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世界の終わりから  作者: 灰羽 中也
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1ー8 1日目の終わり

「さっきのところでみんな訓練をするんだよ!まああそこは他の部屋よりも特別頑丈に作られてるから遠慮しないで能力を使って大丈夫よ!」


 地下訓練室を後にした俺たちは二階にあるという食堂に向かった。中は意外と広く三十人くらいならまとめて食事をとれそうだ。

 ちらほら人の姿が見え、仲良く談笑しながら食事をしているらしい。


「そういえばここには何人の人が生活しているんですか?」


「今は全部で24人だったかな?増えたり減ったりしてるからね」


「減ったり?」


「死んだのよ、ジェネシス・アークとの戦いでね」


「ジェネシス・アーク…?」


「敵の組織の名前よ。累くんも会った敵もその組織の一人よ」


「そいつらを倒せば、世界は平和になるんですか…?」


「う〜ん、平和ってのがどんな状態なのかにもよるかな。たしかに今あたし達が敵対してるのはジェネシス・アークだし、そいつらを倒せばこの戦いは終わるわ。でもそのあとまた別の組織と敵対するかもしれないし、戦いがなくなったとしても今のこの世界が平和と呼べるのかどうかはわからないわ。でもね…ジェネシス・アークは倒さなきゃならない。それだけは確かよ」


「その、ジェネシス・アークは一体何をしようとしてるんですか?」


「端的に言えば、世界の支配よ。まだ生きてるかもしれない非能力者を殺し尽くして、自分達に従わない勢力を叩き潰して、自分の権力だけが全ての世界を創り出そうとしているわ」


「世界の支配…自分たちの仲間以外を殺しつくすなんて…そんなの許せるわけない!」


「その通りよ。だからあたし達は戦ってる」


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 それから俺は会議室や救護室、資料室などを案内してもらった。

 ちなみに資料室には各地に焼けずに残っていた様々な本が保管されていた。実はこの建物内で一番重要な部屋でもあるらしい。


 まあそうだよな、もし本が全て焼き消えてしまったら人類のこれまでの蓄えてきた重要な知識が失われてしまうってことだもんな。


「さあ!ここが最後ね!じゃじゃ〜ん、大浴場〜!!」


「おお〜!お風呂まであるなんて!」


「といってもシャワーとかはないんだけどね。でもお湯は基本好きなだけ使えるから!男女で時間が分かれてるから、間違えちゃだめよ?」


「流石に大丈夫ですって」


「あれ?新人さんですか?」


「千沙登!お風呂はいってたんだ!」


 白い肌をほんのりと染め、まだ少ししっとりとしている髪を拭きながらでてきたお嬢様風の女性。どこか上気しており扇情的なものを感じずにはいられない。


「累くん!この子が袖城千沙登!この拠点の作成者だよ!」


「はじめまして。袖城千沙登です。累くんでいいのかな?」


「は、はい!咲坂累です!よろしくお願いします!」


「あれれ〜?累くんなんか緊張しちゃってない〜?私の時はそんなことなかったのにな〜?」


「そ、そんなことないですよ!ただお風呂上がりだからびっくりして…」


「ふう〜ん?ま、そういうことにしておいてあげようかな」


「ほんとですって!」


「そうだゆかりさん、あとで部屋にきて欲しいの。ちょっとアレが辛くて…」


「あ〜わかったわ。じゃあ累くんを部屋まで連れていったら行くから待ってて。それじゃあまた後で」


「ありがとう、助かります!また後で!」


 アレとはなんだろう…非常に気になるが触れちゃいけないモノな気がする。触らぬ神に祟りなしだ。


 それから二階にある個室に連れていってもらった。人数が少ない分、各自それぞれに部屋があるのはありがたい。


「それじゃあ累くん、これで案内は終了だけど何か質問はある?」


「いえ、大丈夫です!ありがとうございました」


「大丈夫よ。今日は疲れたろうしゆっくり休んでね。お風呂はさっきも言ったけど男性の時間ならいつでも使っていいし、お腹空いたら食堂に行けばな何か食べられるからご自由に!じゃあおやすみ」


「はい。おやすみなさい」



 解散し一人になると、一気に疲れが込み上げてくる。

 今日は色々会ったし、お風呂に入って寝よう。お腹は空いているが食欲はあまりない。たしか夜の部は6時から8時が男の時間だったはずだ。今は6時半、ちょうどいい時間帯だ。だれかが用意してくれていたのだろう。部屋に置かれていた着替えとタオルを持ってお風呂に向かうことにした。

お風呂に向かう途中、何人かの人たちとすれ違い軽い挨拶をした。みんなここに来た時は同じような感じだったのか、俺が疲れていることを察して手短に済ませてくれたようだった。


 一度案内してもらっただけなため、少し迷いながらもお風呂場についた。

 中までは見てなかったが、広い脱衣所があり、銭湯などにあるような棚に自分の服などを置くようだ。まだ早めの時間なのでほとんど人影はないが、一人だけ入浴中の人がいるらしい。


 すこし離れたところに着替えとバスタオルを置き、服を脱いで腰に手ぬぐいを巻いた。正確にはわからないが戦争が始まってから今までお風呂に入っていないので、もしかしたら少し匂っていたかもしれない。…気にしないようにしよう。仕方がないことだ。


 お風呂のドアを開け中に入った。ちなみに袖城さんはガラスまでは作り出せないみたいだが、他の人の割れない泡を生み出す能力で、窓やガラスの代用をしているらしい。触るとすこしぽよんぽよんしていて少し面白い。


 開けた瞬間お風呂の熱気と湯気がモワッと出てきて、体を湿らせた。

 中を見ると湯気でよく見えないが、湯船に一つの人影が見える。


 体を洗うための場所で、久しぶりのお湯に少し泣きそうになりながら体にこびりついた汚れをガシガシと洗い流すと生き返ったような感覚を得た。


 お湯の流れる感覚を惜しむようにもう一度全身にお湯をかけ湯船に向かった。


 湯船の奥側には先ほど見えた人影の男がいる。こちらを見ていなかったので「失礼します」とだけ言うと、足先から体を滑らせお湯に使った。


「ああああああ〜〜!生き返るぅ〜〜!」


 人がいるのを忘れて思わず声をあげてしまった。お風呂とはここまで心地いいものだったのか。今の俺は初めてお風呂に入った人の気持ちを味わっている。きっと彼らもこのような気持ちを抱いたに違いない。


 視線を感じそちらを見ると、先ほどの男がすこしビックリしたような表情を浮かべてこちらを見ていた。


「あ…すっ、すいません!久しぶりのお風呂だったものでつい」


「…いや」


 男はどうやら相当無口なようでそれだけ言うと、また視線を外してしまった。


 恥ずかしいな…。初対面の人がほとんどなんだからあまり気を抜きすぎないようにしないとな。


 と、気を引き締めようとするものの、少し経つとまた湯の心地よさに口角が下がってしまう。


 しばらくそんな風に天国を堪能していると、頭がボーッとしてきたのでそろそろ上がろうとしたその時だった。


「あっ、あれ?」


 視界が斜めに傾いていき、体の自由が効かなくなった。


 次の瞬間俺はバターンと床に倒れ、気を失ってしまったのだった。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 目を覚ますと、そこは知らない天井だった。どうやらのぼせて倒れてしまったらしい。

 ふとすると、頭がヒンヤリと冷たいことに気づく。先程の男が額に手を当てているようだった。


「あ、あの…」


「…まだ動くな。あれだけ盛大に倒れたんだから安静にしていろ」


「ありがとうございます。あの、この冷たいのは?」


 男は少し喋るとまた視線を逸らしてしまった。

 この冷たい能力の正体を聞くと「俺の能力だ」とだけ言って黙ってしまった。


 それからすこしそのままの体勢でいると


「もういいだろう。何か違和感があったら叶に見てもらうといい」


 と言い、男はお礼を言う間もなく去ってしまった。


 無口でぶっきらぼうな人だと思ったが、その反面優しい人なのもわかった。


 俺も服を着てお風呂場を後にした。一応ゆかりさんの所に行こうとも考えたが

 能力には体力を使うといっていたし迷惑はかけない方がいいだろう。


 特段体に異常も感じられなかったため、真っ直ぐに部屋に戻った。


 部屋に入りベッドに入ると、疲れていたのか今日会ったことを思い返す隙もなく寝入ってしまったのだった。

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