21話:一緒の顔って3人はいるらしいよ
今回は次のフリなので短いです
大会から2日経ち、俺達はまだ魔法都市にいた。
理由は簡単。
今頃志摩さん達は皿洗い頑張っているんだろうなぁ。
志摩さんは金に関してはきちんとけじめとる人だし。
「北っくん。おはよー」
まだ寝ぼけまなこで降りてきた姫。
「お? おはよう」
姫はきょろきょろとまわりを見て、
「しずちゃん達はまだなの?」
しずちゃん?
……あぁ稲葉か。
「まだだぞ」
「そっか。
じゃあ北っくん。
また市場いこ!」
「いいけど。なんで?」
昨日も行ったのに。
「だってこんなにゆっくりできるの久しぶりだよ?
それにこの世界、珍しいものいっぱいだし」
たしかに。
「そぉだな。
じゃあ朝飯食べたら行くか」
「うん!」
すごい笑顔だな。
「いらっしゃい!
いらっしゃい!
ただいま全商品9割引だよ!」
9割引!?
なんだ? 閉店セールか?
「買った方にはもれなく呪詛のネックレスもついてくるよ!」
明らかに呪われてるものつけるなよ……
9割引ってこれを売りたいだけなんじゃ……
「北っくん、お得だよ! 9割引だよ!」
「食いつくな!」
ポカっと頭を叩く。
「あは、冗談だよ!」
目はマジだったような。
「すいません」
は〜……もう無視。
「すいません」
声の方をチラッと見る。
フードを目深にかぶったいかにもうさんくさい輩。
「姫、もういいだろ? 帰るぞ」
とりあえず無視する方向で。
「すぅみぃまぁせぇん!!」
なんだろ?
久しぶりにゆるい空気にどっぷり浸かったからか、かけられた声に反応しそうになる俺がいる。
「なんですか?」
姫、何故お前が応える?
「だって北っくん、1人でぶつぶつ言ってたから」
口に出てたか。
「はぁ、やっと反応してくれました」
フードをかぶったまま安堵のため息をはく誰かさん。
「んで? なんですか?」
「ああ、すいません。あの……とりあえず場所を変えていただけないでしょうか?」
? なんでだ?
「まぁ、ちょうど宿屋に帰るところだったから」
「助かります」
今気付いたけど、声は女だな。
姫の声に近い。
で、宿屋。
俺の部屋にいる。
俺と姫はベッドに腰掛け、誰かさんはイスに座っている。
「とりあえず、そのフードを取って下さいよ。さすがに怪しいです」
ここに来るまでも異常なほどまわりを警戒していて、かえって怪しかったしな。
宿屋の人には愛想笑いでごまかしたけど……
「すみません。
……ここなら大丈夫ですよね?」
そう言ってフードをとる。
……は?
「わ、私の顔がある」
目の前には姫そっくりの顔。
でも髪は金色だな。
「はい、私もびっくりしました」
「それで、名前は?」
「ヒラネ=ミオです」
へぇ。
ん? 姫が目をめっちゃ見開いているぞ。
「も、もしかしてお姫様!!?」
何言ってんだ?
「あ、はい」
へ?
「北っくん! 何ボケーッとしてるの?
本物のお姫様だよ!?」
「何言ってんだよ。つぅかここに城なんてあったか?」
「北っくんこそ何言ってんの?
大会の後に王様が挨拶してたじゃん!
ヒラネ=キオって王様が」
聞いてなかったな。
「もう!!」
「つぅかお前のせいだろ?」
「なんで?」
……こいつ。
恐るべし天然。
「まぁいい。
んで、お姫さん。
俺達に何の用?」
「あ、はい。
折り入ってお話が」
「「何?」」
声が重なる俺と姫。
「あの……私を仲間に入れて下さい!」
「「……」」
え? 仲間に入れて?
「あの……え?
仲間に入れてって、なんで?」
あまりの突然さに頭が上手くまわらない俺。
「私は今の生活に飽きたんです。だから……」
理由はありきたりだな。
「ちょっと落ち着いて下さいよ」
なだめようとする俺。
「すいません!」
そういって抱きついてくる姫さん。
なんだよ? この突然さは。
「あ、ずるい!」
おい姫、そこは普通嫉妬に燃えるんじゃないのか?
便乗して抱きついてどうする?
…………つぅか。
前に姫さん。後ろに姫。
や、やばい。
「と、とりあえず姫。姫さんを落ち着かせろ、な?」
俺は理性が本能に勝っているうちに全力で2人を振り切り、部屋を出た。
つぅか……
普通、似ている2人がいる時ってお約束で、立場をいれかえるってのが王道なんじゃないのか?