3.料理の腕前
凄く久々の投稿です。キャラの特徴とか大丈夫でしょうか……
「はーははは!出来たぞ、最高傑作だ!」
先程の爆発の直前と似たような勢いでメディが笑うものだから、ジークは身震いした。
生命の危機を回避するためにこの場から逃げ出そうかと一瞬考えたが、嗅覚を刺激する香りに判断が鈍る。
別に、化学薬品じみた刺激臭がしたというわけではない。キッチンで熱されている鍋からする芳しい香りが、食欲を掻き立てるものだったのだ。
「意外そうな顔をしているな、第一印象が大事というのは真理らしい」
器に注がれたシチューは、色とりどりの野菜が入っていて、目にも楽しい一品だった。
「はい、てっきり紫色のスライムでも出てくるものかと……」
「流石の私でもモンスターを材料にするほどトチ狂っちゃいないさ、巷じゃ魔女なんて言われているが」
魔女というより化学者では、と口にしようとジークは思ったが、魔女という言葉を発した瞬間のメディの表情が一瞬曇ったのを察して口を閉じた。
「そんなことはどうだっていいじゃないか、早く食べよう。私も腹が減っているんだ」
少し無理をするように明るく放たれた台詞で、ジークは食事中だったということを思い出す。
「はい、じゃあいただきます」
自作なのか、形の揃っていない匙でシチューをすくい、口に運ぶ。
「あ、おいしい」
「なんでそこまで意外そうにするんだ、毒は入れてないぞ」
「見た目や匂いは良くても味が塩酸だったらどうしようと思っていたものですから」
率直な感想に、メディは溜め息をついた。
「素直なのは美徳だが、正直すぎるのは感心しないぞ、自分も食べるんだ、そんな味にするものか」
それもそうだ、と遅まきながら気づいて、ジークは悪い事をしたような気分になった。
「ここまであの薬品の事を引きずられると、反省はせずとも後悔してしまうな、飲みやすいようにイチゴ味にするべきだったか」
あれをイチゴ味にできるのだろうかと、ジークは喉の奥にあのなんともいえない不味さを蘇らせつつ考え、軽い吐き気がして、それを上書きするためにシチューを掻き込んだのだった。