21話 アイテムボックス
ボスモンスターのキラービーを倒した後、ワンちゃん達と羊エリアに移動した。
先ほどのボスモンスターが湧いたのに懲りたのか、デルが私たちの所に残り、ベガとアルがわんわんっとモンスターを狩ってくれている。
羊は私が知る同じくらいの大きさだったけれどダンジョンの羊はもこもこの毛がカラフルで色とりどりだった。流石異世界。
ワンちゃん達に倒してもらったシープちゃんたちの毛を綺麗にセルヴァさんがはぎ取ってくれる。
これでお布団ゲット。硬い床の上に枯草を敷いて寝なくてすみそう。
あれ地味に身体が痛くなるんだよね。
それに宝箱からでてくる金属物も武器類から防具類になった。
「見てくださいセルヴァさん!!
この鉄の兜!!お鍋の代わりにするのにいい感じの厚みと深さですよ!!
鉄の盾もいい感じですね、ちょっと厚いけどドロップしたハンマーでたたけばなんとかフライパンかわりになりそうです。
これ煮沸消毒して鍋と鉄板として使いましょう!!」
テンション高く私が言えば、毛をはぎ取っていたセルヴァさんが顔をあげ
「クミ様は考え方が合理的なのですね」
と、言った。
「?
そうですか」
「はい、先ほどの魔法など、本来なら女性には恐れられるはずなのですが……」
と、なぜか憂いを秘めた目で言うので私はうーんと考えた。
ひょっとしてあれかな
「血を抜くやつですか?」
「はい」
た、確かにあれ、図はおどろおどろしかったかもしれない。
血がばーっと空に舞い上がってブラックホールに吸い込まれたし、でもそれ以上に血抜きしなくてすむという喜びに、魔法が怖いと言う発想が浮かばなかった。
「す、すみませんもうちょっと怖がった方がよかったですか!?」
「い、いえ!?そういうわけでは」
「こー、これからの食生活を考えれば、動物食べるのに血抜きしないとなーと憂鬱だったところに綺麗さっぱり血を取る魔法見てテンションがあがったというか。
そりゃ今も殺してるから変わりないのは確かなんですけど、目の前で生きたまま血を抜いてその間、苦しむという殺し方をするのはまた別の背徳感というか。
そこにあの魔法ですよ!
それに先に殺して時間がたっちゃうと、血が固まるから、倒したらすぐ血抜きしなきゃとか考えないですむんですよ!?
やっぱり考えれば考えるほど素晴らしい魔法なので、怖がる必要はないと思います!!」
と、早口で言い訳をしてみた。
しばらくの沈黙。
なぜかセルヴァさんが顔を押さえて、下を向く。
「セ、セルヴァさん?」
何か失礼な事を言っちゃった?それとも引かれた?
心配して顔をのぞき込めば
「いえ、すみません、そう言っていただけて嬉しいです」
「え?」
「ありがとうございます、クミ様」
言って握手を求められ、私はよくわからずその手を握った。
たぶん、気持ち悪いとか言われて苦労したんだろうなとは思う。
私の知らない苦労がいっぱいあったのだろうなって。
でも私は詳しく聞かない事にした。
だって、微笑むセルヴァさんの顔は、今まで見た事のないくらい優しい笑顔だったから。
□■□
「にしても、この大量の荷物どうしよう」
生活用品とためまくった山積みのアイテムに私とセルヴァさんが考え込んだ。
モンスターの死骸は持ち帰らないにしても、ドロップしたアイテムだけで結構たまってしまったのだ。
「何度かにわけて運びましょう」
と、セルヴァさんがいくつかをドロップしたマントに包んで持ち上げようとすれば、アイテムが持ち上がり、突然デルの上に現れた魔法陣の中に消えていく。
「え!?ナニコレ!?」
「デルタ様はアイテムボックスのスキルをお持ちのようです」
「アイテムボックス!?」
「おそらく飼い主のクミ様なら取り出せると思います。アイテムボックスの中に手を入れ取り出したいものを想像してみてください」
と、言われて私は魔法陣におそるおそる手を入れ、マントを想像すれば、手にマントをつかんだ感触が。
そのまま掴んで引き抜けば、アイテムがちゃんと出て来る。
「す、すごい」
私がまじまじと見つめれば、ワンちゃんたちが「わんっ!!!」と嬉しそうにくるくる回った。
この子達わんちゃんにしか見えないけれどフェンリルなんだよね。
「デルは本当にすごいね。ありがとう」
私がデルをナデナデしてあげれば、ベガもアルもしてほしそうなので
「君達もありがとうね」
と、ナデナデしてあげた。うっとり顔でお腹を撫でられるワンちゃんたちを見て思う。
やっぱりワンちゃんだよね……と。
でもこういうアイテムボックスって漫画とか小説だと転生者が大体持ってるはずだから私も持ってないかな?
「私にもアイテムボックスのスキルあればいいのに」
と、ステータス画面を覗いていれば
「申し訳ありません、クミ様。
もしあなたがアイテムボックスの能力をお持ちなら……教団にあのように捨てられる事もなかったかと。
それくらい貴重なスキルなので」
と、申し訳なさそうにセルヴァさんが言う。
……はい。デスヨネー。











