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【番外編】ドラマだってがんばるよっ!

お久しぶりです!

番外編を投下します( ^ω^ )


 私がドラマに出ることになったのは、ほんのささいなキッカケからだった。それは、私とレーナのたわいない会話から始まったんだ。


「ねぇねぇアカル聞いて、あたし今度ドラマに主演することになったのよ!」


 雑誌の取材を受ける直前の空いた時間に、レーナが嬉しそうに語りかけてくる。記憶にある限り、レーナは何度かドラマに出演したことはあったけど、主演となると初めてだった気がする。


「主演? レーナすごいじゃん。もしかして月9ドラマだったりする?」

「まっさかー、そんなすごいのの主演なんてできるけないじゃない。深夜ドラマよ」

「へぇー。まぁそれでも主演はすごいよね、頑張ってきた甲斐があったじゃん。夢がまた一つ叶ったって感じ?」

「そ、そうね。えへへ……」私の褒め言葉に、レーナが照れながら頬に手を添える。「そうなのよね、なんだか一つの目的を達成したというかなんというか」

「おめでとう、レーナ。今度お祝いしなきゃだね、私からなにかプレゼントしよっか? 欲しいものとかある?」

「あら、ありがとうアカル。でもちょうど良かったわ。実はね、アカルにひとつお願いがあるのよ」

「ん? 私にお願い?」

「うん、そう。あのね……」



 ◇◇◇



「ということで、私もドラマに出演することになっちゃったんだよねぇ」


 私の言葉に、周りに集まった三人の友人が驚きの声を上げる。


「ほーっ、すごいね。うちのクラスメイトはスーパースターじゃないか」

「アカルちゃん、やったね。僕、絶対録画して見るよ! ねー、エルフィ? 」

「……リーヤと一緒に見ておきます」


 昼休みに雑談している相手は、短期留学生としてうちのクラスにやってきていたアキラ、リーヤ、エルフィの留学生トリオだ。彼女たちとは初めて会ったその日からなんとなく馬が合って、こうしてよくお話ししたりなんかしてる。

 三人は海外から来た留学生だってのに、妙にこの国のことに詳しい。もちろん言葉はペラペラだ。やっぱり留学してくるくらいだから、すごく勉強しているんだろうか? 時々情報が古かったりするのはご愛嬌なんだけどね。


「それで、アカルちゃんはどんな役で出るの?」

「うーん、それがね……」


 私は少し言い淀んだものの、キラキラと目を輝かせるリーヤの視線に負けて続きを口にする。


「女の子の身体になっちゃった男の子の役、なんだ」

「え?」

「へ?」

「は?」


 言葉の意味が理解できなかったのか、異口同音に変な声を出す三人。


「だから、ふとしたキッカケで女の子になっちゃった男の子の役だよ。それで、レーナが演じる主役の娘のことを好きになってちょっかいをかけるんだって」

「「「…………」」」


 なぜだか私たちの間に流れる、微妙な空気。私はなんとも言い難い表情を浮かべる三人の視線から逃れるように、彼女たちからサッと視線を窓の外に逸らしたんだ。



 ◇◇◇



 こうしてやってきた撮影当日。とある高校を丸々一日借り切って撮影が行われるということで、私とレーナは朝早くからその高校にやってきていた。

 今回撮影するのは、レーナを主人公として高校生たちの恋や友情をテーマにした青春ドラマらしい。全三話の予定で、レーナのお相手となる俳優は以前戦隊もののサブリーダー役をやっていたイケメンさんなのだそうな。まー私は知らないんだけどね。


 深夜ドラマなだけあって予算不足なのだろうか、撮影は今日一日で一気に行ってしまうとのこと。エキストラの高校生たちもこの学校から(ボランティアで)調達しているそうで、なんとも効率的というか、コストカットを徹底しているというか……。

 でも、今じゃトップアイドルの一人となったレーナやイケメン俳優を間近で見れるってことで、ずいぶんとエキストラ応募は多かったみたい。あー、私を見たいって子もいるかもね? いないかな? いなかったらちょっと悲しいんだけど。


「ちょっとアカル、なにぼーっとしてるの? ちゃんとセリフは覚えてきた?」

「……ぼーっとしてないし! セリフも全部覚えてきたし!」


 私が少し頬を膨らませてレーナに反論する。ちなみにセリフを全部覚えたってのはウソだ。やばい、ちゃんとセリフ覚えなきゃ。

 だけど私のウソに気づいていないレーナは、笑いながら私の手を引っ張る。


「まあいいわ。さっそくだけど監督さんとかにあなたのことを紹介するわね。ついてきて」

「はいはーい」


 たぶん初ドラマ撮影で緊張している私をリラックスさせようとしているのだろうか。妙にハイなテンションで、レーナは私をエスコートしてくれる。

 だけどねレーナ、私はそんなに緊張してないよ? どう見てもあなたのテンションの方が変だと思うんだけどねぇ。やっぱり初主演ってことで緊張してるのかな?

 以前のCM撮影の時から思ってたんだけど、レーナってば案外プレッシャーに弱い子なのかもしれない。だとしたら、チョイ役とはいえ私が近くにいることで、少しはリラックスできたりするのかな? だから私を誘ったのかな? もしそうなら素直に私に甘えればいいのになぁ。

 そんなことを思いながらも、素直じゃないレーナのことがなんだかすごく愛おしいと感じたんだ。



 今回のドラマにおいて、実は私にはそんなに出番はない。予算不足のドラマの中で私は「友情出演」扱い(ギャラもすごく安い)だし、なにより演技経験ゼロの素人な私に大役が務まるわけがない。

 そんなわけで……待ち時間がすごく長い。ありていに言うとすごくヒマだった。


「ふわぁぁ〜」

「……アカルさん、お暇そうですね」

「あーっと、セシルちゃん。あくびしてるところみられちゃった?」

「うふふ、ええ」


 控え室である教室に入ってきて微笑みながら話しかけてきたのは、現・激甘♡フルーティのリーダーである林後りんご 世知せしるちゃんだ。彼女も今回のドラマでは、クラスメイトの一人でレーナに嫌味を言う子という嫌な役で出演している。もちろん彼女も友情出演枠だ。


「セシルちゃんの出番は終わったの?」

「ええ、さっき終わりました。レーナさんにビンタされて退場です」

「あらま、そりゃ可哀想な役割だったね。大丈夫だった? 頬腫れてない?」

「レーナさん手加減してくれたから腫れたりはしてないですよ。大丈夫です」


 ヒロインにビンタされるという、非常に残念な配役なのに、嫌な顔一つせずに演じているセシルちゃんは、実は優しくてすっごく良い子なのだ。以前音楽番組で一緒になってから、それなりに仲良くなってメアド交換した子の一人だったりする。でもそのことはレーナがヤキモチを妬くから内緒なのだ、うへへっ。


「でもそろそろアカルさんの出番ですかね? 今度はアカルさんががんばってくださいね」

「う、うん。がんばるよ」


 セシルちゃんの励ましを受けて席から立ち上がろうとすると、少しバランスを崩してしまい、思わず手をセシルちゃんの肩についてしまう。


「うわたたっ⁉︎ ご、ごめんセシルちゃん」

「大丈夫ですか?ずいぶんと緊張してるみたいですけど」

「へっ? 緊張? 私が?」

「ええ、だって手が震えてるみたいですし……」


 そう言われて初めて気づいた。自分の手がまるでいうことを聞かずにブルブルと震えていることに。

 あれっ? もしかして私、ものすごーく緊張してたりする? うっそっ⁉︎ やばい、どうしよう……。


 どうやら私は知らぬ間にプレッシャーを感じていたらしい。気づいてしまうとどうしようもなくなり、震える手を必死に抑えようと努力したものの、まるで壊れたおもちゃみたいに身体が自分の言うことを聞いてくれなかったんだ。



 ◇◇◇



「はい、じゃあ本番いきまーす。3……2……1……」


 パンッ。

 カチンコという撮影器具を鳴らす音が響き、ドラマの撮影がスタートする。私の目の前には可愛らしい表情を浮かべたレーナ。彼女に向かって私は口を開く。


「よ、ようアユミ。お、おれは、おまっ、おまっ、お前のことを……す、す、す」

「カーット‼︎」


 だ、だめだーっ! また舌を噛んじまった!

 これでミスをすることついに五回目。目の前のレーナが呆れた表情を浮かべる。


「ちょっとアカル、あなた素人丸出しじゃない?」

「だ、だってそんなこと言われても私素人なんだし、仕方ないじゃないかぁ。それに、どうにも緊張しちゃってさぁ」

「緊張? アカルが? あなたにそんな人間らしい感覚があったのが、あたしにとっては一番意外だわ」


 ひどいよレーナ。私だって普通の人間なんだから人並みに緊張だってするに決まってる。


「だいたいさ、素人のあなたが無理して演技しようとするのがいけないのよ」

「えーっ? それってどういう意味?」意味がわからずレーナに問い返す。「演技しなきゃ撮影にならないじゃん」

「……アカル、あたしがどうしてあなたにどうしてその配役をしたか理解してる?」


 ん? レーナが私にこの配役をした意味だって?

 今回の私の配役は、女の子の身体になっちゃった男の子の役で……。あっ。


「あーっ……そういうことか」

「……わかった?」

「うん」レーナの問いかけに、私は頷く。「わかったかもしれない」


 そう、レーナは私に『地を出せば良い』と言っているのだ。つまり、男だったころの自分のつもりで演じれば……あー、うん。なんかやれそうな気がしてきたぞっ!

 よーし、そうと分かれば迷いは消えるってなもんだ。私は気を取り直して改めて台本を読み直したんだ。



 ◇◇◇



『なぁアユミ、俺じゃダメなのか?』

『な、何言ってるのよ。エミルは女の子じゃない?』

『いや、実はね。俺の中身は男の子なんだよねぇ〜。なぜか女の子の身体になっちゃってさ。だから男である俺がアユミのこと好きになっても変じゃないだろ?』

『いや、変よ! だってあたしたち、見た目は女の子同士じゃない⁉︎』

『そう固いこと言うなよ、アユミは別に俺のこと嫌いじゃないんだろ?』

『そ、それはそうだけど……でも……』


 --戸惑うアユミ。だがそんな二人を遠くから見つめるダイゴの視線があることに、彼女は気づかないのだった。


 --【次回に続く】




「うっわー、なにこれ。すっごいね!」

「ほんと、迫真の演技だね! 初めてのドラマ出演とは思えないよ」


 スマホに保存していた私とレーナが絡むシーンの動画を見て、リーヤといおりんが感嘆の声を上げる。


「そ、そうかな?」私としては非常に気まずい思いを抱いたまま、とりあえず誤魔化すように適当に返事を返す。「素人丸出しの下手な演技だと思うんだけど……」

「そんなことありませんよ! アカルさんの演技、すごかったです! わたし、なんだか見てて胸がドキドキしましたもん」


 顔を少し上気させて興奮気味に食いつく羽子ちゃん。その横でエルフィも無言で頷いている。うーん、なんとも反応に困るなぁ。

 なにせ今回の撮影で、私は全く演技をしていない・・・・・・・・のだから。



 今回、私とレーナが出演したドラマは、深夜の時間帯の放送にもかかわらずそこそこの人気を博した……らしい。しかも私の男の子の演技の評判がぼちぼち良かったみたいで、監督からは褒められたし、ネットでも『アカルちゃんの演技、すごくね?』『まじで男の子みたいだよ』『なんか二人の関係がリアルなんですけど』などと好評を得ていた。


 でも言われてる方の私としては非常に気まずい思いを感じていた。なにせ私はなーんにも演じてない・・・・・んだから。

 今回の撮影で私がやったのは、男の子を演じるんじゃなくて、男だった頃の自分を思い出して、そのまんまの態度を取ること。すなわち自然体で飾らずにセリフを口にしたわけだ。一応、一人称を「俺」に変えはしたけど、それ自体つい最近まで実際に言ってたことだから、口に出すことになんら違和感はなかったんだ。

 そんなわけだから、実に気楽に撮影を終えることができた。監督さんや撮影スタッフからもすごく好評を得たんだけど、なんかズルして乗り越えたような気がして……んー、正直褒められても微妙なんだよね。

 実際レーナからは「あんな演技、サギですわ」って言われちゃったんたけど、事実その通りだと思う。あれは演技ではない。--″素″だ。




 そんなことを思い出していると、奥にいたアキラがニヤニヤしながら私の肩に手を置いてくる。


「アカル、本当の男の子みたいな演技だったね。まるで素が出てるみたいだよ」

「……ちょっとアキラ、それはないんじゃないの? 頑張って演じたってのにさ」

「ははっ、ごめんごめん」


 笑いながらアキラは謝ってきたものの、まるで真実を知るかのような言葉にちょっと焦ってしまう。そんな気持ちを隠すように、私はアキラの頭を軽く小突いたんだ。


 いやー、今回の一連の撮影で、演じることの難しさはしみじみよーく分かったよ。何人ものキャラを使い分けられるレーナはすごいなーって実感したし、正直者の私には向いてないって感じたから、ドラマはもうこりごりだね。


 だから、友人たちの演技への褒め言葉を気まずい思いで聞き流しながら、なんだかお休みが欲しいなーって現実逃避なことを考えてたんだ。

 うん、そうだ。休もう! どうせお休みをもらうなら、釣りがいいな。海は……悪くないけどこの前も海でイカ釣りだったし、たまには海から離れて初心に戻るのもいいよね。

 とすれば、今回のターゲットは……。



 〜〜 次話、日野宮あかる世界を釣る『◯◯◯◯◯◯編』に続く? 〜〜




ということで、ノリと勢いで「世界を釣る」シリーズをもう一本書く予定です!

さーて、ターゲットは何でしょうか?分かるかなぁ(≧∇≦)

まだ書いてませんが、近日中に更新予定です( ^ω^ )


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