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世界の終わりから  作者: 灰羽 中也
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1ー7プリトウェン

 神宮響介がいる部屋はこの建物の奥にあるようだった。

 それまでの道のりでは、元々そこまでの人数がいないのか、それとも外出しているのかあまり人影を見かけることはなかった。


「へえ〜、累くんって高校三年生なんだ〜!」


「はい、推薦で大学も決まっていたところだったんですけど…はは」


「それは残念だったねえ、まあでも命があっただけめっけもんってことだよ!」


「そう、ですね」


「あはは〜、な〜んか暗くしちゃったね!でもほら!もう着くよ!そんな暗い顔してたらせっかくのイケメンが台無しだぞ!」


 バアン!


「いっっったああぁぁ!?」


「うひゃ〜、叶の紅葉はいてぇからな…馬鹿力のくせに手加減ってもんを知らねえんだこいつは。あーあ、背中真っ赤になってら」


「なによ!元気付けようとしてあげたんじゃない!」


「程々ってのを学んだ方がいいぞ、お前は」


「いてて、でも気合入りました。ありがとうございます、ゆかりさん」


「おっ、いいね。かっこいい顔つきになったよ累君。それでこそ男の子だ!」


「はあ…よし行くぞ」


 そんなやり取りをした俺たちは、建物の三回奥にある重厚な扉の前にたどり着いた。

 竜二がその前に立ってドアをノックすると中からは若い男の声で「はい、どうぞ」

 と聞こえた。


 重い扉を開くと中には大きな机とその奥の椅子に座る男の姿が見えた。


「竜二さん、おかえりなさい。食料調達のお仕事お疲れ様でした。それで…そちらの方が新しい仲間ですか?」


「ああ、そうだ。累、自己紹介を」


「あっああ!えっと咲坂累と言います。18歳です。」


「累くんだね。竜二さんから聞いているかもしれないけど、僕の名前は神宮響介。一応この‘’プリトウェン‘’のリーダーをやらせてもらっているよ」


「プリトウェン…?」


「プリトウェンというのは、このチームの名前だよ。かのアーサー王が持っていたと言われる盾の名前が由来なんだ」


「響介、とりあえず必要なことだけ話してくれ。報告がある」


「そうですね。竜二さんも軽くはありますが怪我なされてるようですしね。ゆかりさん、治療をお願いできますか?」


「わかったわ。竜二、こっちに来て」


「こんくらい平気なんだけどな」


「いいから来るの!治癒師に逆らうと後が怖いわよ!」


「お前が怖いのは治癒より、暴力なんだがなぁ」


「何か言った???」


「いや、なんでもねえよ。あ〜あ、治癒師様の治療を受けられて俺は幸せだな」


「その減らず口叩けないようにしてあげるから早くこっちに来なさい!!!」


「相変わらずお二人は仲はいいですね。さて、累くん」


「あ、はい!」


「我々プリトウェンは累くんを歓迎します。遠慮せず何でも言ってくれてかまわないよ。それじゃあ累くんの部屋とその他の施設を案内してもらいましょう!ゆかりさん!治癒は終わりましたか?」


「あっ、うん!今竜二にきつ〜いお灸を据えてたとこ!」


「はは、程々にしてあげてくださいね。累くんに空いている部屋と、各施設を案内してもらえますか?」


「了解!じゃあ累くん行きましょう!竜二!あんたへのお仕置きはまだ終わってないからね!」


「へいへい、あー怖い怖い。累、また後でな」


「ああ!」






 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「それで、報告っていうのは敵のことですね」


「ああ、名前はローガン=マッケンジー。人狼化の能力を持っていた」


「そうですか…情報規制には気を使っていたつもりだったんですけど、竜二さん危険な目に合わせてしまいすいませんでした」


「バカ、そういう時のために俺が行ってんだろ」


「さすがプリトウェンの副リーダーですね。頼りになります。しかし秋葉原付近で出くわしたとなると、ここに相当近いですね。警戒を強めた方がよさそうですね」


「ああそうだな。拠点が見つかるのも時間の問題かもしれない。ただ大したことなく相手の戦力を削れたのはラッキーだったな」


「累くんにも怪我が無くて良かったです。竜二さんがついていたので、まあいらない心配かもしれませんがね」


「買い被りすぎだ」


「…累くんの能力は分かりますか?」


「いや、記憶をなくしていて能力の概要も使い方もわからないらしい。訓練してみるしかないな…ただ…」


「ロストデイから3日も立って一人で生き残れていたというのは、少し妙ですね」


「何かしらの心当たりはあるようだったが、話したがらなかった。まあ追い追いやっていくしかないな」


「そうですね。竜二さん、累くんの訓練も含めてその辺りお願いできますか?」


「ああ、わかった」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



俺はゆかりさんに連れられて、プリトウェンの拠点内部を案内してもらうことになった。


「じゃあ累くん、施設の中を案内していくね!まずは地下一階にある訓練室からね!」


「ここ、地下まであるんですか?」


「そうだよ〜千沙登ちゃんの能力は凄いんだから!」


「袖城さんって方ですね。この建物を作ったっていう」


「そうそう!お嬢様みたいなね〜可愛らしい女の子なの!」


「そういえばゆかりさんは治癒の能力なんですね」


「そのとおり!ここにはす〜ぐ怪我するバカ男たちが多いからもう大変なんだよ〜」


「治癒ってのはどのくらいまでの傷を治療出来るんですか?」


「う〜んとね、治癒だけに限らないんだけど、能力ってのは体力を消耗して発動するの。特にその中でも私の治癒とか、他人の体内にまで働きかける能力は消耗が激しいんだよねえ…だから致命傷とかじゃなければ大抵の傷は治せるけどすんごい深い傷とかだとそんなにたくさんは無理かなぁ。あとは病気は完全な治療は難しいの。免疫力を高めて症状を緩和させたり失った体力を多少なら回復させられるけど、って感じかな」


「それだけすごい能力なら医者要らずって感じですね!」


「う〜ん、それが実はそうでもないの。私に医療の知識はないし、特に病気とかだとそれがどんな症状で、どんな治療が必要なのかがわからないと効果は薄いんだよねぇ。だから万能ってわけじゃないよ」


「なるほど…難しいんですね…」


「そうそう、おっ着いたよ!ここが訓練室!今使ってる人は…おーい!オスカー!」


 ゆかりさんが声をかけた方向を見てみると、そこには一心不乱に剣を振る金髪の外国人の青年の姿があった。振るう剣のキレは凄まじく、剣先は素人の俺では視認することさえ困難だった。


「綺麗…」


「おっ、累くんも男の子だねえ。やっぱりああいう風に剣を振って見たいとか思ったりするの?」


「はい、やっぱりそうですね…でもあの人のは…」


「おお、叶か。どうした?そこの少年は…?」


「この子は新人の累くん!累くん、こっちは私と同じ幹部の一人のオスカーだよ!」


「オスカー=エバンズだ。よろしく」


「咲坂累です。よろしくお願いします」


 オスカーはその美面を崩すことなく手を差し出してきた。

 日本に生きるとなかなか握手をする機会はないため少し戸惑いながらもその手を握った。


「!」


 華奢そうに思えたその手はとても広く指には大きい剣ダコができていた。手の平の皮は分厚く、何年も剣を握っていることがよくわかる手だった。

 よく見てみれば線が細いと思っていたその体はとても引き締まっており、一朝一夕で作り上げられるようなものではなかった。


「指の長い、いい手をしているな。技術はともかく剣を振るのには適している」


「俺も…貴方みたいに剣を振れるようになりますか?」


「ん…?ああ、訓練すればな。もっとも私の剣など人様に見せられるほど上等なものではないが」


「そんなこと、ありません。貴方の剣は美しかった。俺は素人ですけど、それでも凄いことはわかるくらいに」


「そうか…そう言ってもらえるのであれば長年鍛え続けた甲斐はあったな。君が剣術を習いたい時は私に言ってくれ。いつでも相手になろう」


「はい!よろしくお願いします!」


「あらあら、男の子は仲良くなるのが早いねえ」


「仲がいいわけではないが…まあまた会おう咲坂。私は訓練に戻る」


「はい、ありがとうございます」

 

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