソースをかけて、具とチーズをかけて、焼き上げる。
うーん、調味料が買えるから一気にイージーモードだよね。
あとは野菜が欲しい。野菜!調味料のケチャップとかで野菜はとれるっていえばとれるけれど、やっぱり玉ねぎを焼いてかつお節をかけてポン酢をつけてたべたりしたい!あと野菜にマヨネーズ付けただけとかサラダとかも!!明日には頑張ろう!
私が油で大量のドーナツやから揚げをあげていると。
ぬっ!!
いきなり空が暗くなる。
「ん?雨でも降るのかな?」
と私が空を見上げれば……そこに居たのはゴールデンドラゴンだった。
□■□
【ゲームマスター】の力が感じられた――見て来なさい。
ゴールデンドラゴンの集落で、そう命を受けたゴールデンドラゴンが言われた場所に来てみれば、そこには謎の遺跡と、人間の女とフェンリルの姿があった。
人間達が魔の森と呼んでいるエルディアの森はつい最近まで闇が深くてゴールデンドラゴンでさえ入れなかったはずなのに、いつの間にか闇が晴れていたのである。
(なんじゃこやつらは?)
ゴールデンドラゴンが遺跡に入ろうとするけれど、見えない壁があって入れない。
ブレスなどの攻撃も通じない。
これは【始祖ゲームマスター】の遺跡か。
しばらく人間を見ていれば、人間は最初に驚いたそぶりを見せただけで、こちらが手を出せないと知るや否や、料理を続行しはじめた、
(すごく香ばしい匂いなのじゃ。旨そうなのじゃ)
ジュワジュワと何かが跳ねる音とともに、茶色い物体が液体の中で泡をたてている。
そこから流れて来る匂いは香ばしくて、ゴールデンドラゴンはじゅるりと唾を飲み込んだ。人間の側にいるフェンリルが一枚その物体をもらって嬉しそうに食べている。
さくっという音と「はっはっはっ」と嬉しそうにフェンリルが食べるそれ。
く。羨ましいと思いながらよくよく観察すれば、女の側に、古代文字で書かれた梱包があり、そこにはゴールデンドラゴンのよく知る言葉があった。
チョコレート・ホットケーキミックス
はるかはるか遠い昔。まだゴールデンドラゴンが小さかった頃。
始祖ゲームマスターがゴールデンドラゴンたちにふるまった甘いお菓子。
始祖が去ってからもう食べられる事もないだろうと諦めていたそれが、目の前にあるのだ。
もしかしてあやつ、異世界の食べ物を手に入れられるのか!???
うらやましいのじゃ、うらやましいのじゃ。
昔始祖が、ゴールデンドラゴンの村にいた時振舞ったお菓子の味。
もう二度と味わう事ができないと思っていた異世界の味が再び味わえるじゃと!?
『おい人間』
ゴールデンドラゴンはたまらずその人間の女に話しかけるのだった。
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