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【番外編】彼女が水着に着替えたら

「おい、日野宮あかる! 海に行くぞ!」


 ある日、突然教室に押しかけてきて日野宮あかるにそう宣言したのは、元・生徒会長の星乃木ほしのき 姫妃ひめきだった。

 そのような先輩の突然の来訪・唐突なお誘いにも慌てた様子も見せず、日野宮あかるは呆れた声で問いかける。


「えーっと、いきなりですね? そんなことよりヒメキ先輩は受験勉強大丈夫なんですか? 夏は受験生には大事な時期だって聞いたんですけど……」

「ははっ、受験生にも休息は必要なのだ! それよりもお主はヒメの水着姿を見たくないか? 先日の礼代わりにヒメの水着姿を見せてやろう」


 星乃木ほしのき 姫妃ひめきの水着姿であれば、学内の男子なら誰もが見たいと思うものだ。なにせヒメキは、人気の面では日野宮あかるや現役アイドルの美華月みかづき 麗奈れいなには劣るものの、三年生ではブッチギリで人気のある美少女、しかも巨乳である。男子連中が反応しないわけがない。

 現に彼女の来訪からザワザワしっぱなしだった教室内が一気に湧き上がる。


 だが、誘われた当の日野宮あかるは″女性″である。いくらヒメキが異性から見て魅力的な存在だとしても、さすがに同性である彼女に対してその誘い文句はないだろう。

 横耳で聞いていたクラスメイトたちはそう思ったものの、当の日野宮あかるの反応は……


「あ、行きます!」


 即答である。躊躇もへったくれもない。


「よーし決まりだ! 今度の週末な! 詳しくはレノンに伝えとくからあいつに聞いといてくれ!」

「あ、ほかにも誘って良いですか?」

「んー、面倒だから二人までなら良いぞ! でわっ!」


 そう言うと、ヒメキは来たときと同じようにあっという間に去っていった。まるで夏の台風のように、通り過ぎたあとをかき乱すだけかき乱しておいて。



 あとに残された教室内は、尋常でない雰囲気に包まれていた。

 いきなりヒメキに無茶振りされたせいか、少し困ったような表情を浮かべて腕を組む日野宮あかる。そんな彼女を眺めながら、二人の会話を耳をダンボにして聞いていたクラスメイトたちは落ち着かない思いを抱いていた。


 たとえば男子生徒たちは、心の底から二人--ヒメキと日野宮あかるが水着姿で並んでいるところを見たい、心のアルバムにしまい込みたいと思っていた。

 そして女生徒たちでさえ、日野宮あかるの水着姿を見れることは、とてつもなくレアな経験をすることになるのではないかと思っていた。


 同時に、彼らは心をときめかせる。果たして日野宮あかるが誘うであろう二人の人物とはいったい誰なのか。夢のような時間を共有できるのは誰になるのか。


 男子生徒たちは、自分が誘われたらどうしようなどど、勝手に叶わぬ夢を抱いていた。女生徒たちは、あんな美少女たちと一緒に海に行ったら、自分は刺身のツマどころの騒ぎではないなと憂鬱な気分になりながらも、それでも一緒にいたいというジレンマを抱えていた。


 こうして若者たちの心をくすぐる夏のビッグイベントが、これから始まろとしていた。



 --だが、彼らは知らない。

 --このイベントに最も心を躍らせていたのが、当の日野宮あかる本人であることを。




 ◆◆◆




 海だ! 水着だ! 美少女だーっ!

 今日の俺は凄まじくハイテンションだった。なにせ今日はたくさんの美少女たちと海に行くのだから。


 向こうで窓の外を見ながらはしゃいでるのは、傍目には黒髪正統派美少女で巨乳のヒメキ先輩。その横には、いつも通りコスプレと見まごうほどのニャンニャン姿である妹レノン。この二人が並ぶと妙な破壊力あるな。

 そして俺の座席の正面には、ゆるふわヘアーでいまどきの美少女の代名詞みたいな海堂かいどう 布衣ぬいちゃん。ヌイちゃんは窓の外の写真をパシャパシャと撮っている。ミニスカート姿は実に可愛らしい……パンツ見えないかな。

 さらに俺の横には、癒し系の明星あけほし羽子はこちゃん。清楚なワンピースに、ヒメキ先輩ほどではないものの巨乳なのがまた堪らない。


 今回この五人でなぜか海に行くことになってしまった。キッカケはヒメキ先輩に誘われたからだ。

 美少女の水着姿が見れるってことで、俺は一も二もなく参加を宣言した。ついでに他の美少女の水着姿も見たいなぁと思っていたところ、大勢だと面倒だから二人までなら誘って良いと許可されたので、今回は悩んだ結果……布衣ぬいちゃんと羽子はこちゃんを誘うことにした。

 誘ってみたら二人とも意外にもアッサリとオッケーしてくれた。やったぜ!


 こうして今回、俺たち五人は電車で近くの海へと向かうことになったんだ。

 うっひょー! JK五人で海なんて、なんてリア充なんだろうか! こりゃもう夏に感謝だねっ!


「あかるさん、ポリッキー食べます?」

「お、ありがと羽子ちゃん! どうせなら私とポリッキーゲームしよっか?」

「……なにセクハラオヤジみたいなこと言ってるんですか」


 いかんいかん、つい調子に乗っちまった。

 とはいえ、まんざらでもない様子で頬を染める羽子ちゃん。うひょー、可愛えっ!

 やっぱり夏はサイコーだぜっ!


 ちなみに先日、俺は羽子ちゃんと水着を買いに行っていた。なにせ元々は堅物だったあかるちゃん、水着なんてもんを持ってなかったからだ。

 そのときのお買い物がまた楽しかったんだけど、その時の話はまたあとでゆっくりと語ろうではないか。

 やっぱり物事を語るときには、実物を前にしながらの方が良いからね。うへへ。




 ◇◇◇




 しばらく電車に揺られてたどり着いた海水浴場は、たくさんの人たちで溢れていた。俺たちはヒメキ先輩御用達という海の家の一室にこの日は滞在することになっていたので、そこに向かうことにする。


「しっかし、御用達の海の家って、どういうことなんだろう?」

「にゃはは、ここはうちの会社直営の海の家にゃん」


 俺の疑問に答えてくれたのはレノンだった。って、うちの会社?


「そうにゃ。スターウッド・コーポレーションっていう中堅の総合商社にゃん」


 なんと、ヒメキ先輩とレノンは社長令嬢でした。

 ……なんてこったい、そうと知ってればもっと尻尾振ってたのに。そしたら将来雇ってもらえたりするのかな。玉の輿は……無理だよな、同性だし。

 はっ、元に戻れば……イヤイヤないわー。レノンみたいな珍獣、制御できる自信ないし。ましてやヒメキ先輩にいたっては言わずもがな。

 まったく、残念美人とは彼女たちのことを指すんだろうなー。




 店員らしい女性従業員にVIPルームらしい部屋に案内されると、そこは海の家とは思えないほど広々とした部屋だった。

 ソファーやテレビまで備え付けられていて、まるでリゾートホテルだ。しかも個別の着替えスペースまでついているときた。ちっ、余計な設備まで付けやがって。せっかくラッキースケベできると思ってたのにさ。

 でもまぁ仮に一緒に着替えられたとしても、未だに【認識阻害】で女の子の裸は見れないんだよねー。せっかくがんばって三つもミッションをクリアーしたってのにさ、しくしく。




 ……とはいえ、何事にも例外はあるっ!

 たとえばそう--【水着】だっ!


 君は知ってるか?

 時と場合によっては、水着姿は全裸よりも魅力的であることをっ!


 ん、知らない?

 くくく、君は子供だな。

 さぁ、この俺が教えてやろう! 水着の真の素晴らしさをっ‼︎



 ってなわけで、美少女たちの水着姿チェックターイム!


 まずは他ならぬあかるちゃん! つまり自分っ! 今日のために羽子ちゃんと買いに行った水着は本当に可愛らしいんだ。


 今回チョイスしたのは、あかるちゃんのスタイルの良さを余すことなく見せつけることが出来るビキニタイプの水着だ。 色は羽子ちゃんに勧められた青色にした。

 いくら俺の中身が男とはいえ、さすがに際どい服装は恥ずかしかったので、下は短パンタイプにした。さらにその上にはパレオを巻いている。

 だってさ、女性の水着の下の方ってなんとなくブーメランパンツ履いてる感覚なんだよねぇ。どうもそれが恥ずかしくて無理だったんだ。他人にジロジロ見られるとか耐えられそうにないし。この辺が元男たる感覚なのかもねぇ。

 それでもあかるちゃんの腰のくびれはバッチリ見えていた。んー、セクシー!


 改めて鏡に映るあかるちゃんの姿を見て思う。いやー、あかるちゃんはまじで可愛いね! ポージングなんかすると、我ながら思わず見惚れてしまうよ。

 ただ残念なのは、いくら可愛くしてもこうして鏡でも見ない限り自分では見れないってことだよなー。んー、実に無念。



「おまたせ……しました……」


 消え入りそうな声で着替え室から出てきたのは、羽子ちゃんだ。

 照れ屋さんな羽子ちゃんが着ているのは、セパレートタイプの薄い水色の水着だ。本当は豊かな胸をアピールするビキニを着て欲しかったんだけど、「わ、わたし太ってるから……」と言って猛烈に嫌がられちゃったんだよねぇ。


 それでもキャミソールみたいなブラとヒラヒラのミニスカートみたいなパレオは本当に可愛らしかった。むふふ、がんばって羽子ちゃんのストライクゾーンギリギリの水着を攻め続けた甲斐があったぜ。

 だってさ、羽子ちゃんてば最初スクール水着みたいな地味なやつを選ぼうとしたんだぜ? だから俺はがんばったね。最初はマイクロビキニみたいなのを見せて「絶対無理っ!」ってなったところで、少しずつ派手さを落としていく。

 そうして羽子ちゃんの感覚が狂ってきたところで、勝負球であるストライクゾーンからストンと落ちるフォーク……ならぬ今回の水着を渡したんだ。

 さんざん速球--派手な水着ばかり見せられていた羽子ちゃんは、これでコロッと空振り--受け入れてしまったね。


 これだけ苦労して羽子ちゃんに着させた水着だから、その姿を見たときの感動はひとしおだったよ。くー、たまらんですたい!

 ちなみに今回発覚したんだけど、羽子ちゃんはEカップだった……。素晴らしいです、ごちそうさま。


 えっ? あかるちゃんはどうなんだって? 今回水着を選ぶときに店員さんや羽子ちゃんに教えてもらったんだけど、どうやらあかるちゃんはC〜Dカップらしい。美乳って感じかな? 認識阻害でよく見えないんだけどね……しくしく。

 でもまぁ店員さんに「お客様は私が見てきたなかで一番スタイルが良いですよ」って言われたから良しとしよう。リップサービスもあるだろうけど、そう言われてまんざらでもないしね。




 さてさて、羽子ちゃんに見とれてる間にも他のメンバーもやってきていたので、じっくりと解説させてもらうとしよう。誰に対しての解説なのかは……触れぬが花ということで。


 ってなわけで、まずは布衣ぬいちゃん!


「おまたせー! どうかなこの水着、似合ってる?」

「うんうん! 布衣ちゃんすっごい可愛いよ!」

「あはは、あかるちゃんにそう言ってもらえると嬉しいな!」


 笑顔でそう答えるヌイちゃんの水着は、オシャレっ子な彼女らしくお世辞抜きでとっても可愛らしいものだった。

 今回彼女が着ているのは、ビキニタイプのピンク色の水着だ。お尻がチラ見えするパレオがたまらない。いかにも若い子が着る水着って感じではあるんだけど、うちの学校の準ミスになるくらいの美少女であるヌイちゃんが着てるってだけでもう鼻血もんですよ。

 ただ胸は……あかるちゃんの勝ちかな、むふふっ。悪く思わないでくれよ、ヌイちゃん。




「にゃにゃーんっ! 水着ならレノも負けてないにゃん!」


 続けて登場したのは、派手っ子レノンちゃん。

 グリグリにパーマをかけた金髪をサイドテールにして、金色に近い黄色のビキニを着ている。とはいえさほど水着は際どくはなく、レースのようなヒラヒラがブラとアンダーについていて、普段の感じから打って変わって--まるで異国の舞姫のように見えだ。

 それにしても……こいつも胸でけーなっ! さすがはヒメキ先輩の妹、ボインボインですわ。

 なんという、うらやまけしからん……ゲホンゴホン。さりげなく戯れながらタッチしてやろっと。



「くくく、真打ち登場といくかな。我の前にひれ伏すが良い」


 そう言いながら最後に登場したのは、黒髪美少女のヒメキ先輩。

 なんと彼女……真面目そうな外見のくせに、超セクシーな真っ赤なビキニを着てたんだ。このメンツのなかで際どい水着を着るのがヒメキ先輩というのも驚きだが、身長150cmくらいの小柄な身体に秘められた巨乳ポテンシャルには絶句させられてしまう。

 なんだよあの、わがままボディは。あんなので海に出たら逮捕されるレベルだぞ⁉︎


「……ん? どうした日野宮あかる、凄すぎて言葉もないか?」

「ヒメ姉はちょっとやりすぎにゃ。胸がポロリしそうにゃん」

「くくく、そんなご褒美を簡単にこのヒメが見せると思うのか? まぁせいぜいヒメのこの姿を見て感涙するが良い。庶民たるものたちには過ぎたるものかもしれんがな」


 ええ、庶民である俺は感涙もんですよ。思わず心の中でみんなの水着姿に感謝の祈りをささげる。


 あぁ、神様。俺は生きててよかったよ。

 きっとこれは、女の子になっても頑張ってきた俺へのご褒美なんだね。


 夏って、ほんっとサイコー!


 さぁ、これから俺の最高にハーレムなサマーデイが始まるんだぜっ!


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