29話 スマホ
「今日は装備も洗って洗濯してしまいましたし、お布団などの準備もできたので、ちょっと遺跡を探検したいと思うのですがいいですか?」
次の日。朝ごはんを食べ終わった後、私が言えば、セルヴァさんがお湯を飲みながら
「探検ですか?」
と、聞いてきた。
「はい、初日に住めそうな所を探索しただけでよく調べて無かったし、お風呂みたいな役にたつ施設がまだ隠されているかもしれないので!」
「なるほど」
と、セルヴァさんもカップを置いた。
ワンちゃん達は熟成肉を美味しそうに尻尾を振りながら食べている。
調味料も限りがあるので、今日はマジックソルトで味付けしただけのお肉を、骨にくっつけてよくある漫画肉にして焼いてあげたらすごく喜んでた。
あの子たちは喜んで食べるので作り甲斐がとてもある。
ちなみに私とセルヴァさんはウナギもとい白身魚とウサギ肉をスープにしたもの。
……そろそろ野菜も食べたいけど、洋服を洗わないとだから今日は我慢。
乾燥機なんてないので今日は洋服は干している。
明日はダンジョンを再開しなきゃ。
「そういえば、不思議な場所がありましたね」
「不思議な場所」
「はい。部屋自体は一つしかなかったのですが、プレートの上に文字が刻んでありました」
「文字?」
「内容はわかりません、私の知識にない文字でした」
「なんだか面白そうですね!!」
「行ってみますか?」
「はい!是非!!!」
と、私とセルヴァさんが歩いていけば、拠点として住んでいる家から結構離れた場所だった。ここ、無駄に広いので20分くらいかかる。
辿り着けば祠のような小屋にぽつんと、プレートのようなものが飾ってある。
「なんでしょうこれ?」
私がそのままプレートをのぞき込めば――
「カゴメ カゴメ の歌詞?」
そこにあったのは日本語で書かれた童謡の歌詞だった。
「読めるのですか?」
「はい。これ歌ですよ。歌の歌詞の一部です。
カーゴメ♪カゴメ♪♪」
私が歌をそのまま歌えば
ズゴゴゴゴゴゴゴゴ
急に地面が揺れ、床がぱぁぁぁぁと光る。
「なっ!?」
慌ててセルヴァさんが私を抱きしめて、ワンちゃんたちも私の周りに即座に集まった。
途端――私の目の前に光る何かが現れて――そこにあったのは誰がどう見ても「スマホ」だった。
□■□
「こ、これは……?」
光った状態でぷよぷよ浮かんでいるそれに、私は思わず手を伸ばす。
途端――
スマホがぱぁぁぁっと光り、スマホの画面からよく漫画とかにある立体映像みたいな形で日本風の恰好の男の人が映し出された。
いかにも現代人ですという恰好をしている男の人だ。
もしかして日本人?
「これは?」
セルヴァさんが警戒して私を抱き寄せたまま数歩下がり、わんちゃんたちが守るように私たちの前にでた。
けれど映像の人はおかまいなしに
『ここに来れたって事は守護者Gを倒したんだね』
と、にこやかに笑った。
守護者G?そういうえば遺跡に来た時そんなのがいた気がする。ガン●ムが。
「あ、あなたは?」
『あーごめん、これ単なる映像だから。話しかけても無駄だよ?
にしても君は凄いね。あの守護者Gは何重にも魔法陣を掛け合わせ逆算しなきゃ倒せないはずだったんだけど』
と、映像の男の人は感心したようにうんうん頷いている。
そ、そうだったんだ。スキル一発で倒せたけれど。
『君の実力はたいしたものだよ、この魔法陣を逆算できる人間は僕が知る限り3人だ。
この僕と、そしてマリウス、そしてランドーニのね』
「どちらも伝説の大賢者と言われる偉人です」
と、セルヴァさんが教えてくれる。
『名誉に思うと良い、君はその大賢者と並んだんだ』
スキル一つ使っただけです。全く並んでおりません。
魔法陣の逆算?何それ?魔法陣どこかにあったの?
私がセルヴァさんを見れば、セルヴァさんも心当たりがなかったのかあいまいに笑った。
うん、私達まったく気づいてなかった。
やばいまったく実力の伴っていない過大評価ってわりときつい。
『それに――あの魔法陣が逆算できて、この歌詞をちゃんと歌えたってことは、たぶん僕と同じ出身だと思うんだ。だから君にプレゼント』
「プレゼント?」
『そう!この世界の何が困るって食生活だろ?
だからとっておきのものを用意しておいた』
と、満面の笑みを浮かべて
『このスキルと遺跡のすべてを君にっ!!!』
男の人が手を広げた途端。
▽▽▽
クミがこの遺跡の管理者になりました。
古代の遺跡の権限すべてがクミに譲渡されます。
スキル「ネット通販」を手に入れました。
△△△
というシステムメッセージが表示される。
「え?遺跡の管理って?」
『それではよき異世界ライフを!!』
そう言って男の人の姿は掻き消えるのだった。
誤字脱字報告&ポイント&ブックマーク本当にありがとうございました!!感謝!
15万文字80話まで書けました~!








