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26話 どこかおかしい

「セルヴァさん、あの巨大ウナギ、一匹石化して連れ帰りたいです!」


 水溜めから現れた巨大ウナギを指さして私が言えば、


「あ、あれを食べるのでしょうか!?」


 セルヴァさんが驚きの声をあげた。


「え!?食べないんですか!?美味しいのに!?」


「食べるのは聞いた事がありません」


「毒があるのかな?見かけ通りウナギなら美味しいのに」


「とりあえず連れ帰りましょう……デルタ様にお願いしないと」


 若干引き気味で言われるけれど、もうお肉生活はきついのでなんとか魚類も手に入れたい。食べられるといいな。


■□■


 あれから、ウナギを石化して2匹くらいをアイテムボックスに詰め込み、残りを倒した頃には、だいぶ時間が経過してしまっていた。

 範囲攻撃で私に被害がいかないように気を使いながらの戦いだったので時間がかかってしまったみたい。柔くて本当すみません。

 どうもこのゲーム一度にレベルがあがる上限があるみたいで、守護者を倒してもまだ私はもやしっ子なんだよね。


「今日は転移の魔法陣について次の階に一度いったら帰還しましょう。日が暮れてしまいます」


 と、懐中時計を取り出してセルヴァさんが言う。

 確かにもう時刻は夕方の3時。ゴリラとウナギで時間がかかりすぎたみたい。

 ご飯を作らないと。解体からだからすごい時間かかる。

 スーパーみたいに切り分けて売ってる状態ならいいのに。

 最近一日2食の生活をしているせいかお昼を食べなくても大丈夫になってきた。



□■□



「と、言うわけで今日は魚料理でーす!!!」


 と、家に帰ってセルヴァさんに下処理してもらい捌いたウナギをもって張り切れば、なぜか全員若干引いた顔をしていた。


 くっ!?セルヴァさんはともかくワンちゃんたちまで食わず嫌いなんて。

 鑑定したとき食用大丈夫って書いてあったから、食べられるはずなのに何故みんな食べていないのかな!?

 見かけはウナギだったのに中身白身魚っぽいので今日はバーベキュー用にもっていたチューブ式なんちゃってバターを使って、白魚のバター焼きにしたいと思う。

 

 塩を振りかけてしばらく放置をして下処理をしたあと、小麦粉と塩コショウで味付けしたものをバターで焼き上げ、そこにはちみつと醤油、料理酒で作ったソースで味付け。


 もう一つは昨日のウサギの肉でだしを取ったお鍋に、イノシシ肉と白身魚を投入。

 あっさりポン酢でいただく予定。


 残りは小麦粉をふった後、マジックソルトをふってバターで焼き上げる。


 ワンちゃんたちには昨日作った熟成お肉を塩コショウで焼いてあげた。


 私が料理を作っている間、セルヴァさんは石化していたイノシシや羊などのお肉をまた器用に捌いて熟成肉の準備をしていてくれていた。

ワンちゃん達がいるから食事量が多くて一日で食事の用意にかける時間の割合が高い。

 ここら辺も課題だなぁ。調味料もそのうち切れちゃうし。早く岩塩をゲットしないと。



□■□



「これがあのシーサーペントですか?」


 ポン酢につけた白身魚ウナギを食べながら、セルヴァさんが驚きの声をあげた。

 見かけ通り味はそのまま白身魚で骨もなぜかなかったのですごく食べやすい。


「はい!普通に美味しいですよね」


「ええ、とても美味しいです」


 と、感動した様子でまじまじと見ている。


「シーサーペントの肉はぷりぷりとしていて美味しいですが、それ以上にこのタレが面白い味ですね。塩味と酸味が不思議な感じではありますが、クミ様の世界の調味料は美味しいです」と、微笑んでくれた。


「こちらの世界ってあまり食事にこだわりはないのでしょうか?」


「そうですね。焼いただけの肉とパン、そして野草と少量の塩で煮込んだスープで食事を済ませる事が多いかもしれません。

 塩も貴重品ですから」


「ずいぶん質素なんですね」


「……皆生活に余裕がありませんから。野草などをスープにいれてはいますが、野菜などはほぼダンジョンに頼り切りで、食べられるのは高位の神官や王族、貴族や裕福な商人などのみです」


「えええ、なんだか体に悪そうです」


「市民の平均寿命は35歳ですからね」


「若っ!???」


「食生活よりも狩りやダンジョンで命を落とす事が多いのですよ。

 この世界はほぼダンジョンで生計がなりたっています」


 うーん。思ったよりヘビーな世界なのかも?


「野菜とかも普通に栽培すればいいのに」


 私が言えば、セルヴァさんが少し悲しそうな顔をした。


「……そうですね。この世界は……きっとどこかおかしいのでしょう」


「おかしい……ですか?」


「権力者たちが自分たちの利権を守るために、不便な暮らしを強要しているのがいまこの世界の現状です。

 そして、聖女という存在がある故、誰もその状況に逆らえない。その状態がもう300年も続いてしまっています」


「聖女……」


 キリカの顔が浮かんで私は頭を振った。

 あの性悪女がそんな重要な存在とかなんだかむかつく。


「す、すみません。話題を変えましょう」


 と、あたふたするセルヴァさんに私は「大丈夫ですよ」とにっこり微笑んだ。

 けれど、それだけ教団が強い力をもっているとなると、人里で暮らすのは難しいんだろうなと少し憂鬱になる。

 今は生活するのでいっぱいいっぱいだから、不満をもつ段階じゃないけれど、そのうち今の生活に不満をもつようになるのかな?


 でも、ここで生きるのを諦めてしまったらキリカに負けたようで悔しいから絶対あきらめない。頑張って生き抜かなきゃ。



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