髪の毛を切ってみました
普段ハイファンタジーを書いていますがふと思いつき書いてみました。一応恋愛要素も入ります。
草木も眠る深夜、とある貴族の屋敷の一室に蝋燭の小さな光が部屋の一部、鏡の前を照らしていた。
鏡の前にいるのはこの部屋の主『レイラ・アルモンド』、彼女はある決意をしてこれから実行しようとしていた。
何故深夜にしたのか、それはこれから起こす行動を邪魔されない為だ。
これからやる行動はこの家の者だったら、即座に止めるだろう。
だからこそ、この時間を選んだのだ。
レイラは小さなナイフを手にした。
(いざやるとなると勇気がいるわね)
多分、これからやる事はレイラにとっても重大な意味を持つ。
(でも、もう決めた事。これからどうなろうと私は受け入れるわ)
レイラは決意を固めて行動を起こした。
翌朝、レイラの異変に一番最初に気づいたのは起こしに来たメイドだった。
「お、お嬢様っ!? どうされたのですかっ!?」
「どうした、て……、見ての通りよ」
「見ての通りて……」
言葉を失うメイド。
(やっぱりびっくりするよね)
レイラは一応、平静を保ってはいるが内心は苦笑していた。
それもそのはずで、腰まであったレイラの金色で美しかった髪が、肩までの長さになっていたのだ。
「ま、まさか賊に入られて……っ!!」
「違うわよ、自分でやったの。ちょっとした気分転換よ」
「ちょ、ちょっとした所じゃないですよっ!?」
(う~ん、やっぱり切りすぎたかしら? でも、やるんだったらバッサリやった方が良いし)
メイドの反応を見てレイラはちょっとだけ後悔したが仕方が無かった。
着替えて食堂にやって来たレイラを見て両親、兄達は固まっていた。
「おはようございます、お父様、お母様、お兄様」
『……』
絶句である。
いつもの席に座り、既に用意されている朝食を食べた。
「レ、レイラ、そ、その髪はどうしたんだ?」
フリーズ状態から立ち直り聞いて来たのは父親だった。
「昨夜、自分で切りました」
「カ、カツラだよね? 地毛じゃないよね?」
次に聞いて来たのは兄だったがレイラは淡々と答える。
「いいえ、100%地毛です」
「な、何があったの? 何か嫌な事があったの?」
次に聞いて来たのは母親だ。
(そろそろ本当の事をいうべきよね?)
「いえ、別に特別な事があった訳じゃありませんわ。ちょっとした気分転換ですわ。世の中には長い方より短い方が好みという殿方もいますから、好きな人に合わせるのは当然でしょ?」
そう言った瞬間、父と兄が立ち上がった。
「ちょっと、国王に話があるので行ってくる」
「俺も朝練がったんだ。……あの野郎、大事な妹を傷物にしやがって……」
二人とも目が据わっていた。
(別に傷物ではないんだけどなぁ)
食堂から出て行く二人を目で見送りながらレイラは苦笑いしていた。
でも、思っていたより家族が自分の事を愛してくれているんだなぁ、と思い嬉しかった。