20話:優勝者は……?
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今回は題名と中身はあまり関係ありません(汗)
「では、いよいよ決勝戦を行いたいと思います!」
水橋との勝負から1時間。
もう陽が落ち暗くなっている。
照明が俺達を照らす。
対峙するは志摩さん。
「それでは決勝戦! 始めて下さい!」
司会の人が開始宣言をする。
だが志摩さんはいきなり口を開く。
「生島ァ。この大会で何か変わったか?」
「ああ」
いっぱい変わったね。俺のこと、水橋のこと、良平のこと。
全てがいい方向に向かったと思う。
それは全て志摩さんのおかげなわけで。
「ありがとうな。志摩さん」
志摩さんはフッと笑う。
「よくわかったようだな。おい司会。私は降参する」
へ?
「「はい?」」
会場にいた人全てが唖然としている。
こ、降参?
「なんで?」
「私の目的は達成したからな。もう用はない」
目的?
あ、俺達のことか。
まぁ、でも志摩さんは納得しても観客はよりによって決勝戦が降参で終わったわけだから、納得しないわけであって。
「決勝がそんなんでいいのかー!!」
「金返せー!!」
「武道家大会なめんなー!!」
それを聞いた志摩さんのとった行動は
「うるせぇ!!!」
逆ギレだった。
……この展開はどっかで見たな。
あ、俺がやった展開だ。
「これより第112回 武道家大会の表彰式を行いたいと思います」
結局決勝戦は志摩さんの降参で決着になった。
……今気付いたんだけど、優勝したのって俺なんだよな?
まともに戦ったのってアシナだけだから実感が全然わかないんだが。
「それでは3位。
水橋 望選手です」
巻き起こる拍手。
あれ?
いつ3位決定戦やったんだ?
「決勝戦の30分ほど前にやったんだぞ。水橋の圧勝だった」
後ろにいた志摩さんが応える。
「そうですか」
次は2位の発表だ。
「続いて2位。
志摩 静代選手」
また拍手がおこる。
「さぁ、優勝者の発表です。
生島 北斗選手です!」
微妙な拍手がおこる。
……まぁ、優勝を認めたくない気持ちは分かるよ。
俺は表彰台に登る。
「賞金と副賞の授与です!」
まず賞金を貰う。
しっかりと受け取る。
「続いて副賞の授与です」
檻が開けられて、既に起きた姫が出てくる。
姫は表情から事態を理解出来ているということが分かる。
すると姫はこちらに来ず、何故か司会に近づき、耳元で何か言う。
「おおっと!!
副賞の方から優勝者にご褒美のキスを捧げたいとのことです!」
はぁ!!?
いやいやいやいや
ちょっと待てよ。
俺は他のやつに助けを求める。
志摩さん……だめだ笑ってる。
水橋……だめだ、稲葉に夢中だ。
良平……だめだ、顔を合わせようとしない。
稲葉もだめ。イリエはいない。
……なんで?
「「キース! キース! キース! キース!」」
観客がキスコールをする。
貴様ら俺の優勝に納得してなかったんじゃないのか?
会場全てが俺の敵のようだな。
え? っていうかどうしよ?
徐々に姫が近付いてくる。
ああ……
「ヒュー!!!」
あああ……
「さて、最後に魔法城よりわざわざ足を運んでくださった王の……」
俺はあまりの恥ずかしさにあとの話を何も覚えていない。
「ったく……
ひどい目にあったぜ」
場所は変わって宿屋。
ベッドに寝ころび表彰式の悪態をついている。
町の酒場では今大会の祝勝会(?)をしている。
俺は最初ちょっといて、抜けてきた。
志摩さんの酒癖の悪さを知っているからな。
しかし、今日は色々あったな。
ドラとゴン。
水橋に良平。
……あとは選手達や観客達。
みんな燃えたな。
なんだかんだいって出てよかった。
考えてウトウトしているとドアがノックされた。
「北っくん。いる?」
姫だ。
「いるぞ。入れよ」
扉を開けて入ってくる姫。
ちょっと恥ずかしいな。
あんなことの後だと。
「「……」」
き、気まずい……
姫とこんな感じになったのは初めてだな。
「ど、どうしたんだよ? 姫」
苦し紛れに聞く。
「え〜と、ね。
その……あの……」
目が泳ぎまくってるぞ姫。
「北っくん。
ひ、表彰式じゃあんなことしちゃったけど、大丈夫だった?」
……?
「どういう意味だ?」
「だから、その……無理にキスしたみたいになったから」
そう言って顔を俯かせる姫。
俺は姫の頭に手を置き、
「大丈夫だよ。
ちょっと恥ずかしかったけどな」
姫は上目遣いで言う。
「ほんとに?」
「ほんと」
「よかったぁ」
そう言って顔がほころぶ。
…………はっ!?
俺何しようとしてんだよ。
よく考えたら今って俺と姫だけなんだよな。
だからなんなんだよぉ!!
「北っくん?
どうしたの?」
俺がどうでもいい葛藤をしていると、姫が話しかけてくる。
「い、いや」
なんで狼狽するんだ俺?
……そうだ。
「姫、これ」
俺は姫が欲しがっていたネックレスを渡す。
何故か結構値がはった。
途端に顔を輝かせる姫。
「わぁ!」
受け取り早速つける姫。
そんなに嬉しかったか。
うんうん、買った方としてはうれしいよ。
「ありがとう!
北っくん」
抱きついてくるな!
欧米か!?
……ぱくってすいません。
でも近いよ。
「ひ、姫。近い」
顔は親指一本分ぐらいしかない。
「ん……」
目を瞑る姫。
え? キスしろってか?
いやいやいやいや
無理無理。
「姫、何やってんだ」
俺の声を聞いても目を開けない姫。
くそっ。
こうなったら……
俺は目を瞑る。
俺は土壇場で気付いた。
「すぅ。すぅ」
……もしかして寝てる?
……………………
なんじゃそりゃ。
ったく……
でもどうしよ?
疲れて力がでねぇ。
もうそこのベッドで一緒に寝るか?
別に幼なじみだし、何もする気ないし。
あ、でもお約束で後から来たやつらに勘違いされるんだろうなぁ。
俺はそんなことを考えながらベッドに姫を引きずっていき、寝た。
んぁ?
もう朝か?
俺は体を起こした。
隣ではまだ姫が寝ている。
あれ?
誰も来なかったな。
ん〜……まぁいいか。
「姫、起きろ」
姫を揺さぶり起こす。
姫は体を起こすがまだボォッとしていて、目をこすっている。
「北っくん。
もう朝? なんで私の部屋いるの?」
「お前昨日のこと覚えてないのか?」
「うん」
威張られてもな……
「ここは俺の部屋だぞ?」
姫はビシッと固まった。
「ほ、ほんとに?」
「ああ」
「……」
「心配するな。
何もしてねぇよ」
「あ、そか。良かった。あはははは……チ」
最後舌打ち聞こえたような。
「とりあえず、酒場行くぞ」
多分みんな帰ってこないということは酒場にいるはずだ。
「うん」
ええい、まとわりつくな!
「「……」」
え〜と?
俺と姫は酒場に いるわけだが。
「な、何があったんだ?」
ぐちゃぐちゃになった木のイスと机。
そして転がっている酒ビン。
もっと転がっているのは人間。
まぁ、だいたい予想していたけどな。
つぅか、水橋、良平、稲葉は未成年じゃねぇのか?
「あの〜」
呆然と立つ俺達に恰幅のいい人が声をかけてくる。
「この人達のお知り合いですか?」
「はぁ」
「良かった。
どうしようか迷っていたんですよ」
「すいません。
すぐ運びますんで」
多分これが気になっていたんだろう。
「いえ、そうじゃなくて。代金の方を……」
「…………あ、よく見ると知り合いじゃねぇや。
すいません、この人らに皿洗いでもさして代金返さして下さい。じゃ!!」
主人の答えも聞かず姫の手を取り一目散に逃げ出した。
「はぁはぁ。
いいの? 北っくん」
「まぁ、バカしたあいつらが悪いんだよ。自業自得だ。」
多分、あいつらに殺されるだろうけどな。
とりあえず、ここにもう少し滞在することになった。
この時やめておけばよかったと後悔することになる。