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ヘリアンサスの希望 数学甲子園編

作者: ソリング J

 しふぉんは今日の午後に控える数学甲子園の予選に向けて、ホテルで友達と一緒に一生懸命勉強していた。ヘリアンサスガールズを脱退はしていなかったが、大学受験に向けて、高3の間は活動を停止していた。


 しふぉんはザがつくレベルの理系だ。これはもう小学生、いや幼稚園の頃から決まっていたことだった。別に文系科目が嫌いだったとかそういうわけではない。確かに現代文は嫌いだったが、歴史や古文は、苦手ではあったものの決して「嫌い」ではなかった。そうは言っても、彼女が文系に行くことなど、天地が3回転してもありえないことだった(なお、実は彼女は文系科目よりも生物が苦手・嫌いだった)。

 数学甲子園とは、日本数学検定協会が高校生向けに実施する企画である。いわば、「数学オリンピックの国内版」だ。もちろん予選なので、誰でも参加することはできる。ただ、数学が好き・得意なしふぉんは、同じ学校の誰よりもこれを楽しみにしていた。


 甲子園はチーム単位での競争となる。1チームは3~5人。全国で予選を行って、チームごとに得点率(例えば、3人チームで合計30点取れていればそのチームは10点扱い)を計算する。その中で成績優秀な36チームが本戦に出場できる。総参加チーム数は今年は660なので、倍率は20倍近く。まず無理だろう、と誰もが思っているが、しふぉん達は一夏の思い出作りとして参加することにした。

 予選では1人20問を1時間で解く。メンバー間で相談することはできないので、実質個人戦のようなものである。ただ、自分のミスがチーム全員に響くという意味で言えば、個人の責任はある程度重い。

 予選は京都市で行われる。学校の最寄りA駅からは乗り換え1回でいけるものの、3時間ほどかかってしまう。移動にそんな時間を使っていたら疲れてしまう上、いい成績を出せなくなる。そもそも集合時間に間に合わないかもしれない。そう判断した先生は、保護者の許可を得た上で前日から泊まりがけで行く、というスケジュールを計画していた。


 しふぉんのチームは、彼女含めて5人の女子で構成される。みんな数学が得意だ。彼女は、もし足を引っ張ることになったら申し訳ない、と思っている。なお、彼女の学校からは、他に出場するチームはなかった。

 チームのメンバーは今、みんな過去問を解いている。しふぉんも、公式を確認しながら昨日解いた過去問を復習していた。

 気づけばもう12時だった。集合は13時。彼女達は、昼を済ませ会場のビルへと向かう。7月の中旬であり暑いが、耐えられないほどではなかった。

 ホテルから歩いて5分ほどで到着。もう会場にはそれなりの数の学生達が集まっていた。おそらく名門校の方ばかりなんだろう、と思ったしふぉんは不安に陥っていた。

 ビルの中は涼しい。自動販売機があったので、しふぉんはお茶を買って飲み、不安を落ち着けた。

 先生は受付を済ませていた。先生の母校は京都にある。数学に強い人が多いらしい。先生の後輩にあたる人たちも来ているとのことだった。

少しずつチームが予選の行われる部屋へと進んでいく。彼女たちも順番の中で進んで行った。

部屋は広く、ステージのようなところだった。椅子と机が何十個もある部屋。5人は、縦に並んで座った。

右上には、チーム名とリーダーの名前が書かれているシールがあっている。チーム名は「ヘリアンサスの希望」。しふぉんは5人の中で最も数学ができると思われているためだ。

机の上には、数学甲子園のクリアファイルが置いてある。その中にはパンフレットとアンケートが入っていた。しふぉん達はアンケートを適当に記入し、問題が配られるのを待った。

アンケートを埋めてすぐ、数学甲子園の主催者と思われる人物が入ってきた。彼は大会のルールを説明し、問題を配布した。

問題は表紙の裏が透けて見える。しふぉんは問題を透かし、最初の3問を読み、始まりを待機した。

「13時40分になりました!制限時間は私の時計で1時間です!初め!」

合図に合わせ、会場はみなページをめくる。しふぉんも彼らに漏れず、問題を解き始めた。

過去問は割と簡単だったため、1から順に解いていこうと思っていた。しかし、今年は例年に比べ参加チームが多いのか難易度が高い。始まって10分ほどでしふぉんは異変を感じていた。

解ける問題から解くというのは試験問題では基本のことだ。しかし、しふぉんは焦りの中、そんな思考などどこか遠くへ飛んで行ってしまっていた。

残り25分。しふぉんは今20問中の8問目を解いている。このまま進んでも間に合わない、とやっと気付き、彼女は後ろの方にある問題に目を通した。

最終問題は微分の基本的な問題だった。これなら解ける!と思ったしふぉんは解ける問題を計算ミスしないように解いていき、余った時間で難しい問題を考えることにしていた。

「終了です!」

焦ると時間が経つのが早くなるのか、彼女にとってはあっという間に制限時間の1時間が経った。

終わってすぐ、しふぉんはチームの人たちと話す。みんな殲滅的な結果だったらしく、一部当て感になってはいたものも一応全部埋めたしふぉんの計算力はすごい、と話題になっていた。

試験終了後、みんなで問題を確認してビルを離れ、新幹線に乗りA駅まで帰り解散した。


なお、残念ながらしふぉんたちは予選通過はできなかった。彼女は、来年度参戦する後輩に向け、Twitterで、私たちの代を超えて欲しい、とエールを送った。


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