1ー15 結末
「ワタシの拘束から抜け出した!?そんな、さっきまで能力の波動はまったく感じなかったのに!」
「咲坂…君は…」
「さあ、これでもう人質はいなくなったぞ。…エバンズさん、立てますか?」
「あ、ああ、能力が使える様になったんだな」
「ええ、お待たせしました。敵を、倒します」
「いや、待ってくれ。彼女は、アインは私が倒す」
「そう、ですか。確かにあいつはエバンズさんが倒すべき相手でした。さあ、お願いします」
「ああ、そこで待っていてくれ。今度こそ決着をつけよう、アイン」
「くそっ!くそくそくそくそぉっ!!!どうして!全部上手くいってたのに、どうしてっ!!」
オスカーは一歩ずつ、アインに近づきながら話す。
「さっきの言葉、君に返そう。詰めが甘かったなアイン。咲坂を足手纏いだと決めつけ、驕り油断したのが君の敗因だ」
「こんなことがっ!あってたまるかぁっ!!こんなっ!大人しくワタシのものになれ!オスカァァァ!!」
「化けの皮が剥がれたな。さあ、また足元をすくわれてはいけない。これで、終わりだ」
剣の間合いまで入った。アインの顔が恐怖で歪む。
「ま、待って…」
「さよならアイン。君が神の御許に行けることを願っているよ」
一振り。
それで決着はついた。
赤髪は地面に垂れ、その目はもう二度と光を映すことはなかった。
「お疲れ様でした、エバンズさん」
「ああ、だいぶやられてしまったな」
「それは、俺が足手纏いだったから…」
「そうではない。私の油断が産んだ結果だ、君のせいではないよ。それより能力が使える様になったんだったな」
「あ、はい。やっとって感じですね」
「それだけでもここまで来た甲斐があったというものだ。それで?どんな能力なんだ?」
「どうやら、重力を操る能力みたいですね。色々制限はありますが、強力そうです」
「ほう、重力か。それは凄い能力だ。まあ詳しい話はまた後にしてとりあえず帰ろう」
「はい。エバンズさん、歩けますか?」
「少し辛いが、問題ない。能力者は傷の回復も早いからな」
「では、他の敵がくる前に早く逃げましょう」
「そうだな、おっと」
「肩貸しますよ。大丈夫ですか?」
「すまないな、甘えるとしよう」
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そうして、苦労しつつもなんとか拠点に帰ることができた。
中に入るとすぐにゆかりさんが駆けつけて来てくれた。
「オスカー!?どうしたのその傷!?すぐに救護室まで来て!累くんは怪我はない?」
「はい、エバンズさんが守ってくれたので大丈夫です」
「そう、良かったわ。じゃあ神宮君が呼んでたから、行ってあげて。任務明けで疲れてるだろうけど、お願いね」
「わかりました。エバンズさん、また後で」
「ああ、報告は任せたぞ」
「神宮さん、失礼します」
部屋に入ると珍しく他には誰もいなかった。
「やあ累くん。初めての任務お疲れ様。どうやら能力が使える様になったみたいだね」
「はい。どうにか思い出すことができました」
「能力の事は後で聞くとして、まずは任務の報告をしてもらおうかな」
「はい、まず俺とエバンズさんは、俺が記憶を無くして倒れていたビルに向かいました。そこで、俺が能力を使った痕跡を見つけたんです。そこからその痕跡をたどって、街を歩き回り、能力の痕跡の大元の場所に辿り着きました。そして敵に遭遇しました。敵は赤髪の外国人の女性で名前はアイラ、エバンズさんの昔の知り合いのようでした」
「なるほど。僕も少し話を聞いた事はあるけど、確かアイラ=ベネット。エンフィールド家の侍女をしていた女性だね。嗜虐的な嗜好のある女性と聞いているよ」
「エンフィールド?」
「ああ、オスカーさんから聞いてはいないんだね。彼が生家を出ているのは知っているかい?その時に引き取られた家の家名がエバンズなんだ。彼の元々の家名がエンフィールドだよ」
「そういう事だったんですね。そういえばエバンズさんにはお兄さんがいるらしいですね」
「ああ、オスカーさんの兄、ノア=エンフィールドのことだね」
「そうです、確かオスカーさんを家から追い出したとか」
「累くん、よく覚えておいてくれ。今僕たちが戦っている敵ジェネシス・アーク、そのトップがノア=エンフィールド。僕たちが倒すべき敵だよ」
「エバンズさんの兄が…?」
「‘’あれ‘’を人だと思わないほうがいい。悪魔か神か、そういった類の生き物だ。自分、神の使いが選んだ人間以外を抹殺し、世界をリセットしようと考えている」
「そう、らしいですね。でもエバンズさんは…実の兄を殺すだなんて!」
「彼は覚悟しているよ。それもきっとこの戦いが始まるずっと前から、ね」
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神宮さんへの報告を終えた俺はエバンズさんがいる救護室へと向かった。
「エバンズさん!怪我の具合はどうですか?」
「ああ、叶のおかげでだいぶ良くなったよ。しばらく休めばまた戦えるようになる」
「それは良かった!治ったらまた訓練、お願いできますか?」
「勿論だ。能力が使えるようになったのだから、よりよい訓練ができるだろう」
「ありがとうございます!あ、神宮さんがエバンズさんの話も聞きたいそうですよ」
「オスカーだ」
「え?」
「オスカーと呼んでくれ、累」
「っ!はい!オスカーさん!」
「それでいい。響介のところには後で行くとしよう。また少し休む、また明日会おう、累」
「わかりました、ゆっくりと休んでください」




