13話:みんなが乗り気な時はとりあえず合わせよう
ちょっと短めです。
「なぁ、イリエ」
俺達は町を出て草原を歩いている。
どうやら俺達は目的地とは真逆を歩いていたらしい。
そうやって歩いていると、志摩さんがイリエに話しかける。
「なんでしょう?」
「とりあえずざっと世界の状況、地理を教えてくれ」
「わかりました。
でもなんでそんなこと聞くんです?
あなた達はどこから来たんですか?」
なかなか鋭いな。
「それはだな……」
俺達は今までのことをざっと絶命した。
「……にわかに信じがたいですね」
そりゃそうだろうな。俺だって自分で話してて信じられねぇもん。
「だが事実だ。
証拠は私達が今ここにいることだ」
「はぁ……」
「それよりさっきのことだが……」
「あ、ええ。
この世界は中央の大きな山脈、『ヒナゲシ山脈』で4つに別れています。
まず私達がいる南の『サニウス』。
東の『イーリスト』。西の『ウエチスト』。そして魔城がある北の『ノーリウス』があります」
ふむ……安直だな。英語+一文字か。
「南は野菜。
東は穀物。西は調味料。北は魔法品の生産が盛んで、それぞれ交易がなされています」
うん、北以外は一般的だな。
魔法品って……。
「やっぱ魔法なのね」
「何がですか?」
「いや、なんでもない。続けてくれ」
「はぁ……。
目的地の北にはやはり山脈を通り行くしかありません。
また北には魔城以外にも魔法都市があります。
もちろん魔城は一般的に立ち入れません」
まぁ俺らが気楽に入れるなら有馬さんが来てもいいだろうからな。
「ところで、みなさんの武器見せてくれませんか?」
「いいぜ」
しばらくしげしげと俺達の武器を見て目を見開くイリエ。
「やはりでしたか」
すいません、事態が飲み込めません。
「どうした?」
「いえ……
異世界から来たのに武器を持っているのは不自然でしたから……。話を聞くにそちらは武器なんて持ってないのが一般のようでしたから」
「「はぁ」」
まだ事態が飲み込めません。
「まさかあなた達が神器を持っているなんて」
「神器?」
「ええ。
184年前の大戦を終戦に導いた5種の神器です」
半端だなぁ。
184年って……
つぅか……
「5種類なのか?
3種類じゃねぇのか?」
「いえ、使われたのは刀、槍、銃、なた、杖の5種類ですよ」
「へぇ〜」
「現在のところ、杖は魔法都市に保管されていて、なたは『ウエチスト』のどこかにあると言われていました」
「それでこの3種類は行方不明だったってわけか」
「ええ、そうです。まさかこんなところに……
いいですか?
神器は貴重以前に退魔の力が備わっています。
持っているだけで上級の魔物は寄り付きません。
とても便利なものなので様々な所で狙われる可能性があります。
けっして離さないでくださいね」
なるほど……
ようやく有馬さんがこの武器に固執した理由が分かった。
とりあえずこれがあるだけで身は安全なのか……
「あ、大丈夫だぞ。これ、体に張り付いてとれないし」
「そうなんですか?」
「ああ」
「なるほど……
また新しい発見ですね」
ん?
「今までに前例はないのか?
あったらそれくらい分かると思うが」
「神器は大戦以降なんの機能もしないままだったんです」
へぇ。
「最後に世界の状況ですが今のところ平和そのものです」
「なるほどね」
「ちなみに具体的なルートとしては『ヒナゲシ山脈』を通り麓の『ストレイ森林』を抜け、『シベルリア雪原』を行くというルートです」
へぇ。
クロウンって嘘はついてなかったんだな。
……まぁ異世界から来たなんて思わないだろうからな。
「で、ここがヒナゲシ山脈の入り口です。
どうします?
歩きます? ロープウェイ乗ります?」
なんでそんな質問が出るんだ?
そんなの乗るに……
「歩く!!」
決まってない方がお一人いらっしゃったようで。
志摩さん、観光しにきたんじゃないんだから……
「あ〜、志摩さん?俺達はそんなことしてるヒマないの分かってる?」
「いいじゃないか。せっかく来たんだから」
観光気分だったの!?
「「なるほど」」
お、おい。
みんな何に納得したんだ?
まさか歩くとか言いださねぇだろうな?
「たしかに登った先に何かありそうですネ」
良平!
なんだ? いつからお前はアスリートになった!?
「ダイエットなりそ」
姫! 大丈夫だって。お前は十分細い!
「これも訓練か……」
稲葉! 何悟ってんだ!?
「しずくちゃんが行くなら俺も☆★」
………………
「決まりだな。
歩く!」
すいません、俺の意見は?
「冗談じゃねぇ。
俺は乗るぞ」
自己主張してみる。
「「そうか」」
……え?
みんな納得?
「じゃあ頂上で待っててくれよ」
ちょ、マジみんな行くの?
「じゃあ私はみなさんを案内しますね」
あ、あぁ……
行っちゃった。
………………
ヒュウ〜〜
風が吹いた気がした。
……………………
「待って〜!!
1人はイヤー!!!!」
俺はあわてて後を追った。