魔術師の城の王女(9)
「ン……(攻守が同時にできる獣を召喚か)
少年は左手を振りかざし、上空へ向かって強風を起こしながら、右手のドラゴンから火の塊を連続で放った。イーグルは強風を避けるように飛んでくるが、強風の影響で不規則に動く無数の火の塊を避けられずに直撃してしまった。レムの周りを回っていたイーグルも煙とともに消えてしまった。
少年は両手を重ね合わせると、より大きなドラゴンの頭の形へと変化させた。
「まさか!お嬢様、嫌な予感がしますぞ」
ギムトスの方へ向かって、そのドラゴンの頭はゆっくりと口を開いた。巨大な炎の塊が先程よりも深い轟音とともに放出された。ギムトスは全体重を大盾にかけて衝撃に備えると、その後ろで右指をパチンと鳴らす音がした。
「……(どうか、これで耐えて)」
ギムトスの大盾の前に大きな角の鹿が一瞬だけ現れ、すぐに透明になって消えていった。次の瞬間、大盾に巨大な炎の塊が激突する直前に何か薄い膜のようなものが干渉して炎の塊は粉々に弾けた。
「うぬ、何が起こったのじゃ。何の衝撃も無かったのじゃが」
「……(保護魔法みたいなものだけど効果はあったみたいね)」