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カウンターインテリジェンス

二人に自己紹介をして、今までの経緯を説明する。


「なるほど。その『赤竜亭』という宿屋が、今回の相手方組織の前線集積所になっている可能性がある、とハノウス様は疑っていらっしゃるのですね」


ハーブティーを優雅に飲みながら、金髪の美女、傭兵隊長のララが相槌をうつ。


「決行予定日にあと三週間しかないので、相手の計画もそろそろ煮詰まっているはずだ。もうそこまで大規模な計画変更はできないだろうし」


この段階で計画がないとすると、単なるいきあたりばったりの暴行くらいの可能性しかなく、その程度の事件であるならば、当日の対策で十分に防備できる。

逆に、それなりの規模で襲撃計画を行おうとするならば、大人数を動員せざるをえず、そのための事前準備は、どうしても大掛かりなものとなってしまう。

そして、大規模になればなるほど、隠し通す事は困難だ。

今回の事件は、マスタングの爺さんが事前に察知できた、ということからも、それなりに大規模な事件であるとにらんでいる。

もう少し踏み込むと、そもそも、国王暗殺計画なんていうものも、膨大な計画群の単なるひとつの計画に過ぎない、という可能性すらある。


「まずは、相手側の意図の全貌をつかみたい。そのためには、どうしても、定期的な監視網が必要だ。そして、場合によると、相手の人間をこちらに招待して、『お話』をする必要もあると思う」


「それでしたら、うちの部隊には、盗賊ギルドあがりの、それ専門の人間もいますので当たらせましょう」


「助かる。要望事項としては一週間の間の人の移動、関係者の把握、可能な範囲で別の集積所も把握したい。あと、俺の推測に過ぎないが、ラミルス帝国の外交関係者、軍事関係者の動向も把握しておいてくれないか」


「ラミルス帝国ですか?たしかに王都には、外交事務所が何箇所かあったと思いましたけど」


怪訝そうな顔のララ。


「ラミルス帝国というと、クスハド君から聞いた中に、そこの国の貴族の名前があったような」


むむむ、と頭を抱えて考え出すシャーリー。


「あ、そうそう、たしか、ウィズナーとか、そんな名前」


「ラミルス帝国のウィズナー侯爵、帝国の『紫』騎士団の団長ですね。『紫』はラミルス帝国の特殊任務部隊で、各国を飛び回っているといいます。今は、グリスラテス国にいるということですか。。。その情報は、かなり重要で危険ですよ。彼はこの業界では有名人です」


顔をしかめるララ。


「そうなのか。俺はあまりラミルス帝国に詳しくはないので、もうちょっと詳しく教えてくれ」


「はい。『紫』が動いている、ということはラミルス帝国が、なにか対外作戦を計画していると考えたほうが無難です。近年、グリスラテス国の南にあるイエプト王国に対して、ラミルス帝国は外交的な恫喝を何度も繰り返しております。そこでも、『紫』が活動を活発化させているということですので、今回の動きとも無縁ではなかろうかと」


ふむ。南でどんぱちしていた帝国が、その矛先をさらに北上させた。

しかも、その国では、国王暗殺を含む、工作が進んでいる、と。


「陽動だな」


「‥‥陽動?」


みんな、顔にはてなマークを浮かべて、こちらを見ている。


「そうだ。ラミルス帝国の目標は、イエプト王国に対する軍事作戦だろう。そのためには、背後のグリスラテス国では混乱が続いてくれるとうれしい。そうすると、グリスラテス国の中で事件、しかも大規模で騒ぎが大きくなりやすい類の事件が起こってくれると、ただ、それだけで時間稼ぎができる」


「じゃあ、グリスラテス国での暗殺計画というのは」


「成功しても成功しなくても良いような捨て鉢の作戦だろう。巻き込まれている連中は単なるスケープゴートだな。その巻き込まれた人間が多ければ多いほど、グリスラテス国内での敵味方についての、疑心暗鬼が増えて、帝国にとって、まさに好都合の状況が生まれる」


「じゃ、じゃあ、どうするの?」


シャーリーが困ったような顔で聞いてくる。


「簡単な話だ。最初から事件がなければ問題ない」


「え?それってどういうこと?」


ますます顔にはてなマークを浮かべてシャーリーが聞いてくる。


「関係者を全員、別件逮捕して一網打尽にする。仮に、後から無罪だ有罪だ、となってもその時にはラミルス帝国にとっての進軍の時期を逸しているから、帝国の利益がない」


「ではどうやって逮捕させますか?」


いじわるな顔をしてララが聞いてくる。


「なーに、官憲の逮捕時に、禁制品が見つかったことにすれば良いのさ。あとは、できるだけ多くの関係者、あ、無実の人間が入っていても良いぞ、をリストアップしてくれ」


「き、禁制品ですか」


「爺さんに相談すれば、用意してくれる。なーに、一ヶ月も足止めできれば、十分だから、疑念だけで良いんだよ」


「‥‥」


小さい女の子、ミリーがこちらを見ている。


「ん?なんだ?」


「あなた何歳?」


「へ?十五だが」


「とても、そのような年齢には思えない」


一瞬、どきっとしたが、単に、考え方が擦れている、と言いたいだけなのだろうと勝手に解釈する。


「よし、みんなよろしく頼む」


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