表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/51

分隊長会議

それから一週間内偵を続け、拠点を三つ抑えたところで、爺さんを通じて官憲に突入してもらった。

総勢、五十名もの人間を捕まえることになった。

表向きは、禁制品の密輸容疑だ。


「これだけ証拠を抑えることができれば、もう十二分じゃろう。しかし、お手柄だなハノウス。お主のような弟子を持てて、わしも鼻高々じゃよ」


マスタング爺さんが高笑いをしている。

がさ入れの結果、襲撃計画の詳細も出てきた。

一応、もっともらしく暗殺計画になっていたらしいが、杜撰そのものの作戦計画で、到底成功はおぼつかないものだったそうだ。


しかし、いつ、俺が爺さんに弟子入りしたんだ。

まぁ、いい。


「で、じ、いや、師匠。もう俺の仕事は終わりということでいいんですか。演習は来週ですんで、そろそろまじめに演習の準備をしようかと思っているんですが」


「ふむ、そうじゃな。とりあえず、しばらくほとぼりが冷めるまでは課業に打ち込むが良い」


「じゃ、そうさせてもらいます」


最近は、爺さんに稽古をつけてもらうことが多かったので、しばらく休めると思うとほっとする。


「あ、わしのところにもちゃんと毎日来るんじゃぞ」


「んぐ、あ、はい‥‥」


胃が重くなる。


「あ、そういえば、クズハドたち学生はどうなりますか?」


「あやつらか?やつらのご両親たちの面子もあるで、自主退学ということになろう」


やはり、闇に葬るのか。当然だが。


「わかりました、では師匠、あの金髪のエルフたちにもよろしく言っておいてくださいね」


本来は直接顔を出して挨拶したいが、ちょっと忙しくなってきたので、しばらくは顔を出せそうもない。


「うむ。そういえば、ララたちが、また何かあったら遊びに来い、といっておったぞ。しばらくしたら顔をだしてやれ」


「はい」


俺は、爺さんに別れを告げ、士官学校に戻る。

学校では、学生三名が家庭の事情で急遽、退学することになったことが報告された。

彼らは、この学校でも有名どころだったので、周りの学生たちはお互いに噂話をしている。

また、退学した学生たちは、演習では小隊長、分隊長を勤めていたので、隊の再編成作業が始まった。

その理由を作った一人である俺はそっぽを向きながら、知らん顔をする。


新しい編成表だと、俺が所属する第二(黒)学生小隊の第三分隊長が変更となった。

俺の新しい同僚か。

名前を見てみると、ランフィとある。

俺が依然に分析した、通常の学生と異なる特異な行動を取る学生五人のうちの一人だ。


俺たちは分隊長会議と称して、夕方、寮の一室に集まった。

ランフィは、男にしては、ちょっと長めの銀髪の持ち主で、中性的な容貌を持ったやつだ。

男の娘、として売り込むと、一部に人気がでるかもしれない。

俺が観察したところ、見た目以外には、これといって特徴はなく、この二年間の学業を振り返っても、そんなに目立つところはなかったと思う。


「ランフィです。このたび、新しく第三分隊長を拝命いたしました。皆さんよろしくお願いいたします」


丁寧に挨拶をしてきた。

しかし、こいつ声も女みたいな感じだな。

やはり、女装させて売り出すか。


挨拶が終わって、改めて、来週の演習について動きをチェックする。

当日は、最初のうちは、大まかなシナリオにしたがって部隊を動かすが、途中からは、がちの演習になる。

一応、剣は刃引きされ、槍も鈍らを使っているが、それでも危険がたっぷりとあるので、丁寧に図上演習する。


俺は、周りの連中が、やけに雄雄しい突撃ばかりにこだわっているのに、いらだって、ついつい横から文句を言ってしまった。

いつもならば、あんまり口出ししないが、ちょっと気が高ぶっていた。


「そこで小隊同士がお互いに正面突撃したって、損耗が増えるだけだろ。ここに遮蔽物があるんだから、ここに陣取って、側面から突撃させろ」


こんな具合に、図上演習に突っ込んでいると、いつの間にか俺の隣に新任のランフィが座っていた。

全く気配を感じなかった。


「ハノウス君って、いつも授業や演習ではやる気がない感じだけど、今日は何か違う感じだね」


俺の耳元にささやくように語りかけてくる。

俺は急いで、間を空けて、言い訳をする。


「い、いや。ほら。怪我とかはなくべくしたくないだろ?」


相手は男だぞ。なんで、こんなに俺緊張しているんだ。


「ふーん、そうなんだー。怪我したくないよねー」


ちょっと笑顔が硬い感じで笑っている。

笑顔を作っている感じがする。


「てっきり僕は、ハノウス君が何かをやり遂げて、ハイになっちゃったのかな、なんて思っちゃった」


俺は、急に背筋に氷を突っ込まれたように頭が冷静になった。


「お、お前‥‥」


「んふふ。」


俺たち二人が急に陰険に顔を見合わせているのを見て、会議はお開きとなった。


「来週の観閲式、非常に楽しみしているんだ、僕。ハノウス君にも、ぜひとも活躍してもらいたいなー、って」


笑顔を浮かべているが、目は笑っていない。


「僕の脅威判定に狂いが生じたことに、非常に感銘を受けているんだよ。これはお世辞でもなく本当にね」


「何者だ」


周りの学生の姿はもう見えない。


ランフィが俺の目をまっすぐに見ながら笑顔を浮かべながら、冷たい声でその名を告げる。


「業界では『ウィズナー』という名前を使っているけど、ここではランフィと呼んで欲しいな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ