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27話 アレルギー

「聖女様の様子はどうだ?」


 煌びやかで豪華な調度品のそろった部屋で、大神官ロンディエンが部下の一人に問いかける。

 大神殿といわれる神殿内部にある、大神官専用の私室だ。


「はい。見目麗しい神官を付けたところ、勇者には見向きもしなくなったそうです」


「そうか」


 言ってロンディエンは微笑んでワイングラスを傾けた。

 今度の聖女は歴代聖女の中でもわかりやすく担ぎやすい。

 彼女のくだらない虚栄心を満たしてやればすぐに、こちらの手の内で踊ってくれる。


「勇者の方は?」


「多少こちらに疑念を抱いている部分はありますが、こちらにも見目麗しい女性をつけたところ、大人しくしています」


「勇者も聖女同様、その気にさせはしても決して力はつけさせるな。

 今の力で十分強いと錯覚させなければこちらの脅威になりかねない」


「心得ております」


「勇者か。まさかそんなものまで召喚されるとはな」


 500年前、魔王がいた時代なら重宝されただろうが、魔王の脅威も、魔物による脅威もない今、その存在は無用の長物だ。


 セルヴァが死んだことにより、かねてよりセルヴァを可愛がっていた先代が心労で病に倒れた。

 そのおかげでいままで自分に逆らってきた先代の大神官派の力は急激に衰えている。

 先代さえいなくなれば、聖女召喚ができるのはロンディエンと、自分の息のかかった息子たちだけになる。

 ロンディエンが神殿の実権をすべて掌握するのは時間の問題だろう。

 その時に勇者などという下らぬ存在に脅かされる事があってはならない。


 折を見て始末しなければ……。


 ロンディエンは心の中で呟くのだった。




□■□






「うーん。お風呂入りたい」


 私はちくちくと布のマントを縫い合わせてお布団を作りながらつぶやいた。

 あれから、魚肉も手に入ったことだし、ダンジョンも思ったより時間がかかりそうなので、先に日用品を優先させることにした。

 ちょっとゴリラさんがトラウマなのもある。


 ダンジョン怖い。


 セルヴァさんは肉や、布製品などの確保のため地下二階で狩り中。デルとアルが付いていってくれている。

 すぐにテイム対象を変えられるっていうのは便利だよね。

 フェンリルは徳が高いから出来る事みたい。見かけワンちゃんで忘れそうになるけど、聖獣なんだよねあの子達。

 私はベガと拠点の家でお布団や、着替えなどの準備。


 それにしても毎日身体は拭いているけれど、そろそろ湯船にゆっくりつかりたい。

 贅沢なのはわかっているけれどさ。


「あー、お風呂に入ってゆっくりしたいなぁ」


 と、ため息交じりに言うと


「お風呂ですか?」


 と、ダンジョンから帰ってきてちょうど部屋に入ってきたセルヴァさんが声をかけてきてくれた。


「あ、すみません!おかえりなさい!?」


 私が笑えば、「はい。戻りました」と、大量にマントや布の服を渡してくれる。


「布が足りないとおっしゃっていたので、先に届けに」

「あ、ありがとうございます!」

「それにしても、お風呂でしたら、用意はできますが」


「本当ですか!?」


「はい、あちらの建物にそれらしい設備はありましたから。

 設備の魔道具は作動しませんでしたが、フェンリル様の炎の魔法でお湯にできますよ」


「ゼ、ぜひ入りたいです!」


「では、仕事がひと段落したら用意しましょう」


 やったー!!

 やっぱり拭いただけじゃなんとなく落ち着かないよね。

 じゃあ布の服も裾上げとか下着も用意しておかなきゃ。


「あ、セルヴァさん」


「はい?」


「洗濯している間のセルヴァさんの着替えも用意しておくので、サイズ図らせてください」


 と、私がメジャー片手に微笑んだ。



□■□



「はぁぁぁ。お風呂最高」


 あれから、いろいろ用意した後、私はセルヴァさんたちが用意してくれたお風呂につかって一息ついた。

 セルヴァさんの言っていたお風呂に、デルがお湯にしてくれてそれに入ってる感じ。 

 ちゃんと身体を洗える場所まであったから、普通にお風呂なんだよね、ここ。


 ……それにしても。


 私は大理石っぽいお風呂から見ながら思う。

 お風呂場の身体を洗う床はちゃんとうっすく斜面になっていてちゃんと排水溝にいくようになっているところを見ると明らかにお風呂だ。

 以前セルヴァさんがいっていた、見せかけだけの廃墟という言葉を思い出す。

 この不自然さはテーマパークに似てる。

 見せるための廃墟はハリボテだけど人が活動するお店やスタッフルームなどはちゃんとしてるやつ。


 明日もうちょっとこの遺跡の探索してみようかな?

 お風呂みたいに便利な設備がどこかにあるかもしれない。

 初日は寝れるところ重視で探してたから捜し残しもあるし。


 にしても、手洗い用に持って来た石鹸が多めにあるからいいけれど、これもそのうち底をつくだろうし、何とかしなきゃ。

 こっちの人って何で身体を洗ってたんだろう?

 苛性ソーダで昔石鹸を作った事はあったけど、さすがに炭やらで石鹸を作る知識はないしなぁ。

 あとでセルヴァさんに聞いてみよう。あーシャンプーとリンスと化粧水も欲しい。

 ポーチに入ってた小さいタイプの化粧水もう少しで終わりそう。

 これが終わったらハンドクリームでも塗るしかない……。

 それも終わったら最悪はちみつと水混ぜて使うしかないかな。グリセリンがあればいいのに。

 リンスも最悪はちみつで……。

 うーん。課題が山積みすぎる。

 異世界生活はかなり不便だけど頑張らなきゃ。


□■□



「セルヴァさん!お風呂あきましたよ!

 石鹸も着替えも置いてあるのではいってください」


 建物の前で焚火を焚いて待機していてくれたセルヴァさんに言えば


「わ、私もですか!?」


 と、驚いた顔をした。


「はい。セルヴァさんも血とか扱ったし入った方がいいと思いますよ。

 明日は洋服を洗濯する予定なので私の用意した服に着替えてください」


「……それもそうですね」


 と、やや薄汚れてしまった自分のローブを見ながらセルヴァさんが言う。

 見張りは私達でできるよね、って言えばワンちゃんたちがワンワンいってくれた。


「それではお任せします」と、微笑みながら手袋を取った。


「あ、これ石鹸です!大事に使ってくださいね!」と、私が渡そうとすれば、物凄い勢いで手を引っ込める。


「……へ?」


「あ、す、すすすすみません!?」


「えーと」


「クミ様に触れるのが嫌だとかそういうわけではないのです!?

 素肌で女性に触れると鳥肌が立ってしまいまして!?

 全身真っ赤になってしまうのでっ!」


「え?そうなんですか?」


「はい。その布越しなら大丈夫なのですが……」


 言われて確かに見てみれば、セルヴァさんの服装って物凄く露出が少ない。

 今まで普通に握手とかしてたから気づかなかった。

 私も常に軍手してたし。


「じゃあ着替えは露出がありますから気を付けないとですね。

 気にしないでください」


 私が言えば、セルヴァさんがすまなそうに謝った。

 

 それにしても触るだけで蕁麻疹か……うん、ある意味安全だよね……うん。



脱字報告&ポイント&ブックマーク本当にありがとうございました!!(*´・ω・`)

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