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ジャスタン将軍の異世界戦闘記録集  作者: きょうちゃん
外伝 結婚するって本当ですか?編
49/51

会食

「お初にお目にかかります、ジャスタン公。ノスタルジア家の長女アンリにございます。このたびは、当家においでいただきましてありがとうございます。短い時間ではございますが、ごくつろぎいただければ幸いに存じます」


今回の会食の相手であるノスタルジア公のご息女が長机の端に座っている。

アンリは、年のころは、俺よりもやや若い感じだ。

すべすべした白い肌、さらさらとした長い薄い金髪の先がカールして、その細い首筋にかかっている。

ちょっとなまめかしい。

今は、白色のドレスを着て、実にお姫さまっぽい。どこかの自称姫にも、そのつめの垢を煎じて飲ませたいところだ。


ちなみに、俺の席は、長机の反対側の端だ。ちょっと声を大きめにしないと、相手に届かない。

実に非機能的だが、貴族の会食としては、もっとも格式が高い食事風景だ。

長机の脇には、今回、ノスタルジア公が招いたほかの客たちも列席している。

さすがに、インデス王国の王子様は、席をはずしているらしいが、割と客の数は多い。

席の真ん中あたりにはノスタルジア公や、伯母上が着席している。

みているとノスタルジア公が隣の伯母上に、ワインを注いでやっている。

伯母上と目があう。その目が怪しく光っている。こっちみんな。


「アンリ様。過分なお言葉痛み入ります。このたびは、アンリ様の食事会へとお招きいただきありがとうございます。初めてお会いいたしましたので、色々とお話を伺えたらこの上なき幸せに存じます」


俺もアンリへと定型文で返す。

まずは、様子見だ。


「そういえばジャスタン様は先年のイエプト王国での戦いで、英雄としての名をはせたとか。私目に、そのあたりのお話をしていただければと思いますが」


アンリが俺へと目をきらきらさせながら、お願いしてくる。

うっ。そんな目で俺を見ないでくれ。


「わ、わかりました。で、では、狡猾なラミルス帝国の女将軍をいかにして倒したのか、をお話しましょうか」


とりあえず、ランフィの話を面白おかしく話して、場をつなぐ。

今は、席をはずしているので、すき放題言っておく。

ばれたら、半殺しにされそうだが。


「ふー。本当にジャスタン様は、お話がお上手ですね。いつまでもそのお話を伺っていたいです」


話が途切れたところで、アンリがこちらを、きらきらとした目で見ている。

だから、そんな純真な目で俺を見ないでくれ。


ちなみに、周りで会食している人間たちも、こちらにすごく聞き耳立てているのがわかる。

う、めんどうだ。


「はは。私の話など、血なまぐさい話ばかりで、うら若き女性にはつまらぬものばかりですよ」


「そんなことはございません! ジャスタン様のお話は、それはもう、私などが全く聞いたことがない冒険譚で、心が躍ります」


そんなもんかねー。

とりあえず、手元のワインを一飲みして、一服する。ちょっとしゃべりすぎたか。


そこでふと気付いたが、給仕の娘が、ひょいひょいと、俺の皿のハムやチーズ、果物を食べている。

最初は、目の錯覚かと思ったが、新しい皿やグラスを置くふりをして、俺のだけを食べている。


おいおい。ここの給仕は、しつけがなっていない。

温厚な俺も、さすがに注意をしようと、その給仕の娘をにらみつける。

給仕の娘は、赤色がちな髪の毛をおさげにしており、前髪を目の辺りまでたらしていて、ちょっと顔の輪郭がわかりずらい。

その娘の手をとり、顔を近づけて注意しようとして気がついてしまった。


「‥‥。おい。シャーリー。お前なにやっているんだ」


ここにいてはいけない人間がいた。

そして、なんで、こんな仕事をしているんだ。

つい小声でしゃべってしまう。


「ひ、ひと違いですよ。旦那様。あ、あたいはシャーリーなんて名前じゃないですよ」


給仕の娘、シャーリーは、変な声で、あさっての方向を見ながら、釈明する。


「すみません。アンリ様。ちょっと所用がございますので、少しの間だけ、席をはずさせていただきます」


俺は、アンリの返事もまたずに、近くの扉から部屋をでる。

そして、シャーリーの方を向いて、手招きする。


しばらくすると、しぶしぶとシャーリーが出てきた。


「おい。もう一度聞くが、なんでここにお前がいるんだ?」


俺は、シャーリーを壁際に立たせ、その顔の横に手を置きながら、じょじょに顔を近づける。

いわゆる、壁ドン状態だ。


「え、えーと。そのー。そうそう。ちょっとしたアルバイトでもしようかと」


「わざわざ、こんな遠くまでバイトにしにきた、と。実に仕事熱心ですねー、シャーリーさん」


「あははは‥‥」


シャーリーが乾いた笑い声をたてる。

しかし、さすがに、ばれるとまずい。


「おい。とりあえず、外にララたちがいるから合流しておけ。お前は知らんかもしれんが、昨日、俺たちの屋敷が賊に襲われてな。最悪、襲撃の可能性があるから、一緒にいたほうが安全だろう」


「え? ハノウス。私のことを心配してくれるんだ」


ちょっとほっぺたを赤くしながらシャーリーがつぶやく。


「ばーか。お前がちょろちょろしていると、お前の正体がばれたときの言い訳が難しくなるだろうが!」


「むかー。いいですー。ハノウスたちなんかには、頼りませんー。私は今回は一人で別行動をとるので一緒にいきませんー。とりあえず、声をかけないでよね。ばれちゃうから!」


そういうと、シャーリーは、会場へと戻ってしまった。

またややこしい状態にしやがって!

つい、壁を蹴っ飛ばしてしまった。


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