13話 食べられない
それにしても、これからどうしよう。
保冷用にと凍らせたペットボトルの水も2本あったうちすでに1本消化してしまった。
水とか飲み物は別の子にもって貰ってたから手持ちが少ない。
残りは1本。明日は水を確保しなきゃ。
最悪水場があれば、ろ過して飲まないと。
ペットボトルに炭もあるからなんとかできなくもないよね。
セルヴァさんとわんこたちが私用に落ち葉を祠に敷き詰めてくれた。
祠でゴロンと横になりなんとか寝れなくはないのだけれど……
「セルヴァさんは寝ないのでしょうか?」
祠に寄りかかりながら外をみているセルヴァさんに聞いてみれば、
「はい。この森は本来凶悪な魔物がいるところです。
フェンリル様達がいるとはいえ、見張りをつけないわけにもいきませんから。
私の事は気にしないでください。
これからの事はまた明日話し合いましょう、しっかり休むのも生き残るには大事な事です。」
「セルヴァさん」
「はい?」
「今日はありがとうございました」
「……いえ、元々は私が教団の横暴な行為を止められなかったのが原因ですから」
「でもここまで助けてくれたのはセルヴァさんですよ。
上司に逆らってまで赤の他人を庇うなんて普通なら無理なのに。
あそこまでしてくれて、すごく嬉しかったです。
本当にありがとうございました。たぶん一人だったら心細くて、今頃泣いてました」
そう言って、微笑めば、セルヴァさんが顔を赤くした。
照れ屋なのかな。少し可愛いかもしれない。
でも本当にセルヴァさんは凄いと思う。
元とはいえかつて恋人同士だった相手をあっさりと見捨てた人と、赤の他人なのに命がけで守ってくれた人。
セルヴァさんが天使すぎて、カズヤとキリカが悪魔にしか思えない。
本当にいい人が一緒にいてくれてよかったと心から思う。
「おやすみなさい」
と、微笑めば、「おやすみなさい」と微笑み返してくれた。
明日も生きるために頑張らなきゃ。
□■□
「セルヴァさんこれ何ですかね?」
次の日朝起きたら、祠の前にどでででんとモンスターの死骸が山積みになっていた。
その隣ではわんこ達が褒めてといわんばかりに尻尾を振っている。
「お、おそらく、私たちが食事を確保しなければというのを聞いて、狩ってくださったのかと」
セルヴァさんも困ったようにモンスターを見ていた。
「た、食べれるんですかこれ……」
「残念ながらこの森の動物は長い間闇に晒されていましたから。
我々が食べれば害となるでしょう」
「えーっと、それはつまり」
「現時点では食用とするのは無理です。申し訳ありません」
その言葉にわんこたちはキャンキャンと話し合ったあと、おそらく餌をとってきたであろうワンちゃんが物凄くがっかりしてる。
う、きっと物凄く頑張ってくれたんだろうけれど……。
ごめんよ、わんこ。
「そうすると私達これから食料ってどうやって確保すればいいんでしょうか?」
「ダンジョンを探しましょう。ダンジョン産の肉なら我々が食べても問題ありません」
「……森がダメでダンジョンはいいんですか?」
「はい、ダンジョン産のモンスターの肉なら安全です。
また、モンスターを倒すと、そのモンスターの素材と魔石、それで武器や防具、マジックアイテムが手に入ります。
運が良ければ生活に役立つ刃物なども手に入ります。現状動物を捌くための刃物すらありませんから」
と、セルヴァさんがモーニングスターを見ながら言う。
確かにそれでは動物を捌くのは無理だよね。
でもダンジョンか……すごくゲームの世界です。
というよりWeb小説のゲームの世界なのかなぁ。
ゲームにしてはちょっといびつ。
ここで元ネタがわかれば無双できるはずなのに、残念ながらこの世界の元ネタはわからない。
とにかくごめんね、とワンちゃんの頭を撫でればワンちゃんはキャンキャンと嬉しそうな声を上げた。
もしかして指定のスキルを使えば、勝手に解体して毒素も抜いてくれないかな。
私が試しにスキルをつかってみるとモンスターの種類と死体としか表示されない。
くっ、この指定スキル法則が未知数すぎる。
便利だったり全く使えなかったり法則がわからない。
あとでちゃんと検証しなきゃ。