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28話 偏見

(……嫌われてしまっただろうか)


 遺跡に用意された風呂で身体を洗いながらセルヴァはため息をついた。

 ごしごしと石鹸で泡立てた布で身体を洗いながら、石鹸に視線を向ける。

 石鹸を渡そうとしてくれた時、反射的に手を引いてしまった時のクミの顔を思い出す。

 ひどく、傷ついた顔――




「穢わらしい!!触らないで!!」




 幼き時、母に触れる事すら拒否された幼少時代。

 触れる事すら拒否されるのがどんなにつらい事か、自分は知っている。

 それなのに自分は同じ事をしてしまった。


 これでは虐待していた母と同じではないだろうか。

 

 聖職者と天使の血を引く子どもが闇属性という事実に母は耐えられなかった。


 聖女召喚できる優秀な子を――そう言い聞かされ育ってきたセルヴァの母にとってセルヴァは出来損ないでしかなかったのだ。


 セルヴァを生んだことにより、もう二度と子が望めないと分かった時。

 その憎しみはすべてセルヴァにむいてしまう。


 暴力を振るわれる日々。虐待に気付いて祖父母が保護してくれた時には女性を恐れるようになってしまっていたのだ。

 いまだに祖母以外の女性には素肌で触れる事ができない。


 セルヴァは自分の身体に残る虐待の傷を見て、目を細めた。

 幼き頃に受けた虐待をいまだ自分は消化できずにいる。

 心が弱いからこそ、このように女性を触ると体が拒絶反応を起こしてしまうのだろう。


 あんな失礼な態度をとってしまう事になるなら先に事実を伝えておけばよかった--。


 ……怒ってなければいいのだけれど……。


「はぁぁぁぁぁ」


 と、もう一度深くため息をつくのだった。



□■□



「セルヴァさん!!見てください!!」


 お風呂からでてきたセルヴァさんに私は完全防備した装備をみせた。

 私の方は完璧に素肌の露出がないようになっている。


「……それは?」


 風呂上りで私の用意した布の服に着替えた状態のセルヴァさんがぽかんとする。


「はい。肌に触れるのがダメみたいなので日焼け止めようにもってきて使ってなかったアームカバーとかつけてみました。

 これならふいに近づいても大丈夫ですよね。

 今回は知らなくて準備出来なかったですが、今度セルヴァさん用の布の服も素肌がでない服にリメイクしましょう」


 と、半袖で少し肌の露出の多い布の服を真剣に眺めて言う。

 基本ドロップされる布の服は袖が短い。もうちょっと長くリメイクするかアームカバーみたいのをつけないと。


 その様子にセルヴァさんは少しぽかんとした後。


「……その、怒っていらしゃらないのですが?」


 と、聞いてくる。


「え?アレルギーみたいなものですよね?

 最初驚きはしましたけど、怒るなんてとんでもない。

 個人の体質はかえられません」


 私の言葉に、何かを一瞬言いかけたセルヴァさんは息を呑んだ後


「……あなたは変わっていますね」


 と、力なく微笑んだ。


「うーん。そうですか?私はセルヴァさんの方がかわってる気がしますけど」


「私がですか?」


「さっき、セルヴァさん手を離した時、確かに驚きました。

 でも驚いたのは……セルヴァさんが凄く悲しそうな顔をしていた事です」


「え?」


「セルヴァさんは優しいのはいいですけれど、ちょっと相手に対して気を使いすぎな気がします。

 苦手な事があるなら、それを対策すればいいだけですから。

 相手を傷つけたくなくて、黙ってるのも確かに美徳ではありますけど。

 これからずっと生活を一緒にするんですから、苦手な事があるならちゃんと言っておいてくださいね。

 特にアレルギー関連なんて下手をしたら命にかかわるような事を黙っていたらだめですよ?」


「……はい。以後気を付けます」


 そう言って、笑うセルヴァさんはなぜか安心した表情で、私も嬉しくて笑う。

 セルヴァさんが隠すほど気にしていたって事はアレルギーとか理解がない価値観の世界なのかもしれない。


 知識のなさからくる偏見ってやっぱりどこの世界にもあるんだね。




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