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九話

「ぐぬぬぬ……」


 爪を噛みながら、物事が上手く行かないことにいら立つ様子の六重。


 昼に行われたお見合いでは、見事に面子をつぶされ、孫の不出来さに沸点を迎えかけていた。

 

 夜になり、室内はいくつものカンテラがかけられ、一切暗い場所がない。カンテラは光だけ発し、太陽と同じほどの光があり、生活には一切困らない。


 先日行われた、八重のお見合いでは、何一つ進展がなく、将来の家系の地位が心配である。


 一人だけ、大部屋で正面に座り、周りには二列に侍女がキレイに正座している。


「六重様、八重様に会わせることはできないのですか?」


 侍女が何人も集まる中、一人だけ色は発言をした。周りにいるのは六重の仕事や屋敷の警備を行っているものが多数をしめる。そんな中にいる色は異質であるが、それが逆に発言しやすいようだった。


「たわけ、そんなこと許されるわけがないだろう。分かっておるのか色!」


「分かっています。八重様を幸せにするのなら、その殿方と会わせるのが一番です」


「それを許せば、おぬしの居場所が消えることは承知なのだろうな」


「はい」


 真剣に向き合えば向き合うほど、家系を考える六重と八重の幸せを考える色では常に平行線になってしまう。


「……」


「……」


 答えは決して相いれない。だから、結論は出ないと思っていた。


「よい、ならば会わせてやる。今すぐ八重に伝えに行け」

 

 心が変わったと思えなかった色だが、進展があったことを伝えるように命令されたため、色は立ち上がり、一人で大部屋を出ると、八重の話が始まった。


「よろしいのでしょうか、六重様」


「構わん、会わせるだけだ。それが昔あった少年の……」






 

 色の廊下を歩くスピードはゆっくりと速くなり、八重の部屋に着くころには走っていた。本来は厳禁だが、喜びのあまり、うっかりとしていた。


「八重様、八重様!」


「何ぃ、色?」


 室内で雑魚寝をしていると色は急いで私の部屋にやってきた。いつも穏やかな八重がこんなに急いでいるという事は何かあったのだろう。


 私は、昼食には苦いサンマを食べさせられ、内臓を口に運んだ時は(かわや)に直行した。そのおかげで、上手く今回のお見合いを回避することができた。


「六重さまが、六重様が、八重様の思い人に会わせてくれるとおっしゃっていました」


「ほんとぉ!?やったぁ。これでやっと彼に会える。これで、やっと話すことが出きる」


「はい、やっと六重さまに思いが伝わったと思います」


「うん。それでいつなの?」


「あっ」


「色ったら、聞き忘れたのね。まあいいわ色、いつでも会った時に恥ずかしくない姿にしてくれる」


「はい、分かりました。八重様!」


 私は起き上がり、何枚か服を羽織ると、椅子に座り、色にゆっくりと髪を解いてもらった。それからゆっくりと髪を伸ばし、丁寧に結んでもらった。


 とても楽しそうに話す二人だったが、それが六重によって仕組まれたものとは色は一時的に考えたが、喜びが理性を消し飛ばし、そんなことを考えることは八重の部屋に着くころにはなくなっていた。










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