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12話 ウィンナー

 あれから、祠のすぐ近くに枯草と乾いた木の枝を集め、セルヴァさんに火をおこしてもらい、私はじりじりとお肉を焼き始める。

 ちゃんと取っ手のあるステンレス製串で助かった。

 手もバーベキューをする気満々だったのでちゃんと軍手がしてある。

 焚火で焼くのは初めてだな。

 すぐ火が通るように、肉も薄めにしたし、野菜も下茹でしてあるから、ちゃんと見ながらやらないとすぐ焦げちゃう。

 鉄板がない状態で焼くのは難しい、焦げないように気をつけなきゃ。

 

 じりじりと慎重に火であぶっていれば、こんがりと肉と野菜の焼けたいい匂いがただよってくる。

 ああ、美味しそう。

 そういえばお昼も食べていなかった事に気づいて急にお腹がすいてきた。


「はい、焼けましたよ」


 私が焼けたうちの一本をセルヴァさんに渡せば


「私もいただいてもよろしいのでしょうか?」


 と、驚いた顔をした。


「もちろんですよ。食べないと、身体がもちませんよ」


 私が串を渡せば「美味しそうですね。いただきます」と、セルヴァさんが奇妙な祈るポーズをして、一口食べ、


「これは美味しいです」と、すごく驚いた顔をした。


「お世辞が上手ですね」


 と、あまりにも美味しそうに言うからちょっと照れてしまう。


「いえ、本当です、このような風味の肉や野菜は食べた事がありません。

 こう――」


 何か言おうとして目を宙に泳がせたあと


「甘味があって、とろける感じというのでしょうか?

 こんな柔らかい肉も、甘みのある野菜も食べた事がありません。とにかく美味しいです」


 と、微笑んだ。喜んでもらえるのは純粋に嬉しい。

 私も自分用のお肉を食べようとすれば……


 はっはっはっはっ


 物凄い羨望のまなざしを感じて私は振り返れば、ワンちゃんたちがよだれを垂らしながら私たちの事を見ていた。

 そりゃもう純粋な目で、へっへっへと舌をだしながら見ているのだ。


 セルヴァさんも「その……私の分をお分けしてもよろしいでしょうか?」と、食べにくいのか汗を流しながら聞いてくる。


 ううう、ワンちゃんたちはここで狩りして生肉食べられるのだろうし、人間の食べれるものはなるべくとっておきたいんだけどなぁ。

 たとえワンちゃん達がここの魔物を狩ってくれたとしても、私はサバイバル知識はさっぱりなので、捌き方も肉の血抜きも熟成のやり方もよくわからない。


 なんとなくつるしておくか、ぬるま湯につけるか酒につけるか、キッチンペーパーで血を拭くぐらいの知識しかないのだ。

 故に食べられる貴重な食料はこれだけだし。

 でもこんなキラキラした目で見つめられて、無視できるほど私は心が強くない。


「えーっと、君たちにはウィンナーあるから待っててね」


 と、私が言えば、よほどうれしかったのか、一番小さいアルがくるくると嬉しそうに私の周りをまわって喜んだ。

 私は骨付きソーセージを三本焼いて一匹ずつあげた。

 バーベキュー用に奮発してわりと大きめなのでこれで我慢してもらおうと思う。


「くぅん!!」「きゃん!!」「わんわんっ!!!」


 三匹とも嬉しそうにがつがつ食べてる。うっわ可愛い。

 犬を飼ったら、恋人出来ないって聞いて我慢してたけど、これなら日本でもわんこを飼ってみればよかった。

 大体恋人ができたと思ったら、浮気して捨てられたし。

 一瞬婚約者の顔が浮かんで頭を振った。もうあいつの事名前でも呼びたくないや。

 そして食べ終わって嬉しそうにまた羨望のまなざしを向けて来るわんこたちに私は微笑んだ。


「ごめん貴重な食料だからこれ以上は無理」……と。



□■□



~今日のわんこ~


『美味しかった!美味しかった!兄者あれ何!?

 じゅわーってしてじゅーっとしてしょっぱい味とコリコリとやわやわ!

 あとぎゅっと甘みがくる!!凄く美味しい!!』


『なんでもウィンナーと言うらしい』


『あれは美味だな兄者、いつも食う肉とは肉の旨味が違う。

 香ばしい匂いに少し焦げたような味、それでいてピリッとしていて不思議な味だ。

 人間と言うのはあれほどうまいものを食べているのだろうか』


 まだ口に残ってる味の余韻を味わうかのようにベガが舌をぺろりとする。


『いいか、弟たちよ、主様は数少ない貴重な食料を我らのために分けてくださったのだ。

 その恩義に報いねばならぬ』


『大丈夫!主様の食べ物アルがとってくる!』


『うむ!主様が寝ている間に我らが食料を集めてこようぞ!』


『では我が人間とともに見張ろう』


 と、三匹が力強く頷いた。

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