魔術師の城の王女(1)
いつもは現実世界フィクションを書いていますが、「小説家になろう」の皆様に影響を受けて、ファンタジーものにチャレンジして書いてみました。
最近の流行りとは逆行して、一昔前のバトル系の小説にしていこうと考えています。
オムニバス形式で進みますので断片を埋めていく感じに進む予定です。宜しくお願い致します。
レルムザリアと呼ばれる地方には古くから標高の低い山脈と樹海のような森林が広がっていた。その一帯は温暖な気候で様々な動物が生息し、未知の植物が混生する未開に近い地域でもあった。広大な森林地帯の北部には湾曲した大きな湖があり、湖底が見えるほど澄んでいる。風が吹くと水面が波立ち、岸際には潮騒のような音が時折鳴り響いていた。その湖畔にひっそりとそびえる古城があった。
“魔術師の城”と呼ばれるその古城の周りには岩石を積み上げて出来た堅牢な造りの城壁によって護られるように囲われている。古城の隣にある小さな城下町は、森林地帯を抜けて山脈へ進む冒険者の宿場町として栄えていた。
古城から少し離れた森林木材の伐採場に小柄な少女がいた。髪の毛が長く、風になびくと太陽の光が反射してキラキラと輝いている。その少女は薄い水色の生地に白フクロウのような模様がはいった上質な素材でできたローブを着ていた。
切り株に腰を掛けながら、黒い宝石が先端に埋め込まれた杖を少女は自分の太股の上で転がしている。少女の周りには黒い翼をした体長二メートルほどある巨大なイーグル、耳の垂れた小さな白いウサギ、大きな角を持った鹿、両前足で木の実を持った茶色いリスといった動物が円を描くように並んでいた。
ほのぼのとした雰囲気の中、少女は笑みを浮かべて小さな声で話をしていた。