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戦後処理

「あ、おかえり、ハノウス。で、休戦協定の首尾はどうだった?」


「うん。なんとか交渉は、決裂せずにまとまったよ。あ、シャーリー、お茶よろしく」


「はーい」


先々週のダブス平原での会戦の後、ラミルス帝国側との休戦交渉が続けられ、先ほど、なんとか合意にこぎつけた。

結局、ラミルス軍が撤退する代わりに、イエプト王国から解決金を支払うこと、ラミルス帝国との国境沿いには、イエプト側は軍隊を置かない緩衝領域を設けること、を主軸とする協定とあいなった。

正直、金は支払わずに、緩衝国家を独立させたほうが、手っ取り早い気がしたのだが、そこは、イエプト王家が受け入れず、あくまでも国家の国境については、従前のものとすることにこだわった。

まぁ、面子の問題か。


んで、グリスラテス側としては、それだと、ちょっと危ない気がしたので、イエプト王国へと軍事顧問をおくこと、イエプト王国の復興を手助けするために、商業団を派遣することをイエプト王家との間で条約を結んできた。


「はい、どうぞ」


「ありがとう」


俺は、シャーリーが淹れてくれたお茶を飲みながら一息つく。

軍事顧問団の編成は、中央騎士団に丸投げしてある。

もう知らん。

あと、商業団については、ジャスタン商会とギルドとで共通のジョイントベンチャーを立ち上げることにした。

やはり、リスクは分散させて、ことに当たるのが大事だな。


「あ、そういえば、今朝、ララたちが予定通り、グリスラテスへと戻っていったわよ。私たちも撤収の準備しないと」


シャーリーが、なんだかうれしそうに報告してくれた。

あ、そうか、もうみんな国へと帰ってしまったか。

俺たちも残務処理したら帰らないとなー。


「あの目の上のたんこぶのランフィも、グリスラテスへとさっさと追い出したし。これで邪魔者はいなくなったわ‥‥。ふふふ」


なんだか、ぶつぶつとシャーリーが鼻歌を歌いながらつぶやいている。ちょっと怖い。


ランフィは、あの後、すぐにグリスラテスへと渡った。

ギルドに個人的な知己がいるらしく、その者を頼って、当面は、潜伏するとのこと。

まぁ、ほとぼりがさめたら、顔を出すだろう。


そうこうして、数日がすぎ、お互いの軍もすっかり引き上げ、交渉のために残っていた使節も、国へと帰ることになった。

俺の代わりとして、中央騎士団から軍事顧問団が派遣されてくるはずだ。

さすがに、もうイエプト王国で何かするのはごめんだ。


そして俺たちは、イエプト王国をあとにした。。。


んで、一週間後には、領地であるコーンリッツ地方へと戻ってきた。

結局、会戦からは、一ヶ月くらいたっている。


俺と、シャーリーは、戻ってくるなり、ソファに腰を下ろし、くつろぐ。

さすがに、連戦の精神的な疲れと、長旅とで、本当に疲れた。


だが、久しぶりの帰宅なので、色々と溜まった報告書や手紙などを読まないといけない。

面倒だが、大事な仕事だ。

側近のサスーンにお茶をだしてもらい、一服する。そして、気合を入れなおして執務室へと向かった。


執務室で書類に目を通していると、サスーンが入ってきた。


「お館様。こちらの帳簿に近況をまとめておきましたので、一度お目通しを」


「ありがとう、サスーン。そこにおいておいてくれ」


俺に分厚い書類を手渡したサスーンだが、直立不動のまま動かない。


「ん?どうしたサスーン?」


「はっ。実は、お館様にお願いがございまして」


「なんだ、言ってみろ」


「はい。実は、お暇をいただきたいと思っております」


うっ。実は、ちょっとびっくりした。

この日がいつか来るとはわかっていたが、いざその日が来ると、ちょっと混乱する。

特に、今までサスーンが回してくれた仕事をどうするか、という実に、実務的な問題が発生する。


「う。。。わ、わかった。そういった約束だったからな‥‥」


頭の中で、ぐるぐると、これからどうやってジャスタン商会をまわしていこうかとシミュレーションをするが、正直、絶望する。

サスーンほどに、情報に強く、商売上手で、さらに機転が利く人間がなかなか思いつかない。


「お館様。あと一つお願いがございまして。私の義娘を私の後任として雇っていただきたいと思っておりまして」


「ほ、ほーう」


義理の娘って、いったいいつ養子をとったんだよ。

でもまぁ、サスーンが推薦するのだから、変な娘じゃあるまい。


「わ、わかった。ちなみにどんな娘だ?」


「はい。親ばかで恐縮ではございますが、私の目から見ても、娘は情報に強く、商売の才能もあり。さらに、機転の効きようも折り紙つきにございます」


おいおい。そんなに都合の良い優秀な娘を養子にしたのか!


「そ、それは心強いな。で、その娘はどこにいるのだ?」


「はい。別室に待機させております。お館様のご許可をいただければ、こちらに連れてまいりますが」


「うん。そこまでの人材ならば、断る理由がない。雇うよ」


「それは、まことに行幸。普段は、メイドとしてお使いください。よし。入ってきなさい」


隣の部屋から、その娘はしずしずと入ってきた。

ちょっと胸を強調したメイド服を着込んでいる。なかなかのプロポーションだ。

そして、きれいな銀髪。

って、おい。


「ら、ランフィ?」


「ハノウス様。お初にお目にかかります。サスーンの娘ランフィールにございます。以後、ハノウス様の身の回りのお世話をさせていただきますので、よろしくお願いいたします」


そして、満面の笑顔を浮かべながら、俺に深々とお辞儀をした。

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