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14話:食べ過ぎ飲み過ぎには注意

「なぁイリエ」



山を登り始めた俺はイリエに疑問を言う。



「この神器の能力とかって分からないのか? 退魔だけじゃなくて」



なんか衝撃波だせるしな。



「詳しいことは魔法都市にある文献に載っていますので、私からはなんとも……」



つまりそこに行けばいいわけだな。



……まぁ通り道か。


「とりあえず早く登りきろうぜ。

あとどれくらいなんだ?」



「え〜……今やっと10分の1ってとこですね」



……は?

登り始めて30分はたったぞ。


どんだけ高いんだよ。



「あ、途中にはオークの巣がありますので気をつけてくださいね」



なんで登山道にそんな巣があるんだ?



「だから今はロープウェイを使う人がほとんどいませんよ」


口に出てたか。



まぁぱっぱと行けばいいんだな、うん。













ちょうど登り始めて3時間、山の中腹にさしかかったころ、辺りが殺気で充満した。



「来ましたよ。

オークの巣です」



「やっぱあるんだな……しかもめっちゃ多い」



見渡せるだけでも100をこえる数。



「しゃあねぇな」



それぞれに武器を構える。



「姫! 絶対離れるなよ!」



近くにいたオークが一匹襲ってくる。



俺はそのオークに攻撃させる暇なく喉を突き刺した。



血を流し倒れるオーク。



それを見た他のオークはいっせいに襲いかかってきた。









たしかにオークの数は多いが個体が弱いのと、こちらのメンツに広範囲の攻撃を行えるやつが多いのとでたいした苦戦はしなかった。



稲葉の攻撃方法ってワイヤーなんだな。

……怖えぇ。



しかし……



「いつまで出てくるんだ?」



そう、たしかに苦戦はしないのだが倒しても倒してもわいてくるオークにうんざりしてくる。



「これだけ大規模な群れですからどこかにボスがいるはずです」



なるほど……



「いつ出てくるんだよ?」



その時志摩さんがオークの群れの奥からズルズルと何かを引きずって出てくる。


「おい!! オークども!」



志摩さんが叫ぶ。



「人語が分かるかどうか知らないがよく聞け! お前らのボスは私の前にひれ伏した! こちらの指示に従え!」



へぇ〜……。


志摩さんボス倒したんだ。



……ってええ?!



「志摩さんボスの話知らなかったんじゃ……」



「んなもん、一番奥で偉そうにしてるやつがボスだって相場が決まってんだよ」



そういや志摩さんの趣味の一つに不良グループ壊しってあったよな……









で、オーク達は結局従順になったわけだが……



「志摩さん早く登ろうぜ」



新たなボスに祭り上げられた志摩さんは上機嫌で運ばれた果物をむさぼっている。


「シャクシャク」



シャクシャクじゃねぇよ。



「ったく、みんな行こうぜ」



「「シャクシャク」」



……………………



なんでみんな一緒に食ってんだよ。



「おいしいよ!

北っくん」



おいしいじゃねぇ!


「ほんとにおいしいですヨ」



……つっこみどころがねぇ。



「うむ、うまい」



稲葉、お前どこの美食家だよ。



「しずくちゃんと一緒ならなんでもうまいぜ〜♪」



…………こいつもしつこいな。



……つぅか俺の扱いが最近ひどい気がするんだが。



そういえばイリエは……?



……………………



あ、いた。



オークと情報交換中……



もうどうでもいいや。


俺も一緒に食べよう。



「「シャクシャクシャクシャク……」」










結局巣をでたのは夕方にさしかかったころだった。



「うう、食べ過ぎた……」


姫のやつめっちゃ食ってたからな。



「大丈夫か?」



「大丈夫じゃない」


「まったく……

あんなに食うからだ」



「うう、北っくんおんぶ〜」



「ガキか?!」



「じゃあ肩車ァ〜」


「なんでそうなる?」



「んじゃ、だっこ〜」



「……」



「……おんぶでいいです」



「……わかったよ」


「わぁい!」



はぁ。










それからはなんの騒動も起きず順調に山を登った。



まぁ水橋のやつが何に触発されたか稲葉におんぶをせまって金蹴り食らっていたが。



こりないやつだ。



「姫〜?

大丈夫か?」



「……スピ〜」



……………………



「貴様……人におぶわれて寝るとは、いい度胸だな」



……まぁいいか。



なんだかんだでこいつも疲れたんだろ。

ちょっと甘い気もするが……













だぁ〜、やっと着いた〜。



登り始めて8時間。


ようやく着いた頂上は……



「すげぇな」



そう、志摩さんが言うように絶景だった。


沈む夕陽。

地平線が霞んで見え、様々な色が景色を織りなしている。



「姫。起きろよ。

すげぇぞ」



いまだ寝ている姫を起こす。



「んにゃ……?

おお! すごい!」



「だろ?」


「苦労して登ったかいがあったってもんだねぇ」



………………



「お前はほとんど登ってないだろうがぁ!」



「や、やだなぁ。

冗談だよ」



「ったく……。

ほら、降りろ」



俺は手を離す。



「いや!」



ちょ、



「離せ。

首しまる、首しまるって!」



俺は仕方なく手を戻す。



「もうちょっと景色を楽しもうよ」



「降りたっていいだろ? それは」



「ここからがいいの!」



「なんでだよ」



「別にいいじゃん。重くないし」



「自分でいうな!」


「まさか北っくんは私が重いっていうの? 姫ちゃんショック!!」



「やかましい!」



いつまでこんな漫才させられるんだ?


まぁ反射的につっこむ俺も悪いが……



俺はあらためて景色を楽しむ。


本当に絶景だ。


温度も酸素濃度も頂上とは思えないくらい気持ちいい。



登ってきた方を見れば草原が広がっている。


降る方を見れば大きな町が転々とある。


そんなこんなで夕陽が完全に地平線に沈んだ。



「ふぅ、よかったよかった」



「さて、寝マス?」


ちょっと 寝るには少し早い気がしたがいかんせん疲れていたため、何も考えずすぐに寝た。









まだ薄暗いころに俺は目を覚ました。


この時間帯ってなんて言うんだろうな?

東雲? 暁?


まぁとりあえずだ。

俺がこんな時間に目を覚ましたのは見たいものが……



「やっぱ夕陽があんだけ綺麗だったんだから朝陽もすごいはずだよな」



俺は昨日見た位置に立つ。



恐らくもう少しで陽が昇るはずだ。



…………



まぁ、そんなに人生甘くはないわな。



しばらく待つか。



「生島さん」



ん? 誰だ?



「おお、稲葉」



「どうしたんだ?」


「いや、こっから見る朝陽はすごい綺麗だろうなぁ、って思って」



「私と一緒だな。隣、いいか?」



「ああ、いいよ」



稲葉が隣に座る。



「……」



「……」



気まず〜……


そういえばこうやって話すの始めてだ。

……何話そ?

俺この空気弱い。



「生島さん」



お、向こうから会話が。



「な、なんだ?」



「姫とは親しい仲なのか?」



姫とは仲良くなったみたいだな。


……あの服屋でか。


しかし……



「その質問はどういう意味なんだ?」



「そのままだ。

お前達2人はあまりにも仲がいいのでな」



まぁ傍目にはそう映るのか。



「ん〜、まぁ幼なじみってやつだ」



「そうか……」



「でもなんでだ?」


「いや……なんでもない」



……ピーン!!



「水橋か」



「……」



図星か。

わかりやすいやつだな。



「まぁ心配しなくてもぞっこんだから」


「……」



お〜お〜。

わかりやすいねぇ。


ん?



「稲葉!!

見ろよ。出てきたぜ!」



地平線から徐々に光が漏れてくる。



まわりが明るくなってきて、全貌が明らかになる。



うん! やっぱ絶景だ。



俺達はしばらく我も忘れて景色を楽しんだ。



「すげぇな」



「ああ、すごい」




なんだよ、稲葉って暗殺者なんかじゃなくて、ただの女の子じゃないか。


恋したり、綺麗なものが好きだったり。




「さて、みんな起こすか!」



「ああ」



さて、これからは下山だな。

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