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20話 呪われた子

「貴方のようなおぞましい子を産まなければよかった」


 幼い時、セルヴァが母によく言われた言葉だった。

 セルヴァは天使の血を引くと言われる血筋の母と、神官の中でも巨大な神聖力をもつ父との間に生まれた子だった。

 それ故だれもが聖属性をもち聖女召喚のできる光の魔法を使える子と期待されていたのだが――5歳の時に判定された属性は「闇」。

 神官職においては、呪われた子とすらされる属性だ。


 属性が判明してからは母がセルヴァに暴力を振るうようになっていた。

 そのため祖母の元に預けられ、セルヴァは母と父と距離をおくようになった。

 祖父母は可愛がってはくれたが、やはり聖職者の闇属性は神殿では歓迎されなかったのである。


 それでも天使の血を引き聖女召喚のできる強大な魔力もちが故、強大な魔力と闇以外にも四属性が使える特別な子ということで、神殿はもしかして何かに使えるかもしれぬと、セルヴァを手放す事もしなかった。神官職を辞する事も出来ず、かといって歓迎もされない。

 祖父の尽力と彼自身の人柄の良さゆえの人望があったからこそそこそこの地位についてはいたが、結局はそれまでだ。


「闇」という属性故に、そこそこの地位が限界だったのである。


 それ故セルヴァは闇属性の魔法を人前で使う事を避けていた。

 実際彼が闇の力を使えば、その力のおどろおどろしさ故、闇の力を見た者は皆、悪魔を見るような視線をむけ、距離を置いてしまう事がおおかったのである。


 遠い昔、幼い時に淡い恋心を抱いていた心優しいシスターをモンスターから助けるために、その力を使った事があった。


 その時のセルヴァを見るシスターの顔が、今でも忘れられない。


 ――悪魔――


 そう言われた気がした。



 そのため、クミの前でもなるべく闇魔法を使うのを避けてはいたが、突如湧いたレアボスモンスター達は数が多く、殴り掛かったのでは間に合わない。

 かといって他の属性の魔法を使ってしまえば、三方を囲まれたこの状況ではクミをも魔法に巻き込んでしまう。

 少し遠くにいるフェンリル達も慌ててこちらに視線をむけはしたが間に合わない。


 クミを傷つけず、一斉に湧いたモンスターを一瞬で倒すには闇属性を使うしかない。


「ブラッド・レヴィル・サゥル!!!」


 セルヴァの言霊とともに、頭上に黒いブラックホールのようなものが出来上がり


 ぶわっ!!!!!


 モンスターたちから血が噴き出しブラックホールにその血液だけが吸い取られる。


「ブオオォォォォォォ!!」


 モンスター達が断末魔をあげ……そして干からびていった。

 その光景は禍々しく、女性の前でこのような術を使いたくはなかったのだが……

 マーキングした相手は攻撃範囲から外せるためクミを巻き込まないのはこの魔法以外は選択肢がなかった。


 今後二人でずっと行動をともにしないといけない相手に嫌われるのはきつくないと言えば嘘になる。


 けれどいつかは話さなければいけない事だったのだとセルヴァがおそるおそるクミに視線を向ければ――



「す、凄いっっ!!!!!」



 なぜか彼女は感動していた。目を輝かせがしっとセルヴァの両手を握る。


「……は?」


「凄いですよ!!セルヴァさん!!

 これ血抜きが一瞬でできるじゃないですかっ!!

 正直巨体なモンスターの血抜きとか絶対無理☆と思ってたけどこの魔法なら超簡単です!

 生きたまま動脈切って徐々に血を抜くなんてかわいそうな事しないですむし、途中で死んじゃって血が固まって血抜きが出来ないなんて事もありません!

 しかも一瞬で血が抜けるからそのまま捌けば死後硬直始まるまえにご飯に出来ます!!

 やわやわお肉!!!

 動物によっては熟成させるより捌きたての方が美味しいっていうし!

 これでご飯どうしよう問題の一つがクリアで一歩前進です!!」


 と、興奮した感じで、ぶんぶんと手を振りながら言う。


「え?あ?はぁ?」


 思っていた反応と違い過ぎてどう返事を返していいのかわらからずセルヴァが硬直するが、クミはそれに気づかないようで。


「他にはどんな魔法が使えるんですか!?」


 と、瞳を輝かせ聞いてくるのだった。



□■□



「セルヴァさんこの魔法凄いですよ!!!

 その物体を凍るか凍らないかの温度に保ち、相手を持続的に寒さで苦しめる闇魔法らしいんですけど!!

 これってもろ氷温熟成じゃないですか!」


 せがまれてセルヴァが魔法の効果を見せるためステータス画面を見せれば、魔法の効果を確認しつつ、クミが嬉しそうに言う。


「氷温熟成?」


「えーっと、例えばお肉とかあるじゃないですか。お肉って死後硬直が始まると固くなるから、逆さ吊りにして湿度と低温の部屋で熟成……って、こっちでもしますか?」


「はい。それはよく見ます。詳しい事はわかりかねますが」


「その氷温熟成もそのひとつで、凍るか凍らないかの温度って、お肉が凍ってたまるかって、抵抗するらしいんですけど、その抵抗する過程で旨味成分が増すんです」


「それは知りませんでした」


「これの凄いところは勝手に温度調節してくれるところです!

 同じ肉でもその個体の生前の運動量とかで凍る温度は違うはずなのに、魔法が勝手にその温度を調整してくれる!!

 もし死んだ状態のお肉とかにも有効なら超便利機能ですよ!?

 腐る心配なく勝手に熟成してくれるって超理想的じゃないですか!

 氷温熟成は野菜とかもうまみが増すっていいますし!

 正直、熟成なんて腐敗と紙一重だし何の設備もない状態じゃ食中毒怖くて出来ないから死後硬直始まる前に食べなきゃかなって思ってたからこれが出来るなら神魔法です!」


「それにこの石化の魔法!

 氷温熟成が無理なら石化してモンスターをとっておくのもありですよね!

 石化したモンスターをとっておいて料理をする前に殺して、死後硬直はじまるまえに捌いて料理しちゃえばいいだけですし。

 巨体なモンスターなら死後硬直もはじまるのは遅いだろうし、熟成させるより美味しいかもしれません。これも血抜きに時間がかからず一瞬でできるがゆえの特権ですね!」


 と、瞳をキラキラさせて力説するクミに、セルヴァはただぽかんとしてしまう。


「って、す、すみません熱く語りすぎましたか!?

 ほ、ほらこれから生きていくうえでやっぱり一番重要なのって食ですし」


 その様子に気付いてクミが慌てて取り繕うのがおかしくてセルヴァは自然と笑みを浮かべた。


「いえ、すみません、なんだか悩んでいたのが馬鹿らしくなって」


「え?」


「いえ、何でもありません、お役にたてるなら嬉しいです」


 そう言ってセルヴァは微笑んだ。



□■□


~今日のわんこ~


『危なかった! ボスモンスター湧くの忘れてた!』


『うぬ。我らも300年闇に覆われている間に知能が低下しているかもしれぬ。

 そんな単純な事も忘れるとは』


『そうだっけ?そうだっけ?』


『………』

『………』


『兄者達どうした?どうした?』


『アルは300年前と何もかわってないな』


『ああ、変わってない』


『やった褒められた!!!!褒められた!!!』


『兄者、あれは将来大丈夫だろうか』


『なるようになるだろう……』


誤字脱字報告&ポイント&ブックマーク本当にありがとうございました!!(>人<*)

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