1ー17 裏切り
透&ちさと視点
2人は敵影が確認され、竜二が向かったとされる地点へと向かった。
道中は特に何事も無く、人の気配も戦いの匂いもしない、平和な道のりだった。
まるで非常事態など起きていない、そんな空気。
だが、幹部として戦ってきた2人の勘は、これから何かが起こることを鮮明に感じとっていた。
そのため道中に二人の会話はほとんどなく、張り詰めた雰囲気のままであった。
「静か、だな」
「ええ…静かすぎるほどに」
「気を抜かない方がいい。間違いなく何かがおかしい」
「そろそろ、目的の地点のはずだが…」
「なにも…ないですね」
「戦闘の跡も、竜二の痕跡も…」
「よお」
「「っ!?」」
「何してんだよお前ら?」
「竜二さん!?」
「無事だったのか!?」
「無事…?はは〜ん、お前らさては俺がやられたと思って、生意気に助けに来やがったな?ところがどっこい、俺ァ見ての通り無事だよ」
傷一つないその体をみて、ちさとはホッと胸を撫で下ろす。
「な〜んだ、よかったです!竜二さんさんが無事で!」
そういうちさとは竜二に向かって小走りで近寄る。
「待て!」
「…透くん?」
「竜二、無事ならなんで帰ってこなかった?」
「…少し嫌な予感がしてな。この辺りを張ってたんだよ」
「透くん?何言ってるの?竜二さんが無事で良かったじゃない」
「それならそれで、報告するなりなんなり、あんたには無事を伝える必要があったんじゃないのか?いつものあんたならそうしたはずだ。何故そうしなかった?」
「あー、うっかりしてたんだよ。忘れることくらい誰にだってあるだろ?」
「意外と几帳面なあんたがそれをするとは思えないな。なにより、あんた、いつもより体温が高いぜ?」
「…?それがどうした?」
「俺は氷系の能力のせいか、人の体温に敏感でね。それで人は嘘をついている時に体温が高くなる」
「…」
透のその言葉を聞いて、竜二の目付きはいつものダルそうなものから、キッと睨むような目付きに変わる。
「…竜二、さん?」
「響介やゆかりならまだしも、お前に見抜かれるとはなぁ、俺もまだまだってこったぁ」
「やっぱり…」
「バレちゃあしょうがねぇ。ここで、消えてもらうぜ」
「っつ!?」
竜二は足にグッと力を込め、こちらに飛びかかってくる。
「そんな…!?竜二さん!?」
「袖城!今の竜二はどこかおかしい!敵だと思え!」
竜二が殺気を剥き出しにして襲い掛かってくる。
俺達が知っている雰囲気とはまるで違う。
普段は戦闘時であっても余程の敵じゃなければ出さない程の気迫だ。
「この戦い…厳しいものになりそうね」
「竜二さんの本気…二人がかりでも勝てるかどうか…来るぞっ!氷の盾っ!」
透が手を前に突き出して氷の盾を作り出す。
「衝撃ッ!!」
しかしその盾は竜二の起こす衝撃によって破られ木っ端微塵に粉砕された。
氷が辺りに舞い散り、光を乱反射させキラキラと輝く。こんな状況でもなければ恋人たちが「キレイ!」と目を輝かせたことだろう。
だが今はあいにくそんな余裕はない。
本気になった龍二を止められるのはゆかりか、神宮か…おそらくその二人しかいないだろう。
しかもどちらも命懸けだ。
それくらいに竜二は強い。その強さを持ってこそのプリトウェン副リーダーなのだ。
壊されることは予想していた。
即席で作った盾で防げるほど、山本竜二は甘くない。
だからこそ目的は防御ではなく、次への布石。
俺の能力は氷を操る能力だが、人一人をまるごと凍らせるのは長い溜めが必要となる。
だが今この辺りにある氷の破片と冷気を利用すれば…っ!
「氷の牢獄…ッ!」
「なっ…!?」
周りの氷を利用し、竜二を氷で包む。
人型の氷像の出来上がりだ。
人が体を少しも動かせない状況では土や雪すらも掘り起こすのは困難だ。
ましてやそれが氷の塊では、到底抜け出すことは出来ないだろう。
「はぁ…はぁ…やったぞ…!」
「とりあえずこれで、止められたんですね…」
「意外と呆気なかったな。まあこれは俺の隠し手の一つだったから、予想してなくても無理はないんだが…」
「さすがの竜二さんでもここから抜け出すのは不可能でしょう…しかし何故竜二さんが…」
ドォン!!
「「!?」」
ドォン!!
ドォン!!
竜二が閉じ込められている氷の塊が振動し、パラパラと破片が崩れ落ちている。
ドォン!!
「そ、そんな…」
「これでも…無理なのか…」
次第に氷塊にはヒビが入り、その亀裂はだんだんと深さを増している。
そしてついに…。
ドォォォォン!!!
「あー…流石に骨が折れたぜ。だがまあ、この程度で俺を止めるなんざ、土台無理な話だな」
「くっ…」
「それにしてもいつもより氷が薄かったんじゃねえのか?今の俺はお前らの敵。手ぇ抜いてっと…死ぬぜ」
その瞬間、体の底から冷えきるようなさっきを感じると、竜二の姿がスっと消えた。
「!!後ろだ!!」
凄まじい脚力で背後に回り込んだ竜二は両手を俺たちに向けてかざすと再び衝撃波を放つ。
「二重衝撃」
「氷の盾っ!」
「大地の防壁!」
袖城さんと俺は咄嗟に防御するが、急増の守りで防げるわけもなく、衝撃波をくらった。
ある程度威力を減衰させることは出来たものの、体勢は崩され大きく吹き飛ばされる。
「そらっ!」
そして瞬く間に距離を詰める竜二の掌底と、回し蹴りによって俺達は分断されてしまった。
「お前らの能力は汎用性は高いが決め手に掛ける。特に相性の悪い俺の能力には対しては後手に回るしかねぇよ」
「どうしてっ…!どうしてなの竜二さん!!」
「はっ…言ったろ?今の俺はお前らの敵だってな」
「プリトウェンを、私達を裏切るつもりなの!?みんなあなたを信じてっ…!あなたが誰よりもプリトウェンの勝利を望んでいたはずじゃない!!」
「確かにこれまではそうだったかもなぁ。でも今の俺の主はただ1人。美東凛華様に仕える忠実なる僕だよ」




