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大力大兵太兵衛どん  作者: 不覚庵
3/13

大銀杏とちょんまげと

「来ないだ、勧進相撲がそこの、な。お寺さんであった訳よ」


江戸の世の相撲取りは別段、巷で言われているように

「一年を十日で過ごすいい男」

とばかりも言えない。


本所の回向院で正月に毎年行われる「本場所」ばかりでは力士も行司も食っては行かれぬ。


そこで寺社奉行の許しを得て或いは寺の瓦葺きの為に「勧進(資金集め)」の為と称して相撲を取ったり、或いは扶持を貰ってる藩などなどを旅を打っては「御前相撲」を取ったり、又旅先の村々で「興行」を行なったりと年中西へ東へと現実は実に忙しない。


さて、そこで行われた勧進相撲で、


とある藩のまぁさむらいさんが、腰のモノを抜いチマったと。


まぁそこまでなら割とよくある二本差しの面子商売、何時ものように行司預かりの分けって話でナァナッでって、なるんだが。


どうやら件のおさむらい、"血振り"をしちゃったらしい。

それもお抱えの向正面の"大銀杏"相手に。


さすがにそこまでやられちまったら向正面の連中は引くに引けなくなっちまった。


だがよう、ヲッさんも知ってんだろう?

今時の二本差しナンざいざ腰のモノを抜いたからって"てんでなっちゃいねぇ"のを。


結局おさむらい。"なっちゃねぇ"のを斬り逃げて、藩の屋敷に匿われちゃいるんだと。


ま、そこまでならオレら町方の木っ端にゃ全く関係ないところ、おさむれぇ同士で好きに切った張ったするなり土手っ腹切らせたり好きにしちゃっておくんなせい、ということになる"筈"だったんだけどな?


ヤッベェ事に斬られた"向正面"、付家老がブチキレた。


"ならば"正面"の"大銀杏"、斬り飛ばして面目を施せ"と。


相撲会所も頭取分もソレを聞いて泣くに泣けないおえらいさんの一分の前にアタマかかえて泣きつかれた。


勧進相撲だぜ?一門内の花相撲、西も東も顔見知り。

偶々、一代限りの扶持米の"貰った先"が違うだけ。


"向正面"の二本差しも困ったろうさ、付家老の鶴の一声、上意討ち。

スジが通ってるようでまるで通らぬ無理スジの言ってるこたあ"弱いものいじめ"

本来なら斬られた"向正面"の墓代見舞金に女房子供が立ちゆくように差配して、"正面"の藩に此れ此れこういう仕儀の事、如何に差配いて貰おうか、が正解だろ。


でもぶった斬れだもん。それも大銀杏。


おかげ様でぶった斬っちゃった"正面"も、此れこの度は、と出る訳には行かなくなった。


流石に側用人同士で裏を合わせて、本国のお殿様に飛脚飛ばしてどうすんべ、ってやっちゃあいるものの。


ソレでな、先生。


しばらくの間、お偉いさんの面子商売が片付く迄、"正面"の護衛についちゃあおくれでないかい。


先生のアレ、あの"大段平"。

虚仮威しじやねぇけど、虚仮威しで済ませるのにゃあ持って来いだろ?


しばらくアレかついて"正面"の横で睨みきかしゃあ早々"向正面"も腰のモノぶっこぬこうって気にゃならんだろうさ。


別に先生は"大段平"、ぶっこぬかなくても切紙の枚数ぐらいにゃ、手もあるだろうし。


だからよぅ、頼むよ先生。

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