23話:王様ゲームは二十歳になってから
今俺達は城の玉座の間にいる。
ちなみに前回のリンチの傷はミオに治してもらった。
久々に三途の川をみたな、うん。
それで……なんだっけか?
あ、前回の矢文の件で俺達は国に半強制的に協力することになった。
「さて、諸君。
これより我が城の宝庫に24時間体制で警備を行ってもらう」
今玉座に座りながらしゃべっている人は王様らしい。
まぁたしかに大物オーラが漂っている。
「では各々警備にあたってくれ。それと、生島という者とその一行は残ってくれ」
お、王様から直々にお呼びだしって……
メイドさん達がぞろぞろと持ち場につく中、俺達は更に玉座に近付く。
「君が生島くんかね?」
さっきと違い普通のおじさんの声。
「は、はい」
俺の方は若干緊張気味だ。
「すまなかった。娘のミオが迷惑をかけたようで」
いきなり頭を下げる王様。
って、ええ!?
「あ、頭を上げて下さいよ。別に迷惑なんかじゃありませんでしたよ」
どっちかというとバーサク化した志摩さんやメイドさん達の方が迷惑だったよ。
「そう言ってくれるか。ありがたい。
ところで君達の旅は急ぐものなのかね? 違うなら是非警備を手伝ってほしいのだが……もちろん警備の成功失敗に関わらず報酬は出そう」
「もちろんいいですよ」
矢文に書いてあった神器が気になったからな。
それに報酬も出るなら一石二鳥だ。
「やってくれるか。では君達はミオの部屋周辺を警備してくれ。娘の身に万が一があっては困るのでな」
「わかりました」
そう言って持ち場につこうとすると、
「ちょっと待ってクダサイ」
良平が止める。
「どした? 良平」
「王様。私は自由に動いていいですカ? 少し気になることがありますノデ」
気になること?
「まぁいいだろう。城内を自由に動けるように取り計らっておく」
「助かりマス」
そして俺達は良平と別れ、ミオの部屋へ向かった。
良平は何を聞いても曖昧に笑うだけだった。
「ミオ〜? いるか?」
ノックして入る。
「北斗さん、姫も。そ、そちらの方々は?」
あ、ミオはバーサク化した志摩さん達しか知らないよな。
「あぁ、知っているだろ? 志摩さんだ。今回の件でミオの警備に当たったんだ」
「そうだったんですか! どうぞお入り下さい」
俺達を部屋に招き入れるミオ。
中は意外にも質素な感じだった。
もうちょっとシャンデリアとかあると思ったけどな。
「私は質素が好きなんです。
あといくら王族でも部屋にまでシャンデリアはないと思いますよ」
口に出てたか。
でもまぁそうだよな。
さて、約束の時間まではあと9時間か……
ぶっちゃけヒマだな。
「なぁみんな!」
水橋から声があがる。
「ヒマだろ?
じゃさ、これやろ! これ!」
ごそごそと割り箸を取り出し、
「姫様と親睦を深めよう! 王様ゲーム」
「「……」」
下心丸見え。
親睦を深めようって、なんで王様ゲームなんだよ。
「あれ? みんなやらない?」
やるわけねぇだろ!
「面白そうですね! やりましょう!」
ええ!? ミオ?
「だって私のためにやってくれるんですよね」
違うって、そいつは自分自身の欲望のために……
「さっすが姫様!
さぁ、やりましょう」
みんなを集める水橋。
「私は遠慮しておく」
さっすが志摩さん。大人だ。
「私が下になるなど考えられないからな」
………………
「では、始めよう!」
各々がしぶしぶと割り箸をひく。
「王様だ〜れだ?」
ノリノリだ。水橋のやつ。
……俺は2番か。
「お? 早速俺だ」
水橋のやつ仕組んでたんじゃ。
「じゃあ、出始めに3番が2番にキスで」
2番って俺じゃねぇか。
つぅか男女比おかしいだろ。
「あ、3番私です。
ところで何をするんですか?」
ルールを知らずに参加したのか。ミオ。
「王様ひいた人の命令に絶対服従するゲームだよ。
今はミオさんが2番の人にキスするんだよ」
「まぁ!!」
上品に驚くなよ。
「で、3番は?」
………………
「私は4番だよ」
「私は1番だ」
「「ということは」」
一斉に視線が集まる。
「俺だよ」
くそったれ。
もうどうにでもしろ。
「じ、じゃあ私が北斗さんにキスを?」
「そうだよ」
「じゃあ失礼します」
頬に当たる柔らかい感触。
…………はぁ。
最近、女難の相が出てる気がする。
時間が移り、約束の時間まであと10分となった。
王様ゲームはなかなか続いた。
もっとも何故か水橋が命令に関わることはなく、どんどん元気がなくなっていったが……
だがおかげでミオは水橋とも稲葉とも仲良くなれた。
良平がいなかったのは残念だったが。
「いよいよだな」
つぅかこの部屋は宝庫から離れているから大して何もしなくていいんだよな。
カチカチと時を刻む時計。
……
…………
………………
さて、ここからは私、良平視点でお送りしマス。
気になることがあって、生島クン達とは別行動をとっているわけですガ。
とりあえず約束の時間まであと1分となったのでおいおい説明したいと思いマス。
私は今宝庫から少し離れた小部屋で待機していマス。
鐘が11時を告げマシタ。
宝庫から爆発音が響きマシタ。
私は小部屋をでマス。
外ではメイドさん達が所狭しと走り回っていまシタ。
「どうなったんですカ?」
近くにいたメイドさんに現状を聞きマス。
「いきなり爆発が起きて、気付くと神器がなくなっていたんです」
でも落ち着いているあたりさすがですネ。
「分かりマシタ」
そんな時1人のメイドさんが声をあげマシタ。
「あ、あそこ!!
気球みたいなのが飛んでいます!
城門の方へ向かっています!」
たしかに気球が飛んでいて、人がぶら下がってイマス。
メイドさん達は一斉にそれを追っていきマシタ。
……………………
私は城門とは反対の裏口に来ていマス。
ほとんどさびれたそこは使っていないということを表してイマス。
私はある人物を待ってイマシタ。
足音がしマス。
「ここで待っていたら来ると思いましたヨ」
そう、私は泥棒の正体を知ってイマシタ。
「イリエさん?」
メイド姿のイリエさんがあからさまに目を見開きマシタ。
「何故、あなたが」
「FBIの息子をなめないでくだサイ」
別にどうでもよかったんですガ、軽く自己紹介のように言いマス。
「あなたはまず爆発を起こし、煙に紛れて神器を取り、メイド姿になって囮と反対方向に逃走を企てたんですネ」
気球を見つけたのはおそらくイリエさんでしょう。
「驚いたよ。
まさか全て見破られるなんて」
「イエ、あなたが盗んだ物をどこへやったかは分かりませんデシタ」
神器は触れれば担い手になるはずデス。
「それは私特有の魔法、伸縮魔法を使ったんだよ。こんな風にね」
そういうとイリエさんの手から布で包まれた長いものが現れマシタ。
「なるほど、そういう知識はありませんでしたネ」
「ちなみに神器は2つ持ってるよ」
出会った時の会話を思い出しマシタ。
『ナタはウエチストのどこかにあると言われていました』
過去形になっていたのを気になったことを覚えてイマス。
そういうことでしたカ。
「私達は隠れ蓑にちょうどよかったわけデスネ」
「まぁ、ね。
で? どうする?
私を捕まえるの?」
あまり考えていませんデシタ。
「そうですネ。
このまま捕まえるのが普通ですガ、これからは私達の旅にはついてこないんデスカ?」
「そうね。
あ、でも魔城の宝は興味あるなぁ」
「ならばついてきてクダサイ」
情報を多く持っているのは貴重ですからネ。
「分かった」
「あと、神器は元の位置に戻しておいて下さいネ」
「ええ〜!?」
露骨に嫌がるイリエさん。
「いいんですヨ、あなたの顔写真が世界中に出回っても」
ちょっと卑怯な手ですガ。
「うっ」
「今までよりかなり動きにくくなりますヨ?」
「……分かったよ」
うん、一件落着ですネ。
んぁ? 朝か。
結局11時になるのを待たずに寝たのか。
……なんか、情けねぇ。
みんなも寝てるな。
「姫、ミオ、起きろ」
2人の頬をペシペシ叩く。
こうしてみるとほんと双子みたいだな。
…………はっ!?
やばいやばい。
最近俺発情期なんか?
「何言ってんの?
北っくん」
こういう時に限って口に出るんだよな。
「発情期なら私を好きにしていいよ?」
……さて発情ネコは置いといて。
「ありゃ? また無視?」
やかましい
「ミオ。ミオ。起きろ。朝だぞ」
「あと5分」
寝言を言うミオ。
「ミオ、その5分ってのは絶対1時間以上になるんだぞ?」
俺は目覚まし時計にそう言って、気づいた時には1日が終わってたぞ?(実話)
「や〜! こんにゃくいやぁ!」
だからこんにゃくで何があったんだよ?
「はっ!? 北斗さん。おはようございます」
「おはよう」
水橋と稲葉も起きていた。
残るは志摩さんだな。
……あきらめよ。
「みんな、とりあえず顔洗って玉座行くぞ」
昨日のこと気になるしな。
その後、顔を洗っている時に水橋が志摩さんにいたずらしようとしてボコボコ(志摩さんは寝たまま)にされた。