25話 脱獣肉
転移の魔法陣は便利だった。
一度行ったことのある階層に飛べるのでスタートは地下三階から。
今日は地下十階が目標なので、狩りは控えてひたすら転移の魔法陣を目指したいと思う。
毎日お肉のみの食事はきつい。できれば今日中にお肉以外をゲットしたいところ!
そして地下三階から降りた地下四階は……
「うほっ!!」
「うほっうほっ!!」
「うほほほほっ!!」
巨大なゴリラの大群だった。
ゴリラの群れが一斉にこちらに向かって走ってくるのだ。
ひやぁぁぁぁぁぁ怖い、怖い、怖い。
「デメル・エルダ・ブラッド」
セルヴァさんの一言で敵の血が吸い取られ、全滅していく。
ワンちゃん達がこれも食べるの!?と期待のまなざしでこちらを見るけれど、「無理!これ料理とか無理だから!?」と私がブンブンっと頭を横に振れば、器用に念力でゴリラからでたドロップだけをぽいぽいと、デルのアイテムボックスにいれてくれた。
わんちゃんたちもかなり勝手がわかってきたらしい。
「他の冒険者がいないため、狩り放題ではありますが、逆に言えば、集中的に攻撃を受ける事になるので転移の時など注意しないといけませんね。次からは私が先に降りましょう。
レベル的には地下十階までなら私一人でも対処できます」
と、セルヴァさん。ワンちゃんたちもうんうん頷いている。
うーん。地下3階まで余裕だったから甘くみてたかもしれない。
「でも一人は危なくないですか?この子達一人誰かついていってもらうとか?」
「テイムされたペットはそのテイムの主としか移動できません」
「ワンちゃん達、誰かひとりセルヴァさんの方にテイムされてくれるかな?」
私が言えば、わんちゃんたちがわんわんと会議を始めた。
「ク、クミ様流石にそれは。フェンリルをペットなど恐れ多い」
と、セルヴァさんが言うけれど
「セルヴァさんに何かあった場合、私一人で暮らしていけると思いますか?」
と、言われて沈黙した。
「……た、確かにクミ様一人を残して私が先に逝くのは無責任かもしれません……」
と、ぶつぶつと考えはじめる。
「わんちゃん達も、お肉がおいしーく焼けるのは半分以上セルヴァさんのおかげだよ?
血抜きに熟成、便利魔法による手早い解体があってこそのあの味だからね?」
と、言えばワンちゃんたちの顔が凄く真剣な顔になりわんわん会議を続行した。
……わかりやすい子達かもしれない……
数分後どうやらワンちゃん達の中で答えがでたらしく、
▽▽▽
ベガが契約解除を申請しています。認めますか?
▶はい いいえ
△△△
と、でるのではい、を押せば、今度はセルヴァさんの前にベガのペット申請のウィンドウが開く。
「ありがとうね」と私が言うと尻尾をパタパタ振ってくれた
「さぁ行きましょう!」
私が言えば、セルヴァさんが「貴方には敵いません」と、苦笑いを浮かべる。
「セルヴァさんに何かあったら、絶対嫌です。
ちゃんと自分の事も考えてくださいね?」
と、私。
そう、セルヴァさんは神殿で指名手配されるから街には戻れない。
私も召喚で返す方法がないから戻れない。
もうここで一緒に生活するしかない仲間だもの。
助け合わなきゃ。
「……そうですね」
そう言って、セルヴァさんが手をつないでくれた。
「私が先導します、行きましょう。離れないでくださいね」
「はいっ!!」
怖いけれど頑張らないと。脱お肉生活のために!
□■□
……と、思っていたけれど
「うほーっ!!うほほほっつー!!」
奇声とともに、巨大ゴリラが岩陰から襲い掛かってきて
がっ!!
ベガのワンちゃんパンチで一蹴され
「ムキーキッキキッキ!!」
天井に張り付いていて降って来たゴリラたちは
がごんっ!!!
デルの放った振動波のようなもので逆にまた天井にたたきつけられて血しぶきをあげている。
「きゃーきゃきゃきゃ!!」
と、逃げ回るゴリラたちはアルが嬉しそうに追いかけまわしていた。
こ、このエリア怖い。常にどこからかゴリラが襲ってくる。
わんちゃん達が全力で守ってくれているけれど、ここ一人で放りだされたら3秒で死ねる自信がある。
それくらい絶え間なく襲ってくる。中に人がいて追いかけて来るお化け屋敷も怖かったけどあれより100倍怖い。
「マントゴリラは、集団で襲い掛かってくる魔物です。
このダンジョンは誰も倒すものがいなかったせいで、数が尋常ではないですね。
ところどころ私達が倒したのとは別の死体があるところを見ると……数が増えすぎて仲間内で殺しあっているのかもしれません」
と、セルヴァさん。
確かに私たちの行く手になぜか死体が転がっている。
もう数が増えすぎて縄張り争いでもおきたのかもしれない。巨大ゴリラの死体を見て思う。
ここの階はもう絶対来たくない。
□■□
次についたのは地下五階だった。
こちらはダンジョンなのにところどころに巨大な水たまりのようなものが無数にある。
「これは厄介ですね」
と、水たまりを見ながらセルヴァさんが言えば、ワンちゃんたちもワンワン頷いた。
「厄介?」
私が言えば、セルヴァさんが頷いて。
「はい、普通のダンジョンなら地下11階以降にあるステージのはずなのですが……
あの掘られた水溜め全てからシーサーペントが襲いかかってきます」
と、ダンジョンにずらーと並べられた水溜めを見ながら言う。
「えええ!?凄い数ですよ!?」
「冒険者が常に狩っているダンジョンではないため、おそらくすべてに生息してしまっているかと。
これは手前から順に倒していかないと、四方から凍てつくブレスを吐かれてしまえば、魔法防御の低いクミ様を守るのは困難かと思われます。
時間はかかりますが、私たちはブレスのかからない場所に避難して、フェンリル様達に倒していただきましょう」
□■□
結局、私たちはテレポート近くの岩場の陰に隠れる事になった。
デルが離れないように私たちの側にいてくる。
……それにしても。
なぜかセルヴァさんのマントの中に私も一緒に入っている状態で少しドギマギする。
凍てつくブレスに耐性があるマントらしい。
ただ、所有者以外が装備しても効果が発揮されないということで、ぴったりくっついているわけで。
ちょっと近すぎてドギマギする。いや、セルヴァさんよく見てもよく見なくてもイケメンだし。
私がそんなことを考えていれば、攻撃を仕掛けたアルに反応して水溜まりからそれは現れた。
ざっぱぁぁぁぁぁぁん!!
長細いボディにつやつやの黒い光沢。
これは見た事がある。
巨大なシーサーペント……というよりもこれは巨大なウナギ。
魚類キターー!!!!祝脱獣肉!!!!
私は心の中で喜びの声をあげるのだった。











