A 日曜日の朝のうち
A 日曜日の朝のうち
七月十三日、晴ときどき曇。変な兎と出会った。
*
――惰眠を貪ろうと思ったのに、クローゼットから出てきたコイツのせいで、予定が大幅に狂ってしまった。
寝癖髪でティーシャツとハーフパンツを着た少女は、ベッドの上で寝惚け眼のまま、学習机の側にある回転椅子の上に後ろ足だけで立つ喋る兎の話を、聞くともなしに聞いている。
「点が集まると線になって、線が集まると面になる。で、面が集まると立体ができるでしょう。ここまでは、オーケイ?」
小首を傾げる兎に対し、少女は面倒臭そうに首を縦に振って答える。
――時空警察官だか何だか知らないけど、さっさと本題に入って欲しい。そして、とっとと帰って欲しい。
「それじゃあ、続けるね。その立体が集まると時間ができるんだけど、世の中には、人為的に立体をすり替えてしまう悪い奴がいるんだ」
「すり替えられると、どうなるの?」
少女が疑問を挟むと、兎は良い質問だとばかりに前足をビシッと少女に突きつけながら言う。
「本来は起こるべきでない未来が起きるのさ。それも、起こって欲しくない未来がね」
「ふ~ん」
少女が他人事のように薄い反応を示すと、兎は耳をヘニャへニャと力無く垂れながら言う。
「もっと危機感を持って欲しいな」
「だって。それが私に、何の関係があるのよ? 私は、その立体とやらをすり替えた覚えが無いわよ?」
少女が当然の疑問をぶつけると、兎は耳をピンと立てて言う。
「原因を遡って調査した結果、君が夏休み前にサッカー部のキャプテンに告白しなかったら、バタフライ効果で大変なことが起きることが判明したんだ」
――えっ、ちょっと待って。何で、私が池田くんに片想いしてることを知ってるのよ、この兎は。話が急展開過ぎる。