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【ボツネタ】アカルちゃん、秋◯原へゆく

本編用に書いてたのですが、あまり本筋に関係ない話となったので、一度ボツにした話です(笑)日付的には、登山の翌日の出来事になります。




 電車に揺られること小一時間。やってきたのはオタクの聖地とも呼ばれるとある街だ。

 ここはかつて電気街として栄えた街なんだけど、時代とともに姿を変え、今は別の街へと変貌を遂げていた。それが『オタクの聖地』だ。


 駅で降りると、そこはもう別世界だった。メイド服姿の可愛らしい女の子が、駅を出てすぐのところでチラシ配りをしている。一枚受け取ってみると、ローカルアイドルの劇場のチラシだった。

 へー、最近はこういうスタイルに変化してきてるんだ。目深に被った野球帽を直して、アカルちゃん直伝の度なし伊達眼鏡を指でくいっと持ち上げる。ちなみに今日のアカルちゃんは、上はパーカーに下はジーンズという、この街での王道的服装だ。スタイルが良いから少し目立つけど、そこは野球帽と伊達眼鏡で完璧にカムフラージュしている……はずだ。


 さて、なんで俺が今日この街に来ているかというと、それはある目的のためだった。その目的とは……ズバリ『この世界の元になったであろう美少女育成シミュレーションゲームの捜索』である。


 近くのゲーム屋はある程度探してみたものの、残念ながらそれっぽいゲームを見つけることが出来なかった。ってことは、残る可能性として考えられるのはパソコンゲームだと思ったのだ。

 ただ、パソコン用のゲームはマニアックなものが多く、置いてある店舗が少ない。そこでこの街までわざわざやってきたというわけだ。



 最初に進入したのは、駅近くにある同人ソフト等も手広く扱っているお店『まんがまみれ』。一応全国に複数店舗を持つ超有名店だけあって、品揃えはなかなかのものだった。

 ただこの店には一つ大きな問題がある。はっきり言ってどこになにがあるのか分からないんだ。


「あのー。すいません」

「は、はひっ⁉︎」


 店員さんに声をかけたら、この店員さん変な声を上げよった。なんだよ、そんなに驚かなくてもいいのに。


「これこれこういう感じのゲームって知りませんか?」

「んー、それってPCゲームですか? それとも同人の?」

「それが、どんなハードかは分からないんです。ただなんとなく内容が分かる程度で……」


 一通り俺の拙い説明を聞くと、店員さんは「ちょっと待ってくださいね」と言ってカウンターの奥に引っ込んでいった。どうやら他の店員たちと相談してるみたいだ。ときどきこちらをチラチラ見ている。

 なんとも手持ち無沙汰だったので、その辺にあるゲームを手に取ってみる。どれどれ……『ガチムチ王子シリーズ最新作』。み、見なかったことにしよう。

 慌てて棚に箱を戻したところで、さっきの店員が戻ってきた。


「お、お客さん。うちは結構コアなメンバーが集まっているんでいろいろ聞いてみたんですが、おっしゃったようなシミュレーションも、あるいは乙女系ゲームも無いんですよねぇ。一応似たような感じのものはいくつかピックアップしてみたんですが……」

「あ、すいません」


 そう言われて幾つかのゲームの箱を手渡される。どれどれ、内容を確認してみるかね。


 店員の許可を取って箱の裏面の説明を確認してみるものの、そのほとんどは乙女系ゲームと言われる女の子が主人公のゲームばかりで、しかも学校や登場人物の設定が大きく現状と異なっていた。

 唯一あった美少女育成シミュレーションゲームも、そもそも世界が『剣と魔法のある世界』なんで今とあまりに状況が違いすぎる。


 うーん、こりゃこの方向はもしかしてハズレかなぁ。せっかく店員さんに苦労して集めてもらったので、その中でいちばん現状に設定が近い乙女系ゲームを買うことにする。ま、なんかのヒントになるかもしれないからね。


「じゃあ……これください」

「い、いいんですか? お探しのものでは無いみたいですが」

「ええ。これでいいです。確かに違いますけど、世界に近づくための第一歩ですから」


 そう言うと、親切な男性店員は一瞬惚けたような表情を浮かべた。ん? なんか変なこと言ったかな?



 ◇◇◇



 表に美少女の顔がどアップで描かれた紙袋を断固お断りして、今日の戦利品を背中のリュックに格納する。

 はー、疲れた。なんか一気に疲れが出てきたので、駅近くのコーヒーショップに足を運ぶ。


 窓際の一人掛けの席に座り、注文した飲み物を口に含む。ふいぃ、めいっぱい甘いキャラメルマキアートが、疲れた体と心に染み渡るぜ。


 はっきり言って今日の収穫はほとんど無かった。まぁ無かったことが収穫と言えるのか。もしかしたら俺が仮説していた『ゲームの中の世界』ってのは間違いなのかもしれない。あるいは、そもそもゲームの世界にそのゲームがあると考える方が間違っているのか。


 んー。これで捜索は振り出しに戻る、かな。邪魔な伊達眼鏡を外して帽子を取り一人伸びをすると、ぐったりとしたままドリンクのストローを口に含む。

 ふと気がつくと、周りにいる客のうち何人かがこちらを見ていた。あれ? なんか知らないうちに変な声でも出したかな? 仕方なく帽子と伊達眼鏡をかけ直して変装を再開することにした。


 あーあ、結局地道に【G】のミッションをクリアしていくしかないのかな。そんなことを考えながら窓の外を眺めてると、ふいに見覚えのある人物の姿を視界にとらえた。

 あいつはたしか……キングダムカルテットの一人、なんとかのガッくんじゃないか? いまの俺ほどではないものの変装のようなものをしているけど、かなりのイケメンだからすぐに分かった。

 とりあえず【ステータス】で確認してみる。……やっぱりそうだ。キングダムカルテットの一人『メガネ賢者』の天王寺てんのうじ 額賀がくかだ。身長が他の人たちに比べて頭一つでかいから、かなり目立っている。


 しっかしあいつ、なんでこんなところに居るんだろうか。人のこと言えないけどさ。見た目からかなりマジメ系なやつと思ってたんだけど、案外ゲーム好きだったりするのかな? あるいは、羽子ちゃんみたいにあっち系・・・・だったらどうしようか……。


 ところがガッくんは、目をハートマークにしたメイドさんたちには目もくれず、人ごみの中をスタスタと突き抜けていった。あれれ、あっち系には興味ないのかな? まぁいろんな趣味な人がいるから一概には言えないんだけど……。



 ◇◇◇



 帰宅したあと、朝日兄さんのノートパソコンを拝借して勝手にゲームをインストールする。画面にインストール中の文字が表示され、ジワジワとバーが満ちていく。あぁ、この感覚久しぶりだな。なんだかオラ、ワクワクすっぞ!


 待っている間ヒマなので、勝手にブックマークの調査を開始する。くくく、朝日兄さんってばこんな分かりやすい場所にエロサイトを置いとくなんて不用心だな。ほほぅ、女子高生ものが好きなのか。こんなに可愛い妹が二人もいるくせに、なんという背徳的な奴だ。

 暴走して妹に手を出されても困るので、勝手にパソコン借りたお礼も兼ねて、とりあえずブックマークにオススメのエロ動画サイトをいくつか追加しておいた。朝日兄さんの趣味の傾向から厳選したサイトだから、きっと喜んでくれるだろう。


 さーて、そんなことしている間にインストールが終わった。早速ゲームを開始しよう。




 ……数時間後。

 俺はアカルちゃんの伊達メガネ(実はブルーライトカット機能が付いていた)を外してふぅとため息をついた。


「なんだよこれ、糞ゲーじゃん‼︎」


 そもそのこのゲームの内容だけど、乙女系ゲームというだけあって、男子ばかりのクラスに突然入ることになったプレイヤーが、クラスのイケメンたちとイチャラブする話だ。ただこのゲームにはいくつか致命的な問題があった。

 まず、俺自身が乙女系ゲームに全く興味がないこと。なにせ画面のイケメンたちから様々な美辞麗句で口説かれるのだ。これが地味に精神的にキツい。

 次にボイス。これがまたかなりしんどい。「かわいいよ」とか「愛してる」とかパソコンから語りかけられて、俺は全身にサブイボが発生するのを必死に堪えながらゲームを進めてた。途中で音声切れば良いことに気づいてミュートにしてからは相当楽になったんだけどね。


 だけど最大の問題は、バグが多すぎることだ。しかも進行が完全にストップするレベルの深刻なバグが、ね。

 あまりにもひどいのでムカつきを抑えきれずに攻略サイトを検索すると、こんな表示が出てきた。


「このゲーム、コードを改造しない限りクリア不可能」


 ……ガッデーム‼︎

 俺の時間を返せっ‼︎



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