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世界の終わりから  作者: 灰羽 中也
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1-18 本当の自分

「美東…凛華…!?」


「そういうことか…クソッ!」


「まさか竜二さんが洗脳されるなんて…!」


「あァ?いやいや、洗脳なんかじゃねえさ。凛華様はな、俺に本当の自分を気づかせてくれたんだよ」


「本当の…自分?」


「そうだ。子供の頃、虫をむやみやたらに殺したりしたことは無いか?アリの巣に水を流し込んでみたり、とんぼのはねをちぎってみたり、な。」


「…それがなんだと?」


「それこそが人間の本性なのさ。大人になって擬態を覚えただけ。理性で本性を押さえつけているだけ。俺達は生きるためですらなく、遊びとして他の命を奪える、この世で最も残酷な…生き物だ」


「…」


「だからこそ俺は、俺達は残酷を嫌っていた。自分が怪物なのだと、皆にバレるのが恐ろしかったから。この本能は、隠さなければならないものだとそう教わったから。だから、誰もが弱者のふりをして皮を被っている。でもそんなのは馬鹿げた話だ。法も国家も何もかもが崩壊したこの世界で、理性なんてものになんの価値がある?人を殺めることになんの罪がある?」


「だからって…自分の仲間を殺すのか」


「別に珍しい話じゃないだろう?交尾の後に片割れを食いころす虫の話などよくある事だ。それに比べてみればたかが同じ組織に属していただけのものなど、路傍の石と何の遜色もない」


「…今のあんたには何を言っても無駄なようだ。だったら力尽くでも連れて帰らせてもらうぞ」



透と竜二の間に、無言の緊張が走る。

ちさとは竜二に対して攻撃をすることに躊躇いを感じているようだが、いざというときの覚悟は決めたようだ。


唇はギュッと結ばれ、表情は固い。


「…袖城さん。無理なようなら俺だけでやる。この人相手に中途半端な覚悟で向かったら、命はないぞ」


「…いいえ、やります。竜二さんは私達の大切な仲間ですもの。敵に奪われたのならまた取り返すだけです」


「ならいい。…相手は違うが、事前に話しておいた通りにいこう。パターンBだ」


2人は横並びに立ち、竜二に向かう。

一触即発の雰囲気が流れ、竜二もまた戦闘準備を整えたようだ。


「さあ…いくぞ!!」

氷の槍(アイシクルランス)!」


透が空気中に氷の槍を作りだし、打ち放つ。

それを竜二が避けると、それを狙ったかのように千沙都が砂の弾丸を放つ。


大地の弾丸(グランドバレット)!」


大抵の技は技名を唱えなくても放つことは出来るが、能力の使用にはイメージが重要なため、能力と技名をリンクさせ唱えることは威力や速度に多少なりとも関わってくる。


格上である竜二を相手取るには少しの油断もならなかった。技名を叫ぶことで相手に技の推測をされてしまうが、元より竜二は仲間。こちらの手の内をある程度知っている相手に技名を隠しても大した効果はないだろう。


素早い身のこなしで二人の攻撃を避ける竜二だが、流石にそう簡単には攻勢に移ることは難しい。


透は地面にしゃがみこみ、地に手をつけている。


「袖城さんはそのまま砂の弾丸を!」


「わかったわ!」


千沙都は、地面にある砂をそのまま操ることも出来るが、透と同じように砂を生み出し攻撃することも出来る。そのようにして生み出した砂は通常のものよりも体力を消費するが、その分威力が高かったり、操りやすかったりする。


次々に放たれる砂の弾丸は、まともに受ければ警察のゴム弾以上の威力はあるため、殺傷力は低くともそこまで弱い訳では無い。


ただ竜二は避けきれないものは手のひらで撃ち落とすようにして直撃を防いでいた。よく見れば掌にわずかに衝撃を発生させて、威力を限りなく減衰させている。


「あれだけの数を打って一発も当たらないとは…化け物かあの人は…!!」


しばらく大人しくしていた透も、千沙都と同じように、掌に氷の礫を発生させ打ち出し始めた。

砂と氷が荒れ狂う戦場の中で、まともに当たることなく避け続ける龍二の姿はまさしく神業と呼べるだろう。


氷の礫は砂の弾丸よりも威力が高く、また見えづらいにもかかわらず、それでも竜二には当たらない。

先程よりも速度を増し、全ての攻撃を避け続けている。


「…おい、お前ら…これだけか?」


竜二はそう言うと、全面に大きな衝撃波を打ち出し、全ての弾丸を弾け飛ばすと同時に二人を一瞬怯ませた。


「くっ…」


「きゃあっ!」


「猿の一つ覚えみたいにバカスカ打ってりゃそのうち当たると思ったか?透が何か小細工をしてたみたいだが…遊びは終いだ。今度はこっちから攻めさせて…もらうぜ!」



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