魔術師の城の王女(3)
「さあ、城に戻りますぞ!ご存知の通り、明日はお嬢様の十六歳の誕生祭であります。午後からは最終的な段取りの説明などの予定が埋まっていますぞ」
「別に私の誕生日でそんなに大袈裟に祝ってもらわなくていいわ」
「何を仰います。レムお嬢様は、かつて全大陸を支配した“永劫の天変地異”と呼ばれた双頭の黒龍を討伐した魔導王女イデア様の血を引く末裔なのですぞ。それを城下町の民への認識を深める義務でもあります。それに民への秩序と調和の象徴として……」
「もう分かったわ」
レムは話が長くなるのを悟って、ギムトスの言葉を切るように言った。
「ねえ、ギムトス。私は旅に出たいの」
「またその話でございますか」
「三年前に母様が亡くなられて以来、父様は城を出ていったまま行方不明。今どこで何をしているのかも分からないわ」
「イーブル様を探したいと仰りたい事は分かります。でも、それではどなたが城を治めれば良いのか。お嬢様には城を治めて頂けねばなりませぬ」
「城は弟に任せて、私は父様を探しに行きたいの」
「レオ様はまだ九歳ではありませんか」
「大丈夫よ。少し臆病だけど、できる子よ。母様のように魔法も使えるし」
「不思議なものでございます。生まれつきお嬢様はイーブル様の召喚術を受け継ぎなされて、レオ様はリプフ様の魔術を受け継ぎなされるとは」
「資質よ。誰にでも向き不向きはあるわ」