魔術師の城の王女(5)
ウォーベアが大盾に勢いよく体当たりをし、鈍い音がするが、ギムトスはビクともしない。続けて前足の鋭い爪で叩きつけるように切り裂こうとした時、大盾から突然無数の針が突き出し、逆に弾き返されて大きな体はバランスを崩した。
ギムトスの後ろからパチンっと指を鳴らす音が響いた。次の瞬間、どこからか空を飛んできた一羽のイーグルが目に見えないほどの速度でウォーベアの体を横切った。すると、重い巨体はゆっくりと真っ二つになり、その場に崩れ落ちた。
「……(もう動かないようね)」
「お嬢様!だからモンスターに襲われる危険性があると忠告したではありませんか!」
「でも、召喚獣のおかげで倒せたのよ」
「いいえ、お嬢様を大盾で護らないと、無防備な詠唱中にやられておりましたぞ」
「その時はその時で違う召喚獣を呼んでいたわよ」
確かに詠唱中は完全に無防備となってしまうため、盾となって護ってくれるギムトスは必要な存在でもあった。
「さあ、お嬢様。そろそろ城へ戻られますようお願い致します」
「仕方が無いわね。分かったわ」
レムは目を凝らして暫く森の奥をじっと凝視していたが、特に異変が無いことを確認するとギムトスと馬車の所へと歩いていった。
「……(あれは確かに操られている目だった)」
遠く離れた山の中腹からその様子を覗く少年の姿があったが、二人は全く気が付く事はなかった。