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調査

「私も結局、パーティには参加していないんで、聞いた話しなんだけどー」


シャーリーからの話を総合すると、士官学校内でも割と品行方正、成績優秀な学生たちにクスハドは声をかけていたみたいだ。

また聞きになってしまうのだが、どうやらラミルス帝国の関係者たちと、王都内で出会えるらしく、帝国のお偉いさんたちとのパイプも築け、将来の地位や名誉についての、ばら色の未来を教えてもらえる、とかそういったものらしい。


それって、買収か何かじゃないか?


まぁ、しかし、学生たちの気持ちもわからんでもない。

南の大国、ラミルス帝国といえば、国力だけ考えれば、グリスラテス国の十倍はあろうかという大帝国だ。

そこの貴族ともなれば、どれだけの金銀財宝を所有できるか。

ただ、宗教も文化も違うので、そんなに住みやすい国とも思えないし、皇帝の一党独裁色が強いとも聞く。

それならば、うちの国の方が、比較的自由であり、住みやすいと思うんだがなー。

まぁ、いい。


俺は、マスタング爺さんと、シャーリーに教えてもらった情報とを総合し、候補を十名に絞った。


それから一週間、絞った候補者たちの行動を、逐一観察し、また、補強のために聞き込みをしたりして、記録をし続けた。


「あれ?ハノウス、また何か書いているの?」


「あぁ、ちょっとな」


一週間ほど記録を続けると、あるパターンが浮かび上がってきた。


候補者のうちの半分の五名は明らかに、一般の学生とは異なる行動パターンをしていること。

その五名のうち、クスハドとの会合回数が多い三名のグループと、クスハドとは頻繁に会合を開かない単独の二名。

そして、クスハドとの会合回数が多いグループが、共通した時間に合わせて外出している記録が浮かび上がってきた。


「この三名がビンゴだな‥‥」


「さっきから、何書いているの?どれどれ?なにこの数字?」


シャーリーには、平均、分散といった概念はよくわからないだろうから噛み砕いて説明してやる。


「まぁ、俺たちの普通の学生と比べて、どれだけ、変わったことをしているかといった数値かな」


「ふーん、そうなんだー」


たぶんわかっていないんだろうな、といった顔をしているが、気にしない。


「俺はこれから用事があるんで、授業を早退するわ。先生には病欠します、と伝えておいてくれ」


「え?私も早退しちゃおうかなー、音楽の授業つまらないし」


このお嬢さん、もうちょっと社交界での技術を学んだほうが良いんじゃないか。

シャーリーを爺さんのところに連れて行くのは気が引けるが、ここで無理に断って、あとあと面倒になるのも困るな。仕方ない。


「そ、そうか。まぁ、とりあえず、俺は立ち寄るところがあるんだが。シャーリーはどうする?」


「一緒に行くに決まっているじゃない」


即答された。仕方ない。


「じゃあ、とりあえず、隣の中央騎士団の官舎に行くんで、先生に休みを伝えにいこう」


先生に、中央騎士団の顧問に会いに行く旨を伝えると、あっけないほど簡単に許可がでた。

むしろ、うらやましいとさえ言われた。そうかー?


それから半刻ほど歩いて、隣地にある中央騎士団の官舎に到着した。

官舎もかなり古い石造りの建物で、歴史を感じさせる。

そして、その一階の奥まったところに顧問の部屋がある。


こんこん。


扉をノックする。


「はいれ」


「「失礼します」」


俺たちは並んで中に入った。


「ん!?なんでシャルがいるんじゃ!」


「え?おじさま!?」


え?二人って知り合いなのか?


俺たちは、その後しばし歓談し、クスハドたちがあやしいこと、そしてクスハドたちがこれから外出する可能性が高いので、先回りして見張る旨を伝えた。

シャーリーに関してだが、国王暗殺計画の話はしなかったが、爺さんからの個人的な調査の依頼を俺がしていることは説明した。

そうしたら案の定、俺についていくとか言い出した。まぁ、一人よりも複数で行動した方があやしまれないかもしれない、と自分で勝手に納得して、連れて行くことにした。

シャーリーはニコニコしている。

あと個人的に気になったことだが、シャーリーと爺さんとの会話が、やけに固く、色々と考えながら話している様子だった、特に、二人でアイコンタクトをすることが多かったような印象を受けた。

まぁ、気にしないことにする。


俺が知らないほうが良いことはたくさんある。


「じゃあ、行ってきます」


「たのんだぞ、二人とも」


もうすぐ夕方という時刻、まだ外は明るい。

二人で並んで歩いていると、しばらくすると、通りの遠くに、クスハドたちを発見した。

ビンゴだ。やはり、三人一緒だ。


彼らは、周囲をきょろきょろと警戒しながら歩いている。明らかにあやしい。


そんな緊張感あふれる中、ある意味緊張した声音でシャーリーが隣から声をかけてきた。


「ね、ねー、ハノウス。こういうときって男女ってどんな感じで一緒に歩くのかな?やっぱり手をつないだりするのかな?」


顔を真っ赤にして聞いてきた。


知らんがな‥‥。


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